バットは寝かせて構えるのか立たせて構えるのか

広島東洋カープの野間峻祥が秋季キャンプで肩にバットを乗せてヘッドを寝かせて構える新打法に取り組んでいます。
ヘッドを寝かせて構える打法にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
従来、日本の打者は下半身を使って打つ、外国人の打者は、上体のパワーに頼って打つといわれてきましたが、本当にそうなのでしょうか。

通説が言うところのヘッドを寝かせて構えることのメリット

肩にバットを乗せて構えることのメリットとしては、①トップ(手首の位置)を作り直さずに頭と耳の間から構えたときの手首の位置から振り出せること
②ヘッドを立てて構えたときよりも手首の位置が後ろにあるのでヘッドステイバック(頭を後ろ足の上に乗せる)することができ、前足の股関節よりも押し手の肘が前に出ていくのでポイントを前にして打つことができること
以上の面が挙げられます。

しかし、前膝を上げるか、前足を後ろに引く又は地面を蹴る前か直後に、手首を下げる(ヒッチ)させて後ろの肩を前の方よりも下げないと後ろ足のスパイクの外側又は踵に体重を乗せることができません。現実には、構えたときの手首の位置と振り下ろす直前の手首の位置を変えずにいることは難しい。

ヘッドステイバックのときに使うのは、前膝の蹴りと後ろの股関節の外旋の動きです。構えたときの手首の位置は関係ありません。

バットを肩に乗せずに手首からヘッドのラインが45°の状態で構えると両腕の上腕部、前腕部の負荷がかかります。

構えたときに両腕の上腕部、前腕部に負荷がかからない方法には、メジャーの選手、秋山翔吾、広島の西川のようにバットを肩に担ぐ方法と、落合、清原、山田哲人、今季の野間のようにバットを担がず、背筋を伸ばしてバットを立てて構える方法とがあります。
バットを肩に乗せる構えによるメリットはこの程度です。

バットを肩で担ぐ構えにもヘッドを立てて構える場合とヘッドを寝かせている場合があります。

ヘッドを寝かせることのメリットデメリット

レベルスイングのメリットは、ダウンスイング、アッパースイングがミートポイントが一部分であるのに対し、レベルスイングはミートポイントを長くすることできます。
引手の肘を抜くことによってミートポイントからバットを水平にしてボールを運ぶ距離を延長させることができます。軟球ではこの打ち方が最も飛距離が出ます。
金属バットではダウンスイングやアッパースイングよりも両肘が伸びるレベルスイングでも飛距離を出すことができます。

右投げ左打ちの打者は、野球以外の肉体の稼働をも含めた肉体の稼働を行う利き手と逆の方の手がバッティングにおける押し手(Guide hand =トップハンド)となりますので、畳んだ押し手の肘が外側に引っ張られると伸びて押し手の肘がしまいます。
右投げ右打ちの打者に比べ押し手主導のバッティングが難しく、レベルスイングの方が容易にこなすことができてしまうのです。

構えたときにヘッドを寝かせると引き手の前腕部が回内され、押し手の肩関節が内旋されます。押し手の方の脇が空きますので押し手の肘を通過させる通路ができます。押し手の肘がヘッドの外側に張り出し、脇が空けば押し手の小指が上を向きますので、インパクトの直後、小指先行で押し手の前腕部を回外できます。
しかし、ヘッドを寝かせると、ヘッドが下に引っ張られるので両腕の上腕部に負荷がかかります。

両肩を水平にしてヘッドを寝かせたところから振るレベルスイングは押し手の肘の推進よりも先に後ろの股関節の内旋、引き手の肘を抜く、すなわち前肩を開いてやらないと押し手の肘を推進させて水平に振り始めることはできないので引き手主導になります。前足のつま先が地面に触れた段階で押し手の肘がヘッドの内側に入ってしまいます。

また、グリップを握る各指に圧力がかかるのでグリップをタイトに握ることとなります。
グリップをタイトに握るとコックやヒッチのような予備動作ができないので振り遅れます。
インサイドアウトスイングでヘッドをボールの内側に入れるのは、振り下ろし始めだけです。インサイドアウトは、「ボールの内側を打つ」ではなく、「バットをボールの内側から出す」が正しい。インパクトの瞬間は、ヘッドはボールの外側に入れます。
レベルスイングでもアッパースイングでもダウンスイングでも、インサイドアウトスイングで最も重要なことは両肘を終始畳むこと、すなわち、押し手の前腕部が外側に引っ張られないことです。
引手の肘も曲がっていないと引手の拳で押し手の人差し指の付け根を押し込めないので、ヘドが手首のラインよりも下がってしまいます。
日本の野球指導者は、インサイドアウトスイングをインパクトの瞬間にヘッドをボールの内側に入れることと誤解しているのです。
ヘッドをボールの内側に入れて打つ打ち方は、インパクトの瞬間に押し手の親指でグリップを押し込むことができないのでヘッドがボールの内側に入ってしまいます。手首が伸びてしまい手の平でボールを受けてしまいます。

ヘッドを立てることのメリット、デメリット

ヘッドを立てて構えること及び振る直前にヘッドを立てることのメリットは、押し手の肘が体の近くを通るのでアッパースイング、ダウンスイングで振ることができるということです。後ろの股関節の外旋を、押し手の肘を真下又は前方に推進させるのよりも遅らせないとアッパーやダウンでスイングで振ることはできません。言い換えれば、押し手の肘の推進を後ろの股関節の外旋に先行させないとアッパスイングやダウンスングはできません。
押し手の肘が伸びるドアスイングと紙一重のレベルスイングに比べ、アッパスイングやダウンスイングの方がファストボールに負けません。

硬球と軟球では、ボールのどの部分を打てば最も飛距離が出るかが異なります。硬球の方が8mm程度下にあります。硬式野球の場合には、ダウンスイング又はアッパースイングで振った方が飛距離が出ます。
硬式野球におけるダウンスイングはボールの上っ面を叩くのではなく、押し手の親指でグリップを押し込んでヘッドをボールの外側に入れ、縦に擦り下ろし、ヘッドをボールの下2/3に潜らせることです。

しかし、肩にバットを乗せている場合でも乗せていない場合でも、構えたときにヘッドを立てれば立てるほど、押し手の肘が後ろに張り出さず、押し手の方の脇が閉じるので押し手の肘がスムーズに出ていきません。
押し手の肘が後ろに張らず、押し手の方の脇が閉じると、引き手主導のバッティングになります。
また、背筋(広背筋、多裂筋)も損耗させてしまいます。

それでは、どのようにすればいいのでしょうか。

結論

答えは、ヘッドを寝かせてバットを肩に乗せたまま骨盤を前傾させることです。
そうするとヘッドが立ちます。
押し手の肘もヘッドの外側に張り出します。押し手の方の脇も空きます。
引手の前腕部の回内、押し手の肩関節の内旋を引手の前腕部、押し手の肩関節に負荷をかけずに行えます。グリップを握る指先にかかった負荷は解かないといけません。
ヘッドを寝かせて構えるのデメリットとヘッドを立てて構えるデメリットの双方を取り除くことができます。

野間は、打席に入った直後は、バットを肩に乗せてヘッドを寝かせています(上の画)
右足で地面を蹴る直前は、骨盤を前傾させ、ヘッドの角度は、ほぼ45°の振る直前と変わらない角度になっています。手首もL字になっており、トップの角度も悪くありませんが、グリップをタイトに握りすぎです。

それでは、構えを変えたところで、野間は打てるようになるかというとそうはいきません。

ポイントは、前足を下し始めたときに、前肩を動かさずに後ろの股関節を斜め上に外旋するということです。
そうすることで前足を後ろの方すなわち頭の近くに着地させることができる。
すなわち、ストライド(歩幅)を狭めることができる。
また、手首の位置が上がり、ヘッドも立っていきます。
前肩が後ろ肩よりも下がります。投手と同じく打者にもゼロポジションが存在します。

前足のつま先を接地させてから前膝で地面を蹴ると、前の股関節が後ろに引っ込んで、更に後ろの股関節も外旋できます。引手の肘が後ろに引っ張られることもありません。
西川は、構えたときにヘッドを寝かせていますが、前足のつま先を着地させたとき、すなわち振り下ろし直前の過程においてヘッドが立っていますが、メヒア、髙橋大樹、堂林、今季の野間は、振り下ろし直前にヘッドが寝てしまいます。
西川以外の後三者は、前足と一緒に後ろの股関節を内旋、前脛骨筋を回内してしまっているのです。手首も一緒に前に出ていってしまう。
だから、一軍の試合で使ってもらえないのです。

打者や投手は、左膝が突っ張ることによって前足を軸にすることができるのです。

インパクトの瞬間に両股関節をぶつけます。
後ろの股関節を両股関節をぶつけるまで外旋していたことにより骨盤が前傾します。
骨盤を前傾させた方が両股関節をぶつけたときに骨盤で地面を押し込むことができます。
両股関節をぶつけたら後ろ足の拇指球で地面を蹴って後ろ足に重心を残しません。
後ろの膝が真下に落ちます。
前足の踵を支点に骨盤を回します。
前足を固定して後ろ足を軸に骨盤を回すと前膝を故障します。
前足は踵を支点に回してやらないといけません。

日本の選手は、前肩を内に入れて背中を投手に向けたり引手の肘を突っ張らせることで後ろを大きくするから、①後ろの股関節を内旋して骨盤を回転させる、前肩を開く、引手の肘を抜く、②前膝が折れ曲がる。③押し手側の大胸筋の停止部分を後ろの肩甲骨を格納せずに外腹斜筋、内腹斜筋のライン(タスキ掛けのライン)の収縮が始まる。
メジャーの打者は、①手首を下げる。②前膝で地面を蹴る、③後ろの股関節を外旋することで後ろを大きくしている。

押し手主導のメジャーの打者は、右肘の推進→骨盤の回転です。ヘッドのしなりが戻った瞬間にインパクトとなる。
よってヘッドがボールの外側に入る。これがパーフェクトインサイドアウトスイングです。
引手主導の日本人打者は、ヘッドのしなりが戻った後もまだヘッドが残っている。
引き手主導の日本人の選手は、メジャーの打者よりも先に骨盤が回り押し手の肘がその後に出てくるだけで、メジャーの選手よりもリリースやインパクトの瞬間に下半身が使えていないのです。

落合、清原は、骨盤が前傾しておらず、前足のつま先が接地したところで押し手の肘がヘッドの外側に張り出さない。故にメジャー関係者に価値を高く付けてもらえなかった。

鈴木誠也は、骨盤が前傾し、前足のつま先が接地したところで押し手の肘がヘッドの外側に張り出す。
鈴木誠也は、メジャーで通用すると思います。

野間は、後ろの股関節、前膝をいかに使いこなして振る直前にヘッドを立てるか、上から叩けるかが成功の鍵です。

肉体の稼働の源となるフィジカル面に関しては、右打者左打者とも、前腕伸筋、前腕屈筋だ肩甲骨周辺の筋肉の強化、稼働域を広げるトレーニングだけでなく、骨盤底筋群、多裂筋、内腹斜筋、腹横筋、外旋六筋、腸腰筋、内転筋、ハムストリングス、前脛骨筋のようなインナーマッスルの強化、稼働域を広げるトレーニングが重要となってくる。

秋季キャンプで東出は、羽月に走り打ちや流し打ちではなくフルスイングする打法に切り替える練習をさせています。
フルスングという東出のやらせてることはベクトルとしては正しいんです。しかし、バッティングの土台、根幹の部分が間違っている。
正確には、ヘッドはボールの内ではないのです。
正確には、骨盤は後ろ足ではなく前足を軸に回すのです。
打撃で最も大切なことは、構えでもなければ、トップを固めることでもありません。
バットを肩に乗せようが乗せまいが、ヘッドを立てて構えようがヘッドを寝かせて構えようが、後ろの股関節の使い方ができないと、押し手主導のパーフェクトインサイドアウトスイングはできません。