九里亜蓮は、先発か救援か。

九里は、先発がイニングを食えずに降板し、ビハインドの場面で試合を立て直し、先発ローテーション4番手以降で投げていたこともあり、監督、コーチから重宝がられてきた。ブロガーの多くも、九里をロングリリーフ候補、リリーフ候補として挙げる。

しかし、実際はどうなのだろう。九里は、先発と抑えのどちらが対応できるだろうか。

先ずは、九里の投球動作から見てみることとする。

九里亜蓮のピッチング

ヘーゲンズやJacksonは、腕の位置を高くして投げ終わった後に体が一塁側に倒れ込むことで縦回転を付ける。

かつて、北別府学は、九里は、クロスステップするときに上体が「く」の字に曲がり、横回転することが指摘していた。横回転であれば、打者は、投手の投球腕の回外運動、内旋運動の回転半径が長くなり、対応しやすい。右腕上腕部の加速距離が短くなる。。

一方、九里は、セットポジションのときに、上体を「く」の字にして構える。九里は、上体に負荷をかけるので、構えるときから、体幹に負荷をかけていたら、始動のときに前腕部の回外運動又は回内運動の加速距離を伸ばすことができず、左足を軸に、右足内転筋の内転を生み出すことができいので、これは、素晴らしいと思う。

セットの構えの際に、「く」の字にすることで、始動する際に地面を荷重する足である右足を突っ立てた際に右足の股関節を外旋することができ、上体がその上に乗り両肩が平行になる。よって、左足をステップする過程で上体が立ち、腸腰筋を縦回転させた後、胸も張れ、右股関節を内旋、右膝を屈曲することができる。右手小指基節骨をホームベース上に向けトップを作り、リリースした後、左肘が落ちる。左肩の開きも抑えられ、頭の突っ込みも抑えられ、故障もしにくくなる。

クイックにも右股関節と左膝にタメがあり、投げ急がない。

それ以外のときは、構えるときに、両足が揃うことがある。つま先に体重がかかるので、強い蹴りが生み出せない。左足を引いて構えるときは、強い蹴りが生み出せている。

岡田は、投げる始動の前に、骨盤の上に、背骨、頭が乗り、軸足から頭までラインができ、ステップの際に上体が立ち、足~腰~上体~頭の軸を縦回転で回せるようにして胸を張って上体を前に倒して真っ直ぐ系を投げられるようになったが、九里は、改善はみられるものの、未だ、「く」の字に曲がることがある。

ステップの過程で、左足のつま先が三本間に向き、弧を描くように左足を掻き、リリースと同時に本塁方向につま先が向くので、膝が割れて、球に力が伝わらない。これは、打撃と共通する。

監督、コーチ、ブロガーの方の多くは、九里は、体が丈夫で故障しないから、使い勝手が良いので重宝されると言うが、

右肘のコックアップの前後で、両肩がM字になり、続いて、右肘が下がり、左肩が上がり、反動をつけて投げているので、故障しやすい投球動作をしている。右肩が下がるので高目に外れる。

九里のいいところは、リリースの際に上体を傾けるところであるが、右手人差し指の付け根がボールに被さって左肩が下がると低目に投球をワンバウンドさせる。

投球動作に欠陥が少なければ少ないほど、制球、,右腕上腕部の内旋運動の加速距離を長くすることができ、5回まで無安打に抑えた9月18日のDeNA戦のような投球ができる。

次に投球成績を見て見ることとする。

今季の成績(2016)

九里の今季の通算成績は、

27試合 80回 351打者 79被安打 9被本塁打 52奪三振 38与四球 自責40 防御率4.50 2勝2敗 HP1 SP1

被打率が右 170-42 .247 7本 犠飛4、左が132-37 .280 2本 犠飛2 通算.262

本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合である被BABIPが..283と高い。横回転の投球動作により、バットとボールの距離の取りにくいところでも見やすくなって振り切れば安打になったことがあったと推察される。

被長打率が.421 被本塁打率が1.01

アウトの内訳は、ゴロ88 フライ78 三振52 犠打5 犠飛6 失策5

ゴロアウト比率(GO/AO)が1.13 ゴロ比率が37.6%と低い。

与四球率が4.16 被OPSが.759

奪三振率5.85、奪三振/与四球=1.41

総投球数1,373球 1イニング当たり17.2球 打者一人当たり3.91 5.72球で1アウトを取っている。

インプレーの打球を排除した奪三振、与四球、被本塁打から評価するFIPが4.51

1イニング当たりの走者の数であるWhipが1.45である。

残塁率(LOB)が67.05%で、3走者に一人の割合で本塁に生還されている。

平均的な投手と比べてどれだけ失点を防いだかを示すRSAA(プラスである方が優秀)が△11.05

更に、先発、救援別成績を見ていくこととする。

先発、救援別成績

先発では、

10試合 50回 48被安打 9本 与四球27 被打率.257 自責34 1勝2敗 防御率6.12 Whip 1.50

奪三振率5.58、与四球率4.86  救護率3.67

QS比率 33.33% QS勝1 QS敗0 5イニング以上投げた試合が7試合。4イニング未満で5点以上取られた試合が2試合(この2試合以外は、チームとしては、どうにかなるレベル)

100球超2回

イニング別失点は、3回が10失点で最多、次が6回で9失点、続いて2回が7失点。打者2巡目以降に打たれている(Whipが高いので2回に上位打線と再び当たることも多い)。

失点回率 40.43% 失点したイニングの平均失点2.47 1イニング4点が最多

打者一人当たり 4.00球 5.86球で1アウトを取っている。

救援では、

17試合 30回 31安打 与四球11 被打率.270 自責6 1勝0敗 防御率 1.80 Whip 1.37

奪三振率6.30 与四球率3.3

救援時に安打、四球を許さなかった試合/救援登板数=17.6%

打者一人当たり3.74球、5.45球で1アウト取ってる。

1失点までの投球回数 3.33回 失点時回数9.1

救援時の失点/失点したときの投球回0.96

10試合に一度程度0炎上し、それ以外の試合は0に抑えるというのではなく、毎試合1イニング投げた場合3試合に1回1点取られることになる。リリーフとしてはどうか。

球種別成績

今シーズントータルの球種配分はどうか。

ストレート 27.6% カットボール 17.33% シュート17.84%

フォーク又はスプリット11.51% チェンジアップ 9.10% スライダー 9.10% カーブ 6.70%

球種別安打は、

ストレート 75-22 4本 14四死球 .293

カットボール 58-19 2本 8四死球 .328

シュート 52-14 .269

チェンジアップ 32-8 .250

フォーク 47-8 1本 .170

スライダー 23-4 1本 .174

カーブ 15-4 1本 .267

球種別空振り率は、

ストレート 3.17% 見逃し率 18.21%  11三振

カットボール 8.4% 5三振

シュート 5.31%

チェンジアップ 16.00% 9三振

フォーク 19.62% 18三振

スライダー 11.76% 4三振

カーブ 4.35%

カウント別成績

カウント別の被打率は、

初球 .293 1本

1-0が.211  2-0が.077 3-0が2-1 1本 .500

0-1が.190 1本 1-1が.359 2本 2-1が.238 2本 3-1が10-5 .500

0-2が.286 1-2が.250 2-2が30-16 .533 3-2が23-9 .391

平行カウント、3ボールのときに被打率が高い。初球の被打率も高い。

コース別成績

コース別(右打者ベース)の打率は、

インハイが26-4 .154 6三振(ゾーン内.167) インコースベルト付近が42-12 2本 .286 インロー39-8 .205 5三振

バットとボールの距離が取りにくい真ん中高目のゾーンよりボール2個分高いところが3-0 .000 スピードを評価しやすく、バットとボールの距離を取り易く始動の間合いを取りやすい、捕手の真後ろのファウルチップを打ちやすい真ん中高めのゾーン内が16-9 .563

ど真ん中が34-9 3本 .265 真ん中低め23-10  始動が早く引っ張る打者が手を出す真ん中低めゾーン外19-4 9三振

バットとボールの距離が取りにくい外角高め18-5 .278 1本(ゾーン内 15-5 .278)

アウトコースベルト付近の高さ 39-11 1本 .282 アウトロー40-7 2本 .175(右 .167 左.250 ゾーン内.240 2本)

ケース別成績

得点圏での被打率は、

ビハインド 35-8 1本 .229  同点 24-6 .250  リード 15-3 1本 .200 通算.230である。

ケース別では、

ランナー無し 162-42 4本 4打点 .259

一塁 66-20 3本 11 .303

二塁 24-4 1本 .167

三塁 8-4  5打点

一、三塁 6-1 1本 4 .167

二、三塁 3-1  4打点 .333

満塁 7-1 5打点

まとめ

それでは、投球動作、データを踏まえて、分析、私見を述べることとする。

肩、肘に負担のかかる投球動作で、ギアを上げて投げる割に上腕部の内旋運動が加速せず、真っ直ぐで際どいコースに投げて見逃しをさせたり、フォーク、チェンジアップを多投して空振りを取るピッチング、すなわち、審判と勝負するピッチングでもあるので、球数も多くなり、球数が増えると握力が落ちて真っ直ぐが走らなくなる。

四球も増える。

これでは、先発では中盤に打ち込まれるし、リリーフをするにしても1年持たない。

フォーシームは、カットやツーシームよりも制球が難しい。速球系の中では、否、変化球を含めても最も制球が難しい。その次がカーブである。

フォーシームの割合を更に、黒田並みに減らすことである。

初球の被打率も高い。四球で歩かせても次打者は、ボール球から入る必要があるのだが、しつこい打者には、少ない球数でシングルヒットを打たれることで、次打者には、ボールから入りやすくなる。

打者がボールとバットの距離の取りにくいところに投げて、カウントを稼いでからのフォーク、チェンジアップの割合を抑えて、左打者のインコースに小さく曲がるスライダー系、アウトコース低目のツーシームを投げ切れるかである。特に4-1 1本 .250と今一つ使い切れていない左打者のインコースのスライダーの制球、軌道が課題である。

九里の場合、2ストライクを取るまでの過程で最も厳しいコースの球を投げてしまうので、2ストライク後の被打率が高い。

フォークやチェンジをすっぽ抜け切れずに、スプリットを叩きつけ切れずに、低目の制球が良くないので、バックスピンをかけられたりして被本塁打も多く、犠飛も多い。

黒田のようにボールからストライクの軌道の制球がないので、初球からストライクからボール、打者のツボからボールになる軌道で、カット、ツーシームを多投すると少ない球数でゴロの山が築ける。打者にスルーされても、打者がバックスピンのかけにくコース、インパクト後に差される、打者にとって更に厳しいコースに投げれば打者を打ち取ることができる。縦のスライダーをもっと使えば空振りも取れる。

リリーフで防御率が1点台といっても、17試合中、8試合が、4~16点差負け、7~10点という大差勝ちの場面で、14回2/3で 1自責であるので、リリーフに強いかどうかについて余り参考にならない。

僅差の場面(2試合を除いてビハインド)では、15回1/3 5失点で2.93、ほぼ3点台と良くはない。被打率も高い。

球速は、1球だけ150キロジャストを出したことがあるが、平均141キロ前後で、Maxで145~146、リリーフでも全球全力投げる必要はないし、リリーフで大差がついたときなどは、肉体の稼働をセーブしてもいいが、Maxが141~143のときもある。先発の後に投げると打者も対応しやすい。

奪三振率は、5点台後半だが、データ上ではなく、投げる球そのものとして、岡田、大瀬良、薮田のように、無双できる突出した球がない。ランナーを三塁に置いたときも三振を取ることも簡単ではない。与四球率が高く、点を取られたときの1イニング当たりの失点平均が2.47点、最大4点なので、試合の終盤でリリーフさせると、僅差の場面であれば、ビハインドだろうが、同点であろうが、リードであろうと試合が決まってしまう。

先発では、コンスタントにQSができるまで惜しいところまできている。投げている球そのものは今のままでも十分いい。真っ直ぐ系を投げるときは、負担をかけない投球動作で、配球を変えれば、少ない球数でイニングを食える。

打線の挽回で何とかなる先発の方がいいと思う。

主な打者との対戦成績

坂本     8-3    .375

村田     8-4 2本 .500

阿部     2-1    .500

ギャレット  5-1 1本 .200

長野     8-1  .125

中村悠平   7-3   .429

大引     8-3 1本 .375

バレンティン 8-2   .250

坂口     9-2   .222

山田     8-1  .125

雄平     7-0  .000

筒香     4-2 1本 .500

ロペス    6-1 1本 .167

梶谷     6-1  .167

桑原     8-1  .125

倉本     5-3  .600

宮﨑     5-0  .000

大島     2-2  .1000

ナニータ   2-2  .1000

平田     3-1  .333

ビシエド   2-0  .000

ゴメス    6-3 1本 .500

原口     7-3   .429

福留     6-2  .333

高山     7-2  .286

鳥谷     3-1  .333 2四球 犠飛1

※データは、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場他を参考にした他、独自に計算したところもあります。

[追記]

ドラフト6位の長井と仮契約を結び、これでドラフトで交渉権を獲得した全選手の入団が内定しました。

追加更新情報

右腕前腕部の回内は、両股関節を結ぶラインの手前で止める。右肘を屈曲、右腕前腕部を回内して右肘をコックップする。右肘をコックアップした後、右股関節が外旋し、コックアップ後、右腕前腕部を回外する間が作れず、右肘のアクセレーションに入る。

(2022)

日本ハム2回戦

日本ハム3回戦

年度部通算成績

NPB