菅野智之とアドゥワ誠の投球動作を比較分析する。

Last Updated on 2020年2月4日 by wpmaster

2020スプリングキャンプは始まったばかり、これから先、調整を進めていくので野球の動きができないレベルの故障がない限りは現段階の出来に一喜一憂する必要はない。
アドゥワの投球動作について解説するのは金石昭仁。私は、2017年5月以降、右腕上腕部の凹む動作から投球をワンバウンドさせる岡田はフィジカル面で先発は無理だからリリーフに転向させろと言ってきた。私とは表現の仕方が異なるが、彼は一昨年から岡田明丈の右腕上腕部の凹みについてメディアで唯一発言してきた人物。
佐々岡が投手コーチの頃から岡田はファームでリリーフ調整しているが、佐々岡も、監督就任後、本格的に岡田明丈のリリーフ転向に取り掛かった。
プロの投手出身である佐々岡も私が気付くことぐらいのことは余裕で知っていたことは間違いない。岡田を先発で17勝クラスに育てろというOB及び緒方の抵抗に会ってきたことが推察される。

先発6番手を争うアドゥワ、森下、遠藤淳志、山口翔
先発5番手野村祐輔は右腓腹筋損傷で離脱。右股関節の外旋のときに関連する部位の故障である。

今回は、金石昭仁の解説を敷衍しながら、私がアドゥワ、森下のピッチングを見て感じたことを交えながら、金石氏と共通する部分もあれば異なる部分も出てくるであろうが、議論を発展させてきたい。

アドゥワ誠の投球動作2020試作ヴァージョン

アドゥワ誠は、昨季同様、二段モーションを採用するが、左膝を上げる高さを骨盤の下までにとどめ、昨シーズンよりも左膝のレッグアップの高さを下げた。
このことにより、一試合当たりより多くの投球数を投げられる。

アドゥワは、左膝を上げ下しするときに、腰を内側すなわち背骨の方に入れずに、ロジャークレメンスのように真下に落としている。
大腿骨が上下運動し、投球腕が背中の方に入る動作を抑止し、またストライドが広がることを抑止する。
森下も二段モーションを採用しないが、野村祐輔と異なり、左膝の上げ下ろしのときに腰は内側に入らない。
左膝を下した後、野村祐輔ほどではないが、アドゥワに比べると左膝を腰がわずかに内側に入る。
しかし、森下は、左膝を動かさず右膝を伸縮して骨盤を上下運動(ヒッチ)させる。

二度目に左膝を下げてから「く」の字を作ったとき、左足をすり足というよりは、イチローの振り子打法のように、真後ろすなわち二塁方向に一歩踏み出す。
森下は、左足を踏み出す直前に右足の踵で地面を二塁側に蹴ることで右股関節を外旋する。

この動作によって、右足の股関節の外旋ができる。
森下、アドゥワは、「く」の字を作ったときに右肩を下げるという面で共通し、これも右手首のヒッチ、右股関節の外旋に貢献する。

アドゥワは、左足を踏み出す直前に両足内転筋を内旋してから左足を踏み出している。
骨盤の動くレンジ、左足を動かすレンジを小さくしたことで従来より脱力して投げられている。更に二段モーションを一段モーションにすれば更に脱力できるだろう。
森下も左足を踏み出す前に骨盤の横の動きがほぼないという面で共通しており、両者の素晴らしい面である。

しかし、アドゥワは、右股関節の外旋が解けるのが早まるとストライドが広がり、右腕上腕部の回内のときに、右膝が森下よりも深く屈曲している。そのようになるとフォロースルーのときに左膝の壁が崩れる。森下の方がストライドが狭く、アドゥワよりも左膝を俊敏に蹴れている。

菅野智之の投球動作2020試作ヴァージョン

「く」の字を作ったときに骨盤が後傾する大瀬良や野村のデメリットは、左足を踏み出す前に右足の拇指球に重心を戻さざるを得ず、それにより後ろ足を軸に骨盤が水平回転することである。
骨盤を前傾させて右肘を骨盤の回転より先に右肘を先に出す。結論は正しいが、菅野の今回の投げ方は、そのプロセスに問題があるように思う。
菅野は、昨シーズンまでは、右足の拇指球を支点にヒールアップし、右足踵で地面を踏んでから左足を踏み出すことで、右股関節の外旋が元に戻ることを抑止し、ストライドが広がるのを抑止してきた。

しかし、右足の拇指球を支点にしたことで、右肘が推進する前に骨盤が水平回転し始まっていた。

昨年までの菅野を含め大部分の投手は、「く」の字を作ったときに、投球肩を下げるか背中の方に引く
今キャンプで菅野は、ノーワインドアップから左膝をレッグアップする前に、両手首を下して右肘で背中の方にスクラッチし、左足を踏み出す前に右肘を推進し始める。
それにより、今のところは骨盤が回り始めるよりも先に右肘が先に出始めるので昨シーズンまでより、右腕前腕部を回内したときに右肘の高さがものすごくわずかだが上がり、パワーカーブの落差が増した。

菅野は、既に昨シーズンの段階で、平均して100球投げれば、12~15球前後、リリースの瞬間に右腕上腕部が凹んで投球をワンバウンドさせており、右肩はボロボロであることが看て取れます。
トップを作るまでの過程で右肩を左肩よりも下げてから右肩を持ち上げるという動作ができないことも、今回のような投げ方になったのかと推察します。

菅野は、今回の新しい投げ方により、左肩、腰の開きを遅らせることができるという。
菅野は、従来、左足のつま先が地面に触れてから左膝で地面を蹴って左足首を背屈させて右股関節を外旋し直すことで打者寄りの股関節を引っ込め右肘を推進させてきた。

しかし、菅野の新しい投げ方は、右股関節の外旋をキープする手段がないこと、大腿骨の上下運動がないのである。
その上で、左肩が背中の方に入るので、右肘を推進させる前に左肩を開いてやらないと右肘が出ていかない。
右腕上腕部を外旋してトップを作る前に1回目の右腕上腕部の内旋をしてしまっている。
左膝で地面を蹴る間が作れない。
骨盤から上の横の動きが、骨盤の水平回転に先行しているだけで、骨盤の水平回転は修正されていない。
右肘の推進より先に左肩が開くので手投げになるので、右腕のローテカフを損傷する。

遠藤淳志も千賀も「く」の字を作ったときに、右腕が背中の方に入り、右手首を上げたときに二塁方向ではなく一塁側に右足踵で地面を蹴るので、右肘が逆Lになったときに上体と下半身の捻転差が真後ろではなく横に大きくなる。
遠藤淳志と千賀も菅野と同じく鴻江寿治に師事している。

先発ローテーション6番手の行方

遠藤淳志は、佐々岡や横山が指摘する右腕の背中の方に入る投げ方を修正せずに、鴻江の言う投げ方を採用し続けると、骨盤から上がトップを作る前の段階で横回転するのでドアスイングになる。打者は、後ろの股関節を外旋する間ができるので、手首とボールの軌道の距離が取りやすくなる。
遠藤淳志が昨シーズンまでの投げ方を続けるのであれば、私が監督であるなら、先発6番手は、森下、アドゥワの順で採用したい。