メジャーでは、前広島の前田健太がパドレスで6回無失点でメジャー初勝利。一つも勝てないなんてことはないと思っていたが、過去には、全く通用せずに帰国したエース級投手もいなかったわけではないので、やはり一つ勝つまではという思いもあった。初登板で結果を出し、まずは1勝してくれて良かったと思う。日米間において硬式球に差異があり、マウンドの高さ、硬さ、反発係数などの条件の違いをものともせず、制球して0で抑えたところから実力は本物であったと再確認した。
さて、国内では、広島は今日から阪神との三連戦。横山と能見の投げ合い。
初回、田中が能見の初球をシングルヒットで出塁。三番丸がライトの深いところへ安打。中継に入った西岡の拙い守備で田中が一塁から本塁生還。
ルナが甘い球を見逃さず安打で2点目を取ります。エルドレッドには苦手の内角を主体に攻めますが、内角のスライダーが若干低く入り、上手くヒットを打たれます。
しかし、能見は、新井には、徹底して低めに球を集め、一球も甘いコースに投げずに、インコース低めに落ちるスライダーで新井を三振、鈴木には全てインコースの難しい球(シュート、スライダー)で攻め、インコース低めに落ちるスライダーでゴロを打たせます。両者に対しては、一球もヒットを打てる球を投げませんでした。
その後も、能見は、広島の左打者を全くといっていいほど寄せ付けず、右打者に対してもランナーを出してから、ギアを入れ直して攻めの投球でルナを三打席目、四打席目はクロスファイヤーで見逃し三振。別の回では、開けていた二遊間への打ち取った当たりをエルドレッドに内野安打されても、新井は二塁に進塁打を打つのが精一杯、右打ちをしてきた鈴木を高めのチェンジアップで泳がせて(もう一球分低く投げていれば右中間を割られるところだが、高く外して投げたベテランならではの計算)無得点に抑えます。
ここまで、巨人は阪神に、阪神は巨人に、ヤクルト、中日は、巨人、阪神にエースをぶつけ、広島は、エース級との対戦は、井納、久保のみ。G,D,Sには、エース級をぶつけなくても勝てるという計算があるので、広島にはエースをぶつけてこなかった。そういう点から、今日の能見は、今季の広島打線がどのような対応を見せるか広島打線の実力を見極める試金石であったが、能見の方が数枚上手で、2回以降点を与える隙を見せなかった。
横山も失投を江越に打たれたものの、前回よりも決め球のスライダーを軸に投げ急ぐことなく低めに集め、阪神打線を7回1点に抑えた。
8回2アウトから、鈴木が歳内に対し、カーブを待ちつつストレートにも追っつけて対応する準備をして、手首が返らず投手に正対させライト前ヒット。能見には実力差を見せつけられ捻られましたが、打てる投手から打って無安打に終わらなかったことは今後も実践して欲しい。出塁してからも無防備なバッテリーから二塁を陥れ、更に、梅野は肩を内側に入れて前に落としたのですが、半身になりかかったところを見逃さず三塁を陥れますが、松山は、高宮の難しくない真っ直ぐを叩きつけただけで全くスイングをさせてもらえず凡退。何年も続けて左打者とほとんど対戦させてこなかったことが原因とわかるバッティング。
9回、中﨑が登板。オープン戦から状態が上がっていませんが、シュート、スライダーでかわし、ここまで3セーブ。先頭のヘイグの打球にグラブを出して安打を防ぎ(二ゴロ)ますが、福留にはショートとレフトの間に落ちる当たり、赤松は中間より若干深めに守っており、全盛時には12球団一の守備範囲の赤松でも、追いつくのは無理。田中が最後まで追わなければならない当たりであったが、赤松に譲ってしまった。とはいえ、一番の原因は中﨑の球が高かったこと。この日の中﨑は決め球のスライダーが、カーブとスライダーの中間球で悉く高かった。
石原は、制球の定まらない中﨑に、きわどいコースに動かした真っ直ぐを要求。数球絶妙のところにコントロールし、ゴメスや西岡を追いこんでいましたが、それが続きません。石原-中﨑のバッテリーは、外一辺倒の配球で、ストレート系とスライダーの2つしか使いません。
ストレートが走らず、決め球の制球が定まらないときは、持っている変化球(中﨑は、スライダー、カットボールの他に、シュート、スプリット、カーブ、チェンジアップが投げられます。先発で投げていたこと好投したこともあるので、どの球も凌げる程度の水準にはある。)を全て使い、低めに集め、インサイド低めでファウルでカウントを稼いだり打ち損じさせたり、打者の裏を書いたりしなければならない。
ゴメスのセンター前安打(代走大和)を丸がチャージをかけて、福留の代走で出た荒木の三塁進塁を阻止します。
鳥谷の当たりも難しくない三塁線のゴロ。現状の鳥谷は投手に取らせる打球を打てるだけのバットコントロールはありません。打球を拾うまでの動きは悪くなかったが、ランナーと新井が交錯したとはいえ、中﨑の送球ミス。ショートバウンドするかしないかの送球をしなければならなかった。投球の状態がよくないときには、フィールディングをしっかりやらなければいけません。
新井は落球したとはいえ、ファウルグランドを転々としたわけではないのに、荒木はスピードを緩めず本塁まで、大和も三塁まで隙を見逃さず走りました。阪神は、1アウト一塁、三塁のケースを作ることに成功します。阪神は、一二塁間のゴロ、バウンドの高いゴロ、一塁線に緩いゴロを打ち投手に捕らせる、三塁線に緩いゴロを打ちサードに捕らせる、犠牲フライ、ファウルフライ、三塁又はショートに高い又は深いインフィールドフライを打ち上げてもいい、あらゆる作戦が採れます。三振以外何でもいい。バットを短く持って低めでも高めでも当てれば相当の確率で点が入る。中﨑には三振が取れる球はスライダーしかない。しかも今日はスライダーの切れが悪い。この段階でもう諦めました。この試合は負けを確信しました。
西岡に対してできることは低めにボール球の変化球又はストレート系(フォーシーム、カット)投げて速くて強いゴロ又はライナーを内野の真正面に打たせるしかありません。しかし、西岡は高めのストレートを外野に打ち上げて勝負有り。
立ち上がりの集中打から制球を修正し、要所でギアを上げて右打者を封じた能見と大和の走塁が勝負を決めました。
[追記]
安部は、能見に全く合っておらず、その後打席に立たせても打てる見込みがなかったので2打席で小窪なり西川と交代してもよかったとも思いますが、安部の場合、一定の技術がないと菅野(右投手)を打ちこなせないので、継続して起用されていないことから左投手との対戦を積んでこなかったのも原因だと思います。
中﨑は、昨日の阪神1回戦では、スライダーが緩くなっていましたが、今日の2回戦では、福留のバットを折るなど、若干スライダーのキレが戻りましたが、昨年終盤の水準まではもう一歩です。
永川は、フォームを変えてからフォークの落差が小さくなり、今日も高山にファウルで粘られていました(永川の投球フォームを変える前のフォークは、落差という点に限れば野茂や佐々木を大きく凌駕し、かすることすらできませんでした。その落差故、見送られると投球が苦しくなりましたが。)現在のフォームでも、もう少し抜けが良くなれば、全盛時に近い落差で空振りが取れると思います。回の頭から投げることが殆どなので、ランナーを貯めるまではスライダーやスプリットで打たせてとる投球でいいと思います。
追いこむまでは、ストレートを動かして際どいところに制球できていたが、決めるところでスライダーを決めることができない中﨑と、要所で厳しいところ(ヒットにならないコース)に投げられる永川。
メディアは、江夏や津田を持ち上げますが、彼等の方が永川よりも劇場を作り出していました。1991年の大野を除けば、安定度という点では永川が広島の歴代の抑えのナンバーワンであり、ランナーを貯めたときのギアを上げたときのストレート、フォークの制球(≠ストライクを取る制球)は江夏や津田を凌ぎます。
今年の永川は仕上がりがよく、この日の制球、スピードが長続きするかだと思います。疲労によりストレートが走らないと、スライダーやフォークが活きてこないので、炎上してファーム落ちになると思います。暫定的に抑えは務まっても一シーズン抑えで起用するのは難しいと思われます。
今村は、今日(阪神2回戦)なんかを見ると、最初から回跨ぎを言い渡されていたのかゆったりとした間合いを取ながら抜くところは抜いて、要所のみで真っ直ぐを使い、リリーフではなく、先発で起用した方が彼自身にとってはいいと思いました。
今日のオスカルは、変化球を散らした結果、抑えましたが、ストレートの走りは戻っていません。依然としてファームに落としてミニキャンプをさせた方がいい状態であると思われます。
鈴木のバントは、赤松が2塁を陥れ、シングルヒットで還れるケースを作ったのに、何故、続けてバントのサインを出し続けたのか。成功したとしてもアウト一つくれてやるわけですから、疑問の残る采配でした。しかも、今日のマテオは制球が定まらず、四球の後にボール球の変化球を連投させるところまで、バッテリーは成熟していなかったので、ヒッティングに切り替えた方が良かったと思います。
[追記]
西岡の打席の後、ベンチに残っていたのは、狩野(右)と北條(右)。西岡を歩かせた場合、狩野(かつては捕手でしたが、この段階では金本監督はホームゲームなので延長戦のことは考えていないと思います。)には、中﨑は、初球に、ストレートでストライクを取ることができず、低めのボール球となる変化球を投げなければならなくなります。捕手を立たせて西岡を敬遠すると腕を強く振らずに投げるので、狩野への初球も低めにいかず、高めにいきます。
西岡に対しては、歩かせるにしても、ストレート系にしろ変化球にしろ、ショートバウンドになるかどうかの地面スレスレのところに投げて真芯で打たせ、強烈なゴロ又はライナーを内野手の正面に打たせることを前提に攻めた上で、西岡がボール球を見送ったら立ち上がらずに同じく地面をこすりそうな低さに投げ続け、歩かせるのも止む無しという攻める方を採らざるを得なかった。そうしないと、満塁にして守りやすくしたとしても、中﨑の高めにいく制球を修正することができません。
ところが、石原及び広島首脳陣は、中﨑に膝元かそれよりやや上に腕を振って強い球を投げさせて西岡を詰まらせることを選択してしまいます。
今日の中﨑であれば、高めに入れば野手のいないところに落ちることがあり得る。
この日の中﨑は、四球を出さないだけの制球はあったが、甘いところに投げない制球はなかったこと、広島側が西岡を甘くみたことが敗因であったと思います。