昨季、広島打線が打ちあぐんだ田口麗斗のピッチング

Last Updated on 2022年8月9日 by wpmaster

田口麗斗と書いて、”かずと”と読みます。

“れいと”ではありません。

“かずと”であると知っている上で、”れいと”と呼んでいると思われる人もいますが、

そうでない人は、いい加減、覚えてあげましょう。

広島出身の投手で、小学生のときには、カープジュニアにも在籍し、北別府さんの教え子でもあります。

昨季、カープは、18勝7敗と巨人戦で大きく勝ち越しましたが、田口麗斗に1勝4敗。

田口の広島戦防御率2.09と打てていません。

一昨年は、広島が4勝2敗と勝ち越したものの、田口の広島戦防御率は3.33ですから、それほど打ち崩せてはいません。

打てない投手を増やせば増やすほど、3連覇は難しくなります。

ホストの源氏名のような名前とは裏腹に豆柴のような容貌をしていますが侮ってはいけません。

昨季の田口のMaxは、146キロ、平均130キロ台後半~142前後で、

右左の違いはありますが、中村祐太同様、スピード表示に騙されてはいけません。

リリースの瞬間までに瞬発力がボールが伝わる投げ方をしているので、打者はスイングの結果、体感速度は、球速表示以上に感じていることでしょう。

そこら辺りを踏まえて、田口の投球動作を見ていきましょう。

田口麗斗のピッチング

田口は、足を上げ始めたとき、左足は、足裏全体で地面を踏み、踵も拇指球も浮いていません。

左足は、どちらかというと拇指球に重心がかかっていますが、踵にも重心が残っています。

田口は、右膝をMaxで上げたときは、骨盤よりも右膝の位置が高く、左足の重心は、拇指に移り、踵が浮かせます(ヒールアップ)。

ヒールアップによって、右肩が内に入って左肘の出が遅れることを防止します。

体軸のスウェイを防止します。

田口は、右膝を内に入れ、ヒップファーストで重心移動をしていきます。

右膝が内に絞られています。

ヒールアップ投法の難点は、瞬発力が消耗してしまうこと。

ふくらはぎ、膝に負荷がかかること。

肘を故障しやすいこと。

グラブの位置を胸よりも下に落とし、脱力しています。

右膝も緩く曲げています。

左腕を落とし内旋し始めます。

グラブを持つ右手の肩も内旋できています。

右足のくるぶしを本塁側に向けています。

田口のテイクバックは、背中に付くところまで行っていないので、大きくありません。

左肩が若干下がるので、後に左肩、左肘が上がっていきます。

左肩を損耗するほどには下がっていません。

左肘も左肩より上に上がっていませんので、ルーズショルダーになりにくい長潟です。

左足は、スパイクの外側でエッジをかけ、左足首、ふくらはぎにやや負荷がかかっています。

骨盤の上に上体が乗り、骨盤が滑っていません。

後ろの骨盤も打者に隠せています。

右足は、スパイクの内側の歯を地面に向けてステップしていきます。

左肩を内旋し、左肘が逆L字になっていますが、それほどタイトには内旋していません。

先程、ヒールアップさせていましたが、右肩が下がると、体軸が前に出され(スウェイ)ます

田口は、スパイクの内側の歯を地面に向け、右肘と右足を並進運動させていきます。

右膝を加速させながら内側に入れていき三塁側に向けていきます。

これが瞬発力をボールに伝える秘訣の一つです。

エッジをかけた左足からグラブを持つ手にかけてCアーチがかけられています。

田口は、左肘をつまみ上げ、大腿骨を骨盤に差していき、両肩甲骨をぶつけていきます。

左足を蹴り始めたとき、左股関節、腸腰筋は外旋し始めていません。

右肩も開いていません。

田口は、トップを作ったときに、右足の踵から着地しますので、左肘が高く上がります。

しかし、左肘を左足が着地したときの衝撃で故障しやすくなるので、左足の踵から地面に入っていき、直前で拇指球で着地すれば、左肘を故障することなく左肘の高さを作ることができます。

胸の張りが大きいので三塁側に大きく傾きます。

ボールを持つ手は頭の後ろに隠せており、左肘、左手首のコッキングは、頭の方に向いていますが、もう少し、頭に近付けた方が瞬発力が逃げません。

胸の張りを作って三角筋を使用して左腕上腕部を後方に引っ張ります。

両肩甲骨を剥がしていきます。

胸の張りが大きい分、コッキングした左肘、左手首の軌道を修正し、頭の近くを回すことができています。

前の画では、田口は、一瞬右膝を垂直に曲げタメを作りましたが、右太もも裏、内転筋を上方に伸ばしていきます。

これもボールを瞬発力に伝える秘訣の一つです。

三塁側に回転軸が傾くので、左肘が上がり、左肘の角度は85°前後のオーバースローで、回転軸と左腕が垂直に交わるので、回転数の多い球が投げられます。

テイクバックの小さい後ろを小さく前を大きくの投げ方なので、頭が軸より前に出されません。

左腕を内旋します(手首を小指の側から三塁側に切る)。

田口のスライダーは、打者がスイングした結果としてボールが二度曲がる(厳密には落ちる)ように錯覚するようです。

左肩、背中は捕手のミットの方を向いていますので、

もう少し、首を上下に振れば瞬発力がボールに伝わります。

右膝を上方に蹴り伸ばして壁を作ります。

しかし、左足を三塁側にターンすることなく、一塁側に左足を着地し、左腕の振りを止めてしまっています。

これは、瞬発力をボールを伝え切ることができず、残念な部分です。

昨季の成績

主要成績

26試合 完投3 完封2 無四球1 13勝4敗 防御率 3.01 打者709人 2,729球 170回2/3 159安打 被本塁打 14 与四球50 与死球4 奪三振122 59失点 57自責 QS 65.38%

被打率 .249

右打者 409-100 .244 11本 37打点

左打者 225-57 .253 3本 19打点

被出塁率 .306 被長打率 .357

被OPS .663

Whip 1.22人

LOB率(残塁率) 79.52%

コース別成績

右打者

左打者

右打者は、打者が、ボールの軌道に45度で振り下ろし、ボールの後ろをこすりながらボールの下にバットをくぐらせてバックスピンをかけやすいコースは、23-8と打てている。

その上の体近く、目線近くの対応のスピードを要するコースは3-0、インハイ(赤色の部分)は右打者にも、左打者にも、0-0と球数の割に投げてきていない。

スイングの結果として体感速度の速く感じられる、対応が早くなった体近くのコースの後にスイングの結果として体感速度の遅い、対応が遅くなった低めを打てていない。

攻め方が逆であれば、差されるのはわかる。

どういうことかというと、右打者は、外寄りの低め、インローのボール球を振らせされているということは、腰が前に出され、肘が出て行っていないということ、遅れているということ。

結果として目線と投手のリリースポイントが近くなっていること。

始動が遅いということで、結果として準備期間がないということ。

股関節、腸腰筋の回転による瞬発力が伝わるインローを打てていないと言うことは、前の肩が開き、腰が前に出され、肘が伸びてヘッドが前に出され、肘の出が遅れ、瞬発力を逃がしてしまっているということ。

球種別成績

球種配分

ストレート 49.23%

スライダー 40.54%

チェンジアップ 7.87%

カーブ 2.24%

フォーク 0.11%

球種別被打率

①スライダー 309-83 .269 6本 56三振

空振り率 9.71% 見逃し率 16.97%

②ストレート 271-61 .225 8本 50振

空振り率 3.81% 見逃し率 25.93%

③チェンジアップ 52-13 .250 16三振

空振り率 12.15% 見逃し率 3.74%

④カーブ 6-2 .333 0三振

空振り率 1.64% 見逃し率 34.43%

⑤フォーク 0-0 .000 0三振

空振り率 0.00% 見逃し率 0.00%

主な打者との対戦成績

山田哲人 10-3 .300 2本 1振

坂口 13-4 .308 2振

中村悠平 7-5 .714 1本 1振

大引 8-1 .125 1本 2振

バレンティン 5-0 .000 2振

雄平 5-1 .200

上田 6-3 .500

西浦 6-2 .333

藤井亮太 5-0 .000

荒木貴裕 4-2 .500

桑原 11-5 .455 2振

宮﨑 10-4 .400

ロペス 10-4 .400 1振

筒香 8-2 .250 1振

梶谷 9-3 .333 1本 2振

倉本 9-2 .222 3振

嶺井 7-1 .143 3振

田中浩康 7-0 .000 1振

石川 4-2 .500 1振

戸柱 3-0 .000

ビシエド 11-4 .364 1本 1振

荒木 14-5 .357 3振

大島 11-4 .364

ゲレーロ 17-3 .176 5振

京田 10-3 .300

松井佑介 9-2 .222 5振

福田 8-1 .125 3振

平田 5-1 .200 1振

堂上 8-1 .125 3振

谷 6-2 .333 1本 3振

藤井 5-3 .600

バルデス 4-1 .250 1本 2振

近藤弘基 6-3 .500

高橋周平 5-0 .000 1振

杉山 4-0 .000

糸井 12-5 .417 1振

鳥谷 10-2 .200 1振

上本 10-5 .500 2振

福留 9-4 .444 1振

俊介 9-5 .556 2振

大山 6-1 .167

梅野 7-1 .143 1振

北條 6-2 .333

大和 5-0 .000

中谷 4-0 .000 1振

原口 3-0 .000 2振

髙山 3-0 .000

田中広輔 19-9 .474 2振

鈴木誠也 15-4 .267 2本 2振

丸 19-4 .211 3振

菊池 19-3 .158 4振

エルドレッド 16-2 .125 1本 3振

新井 8-2 .250 3振

會澤 11-1 .091 1振

西川 9-1 .111

松山 7-1 .143

バティスタ 7-1 .143 1振

安部 5-0 .000 3振

磯村 4-1 .250 1本 1振

堂林 3-0 .000

大田 3-2 .667 1本

レアード 3-0 .000

西川遥輝 2-0 .000

角中 2-0 .000

伊志嶺 4-2 .500 1振

パラディス 4-1 .250 1振

中島宏之 3-2 .667

小谷野 3-2 .667

T-岡田 2-1 .500 1本 1振

大城 3-1 .333

カード別成績

ヤクルト 4試合 3勝0敗 2.81 25回2/3 8点

DeNA 3試合 1勝0敗 2.86 22回 7点

中日 6試合 2勝1敗 3.25 36回 13点

阪神 4試合 2勝1敗 4.70 23回 12点

広島 6試合 4勝1敗 2.09 43回 10点

日本ハム 1試合 0勝0敗 2.57 7回 2点

ロッテ 1試合 1勝0敗 0.00 9回 0点

オリックス 1試合 0勝1敗 9.00 5回 5点

まとめ

投球動作のプロセスにおいて、途中、瞬発力を損なう動作が所々見られますが、投球動作の中で修正し、リリースのときに、瞬発力を最大に持っていく投げ方ができていますが、最後の最後のフォロースルーのところで一塁側に重心が残ってしまっているのは、勿体ない。

三塁方向に左足をターンしていって投げている球もありますが、完全にはターンしきれていないので、三塁側に左足をターンしきるできれば、更に瞬発力を逃がすことなくボールに伝えることができます。

カープサイドとしては、カット系にしろ、抜かれたにしろ、始動を早くして肘先行、後ろの腰回転を後行のインサイドアウトで振り遅れないことが重要です。

抜かれたときや落ち球では、振り遅れるとスイングの結果、ボールの軌道が死角にってしまいます。

まずは、体の近くの真ん中高め、インハイを振ってみることが大切、振らないとボールの速度は評価できませんから。

ヒッチ(丸がやっているグリップの下げ上げ)、コック(松山がやっている手首の伸縮運動)を用いてスウェイ(体が前に出されること)を抑える。

丸のような踵回転のうねり打法では、低めにバットが届かない。

菊池、田中のような後ろの踵を浮かせる拇指球回転では、体が前に出される(田中は、今季改善されていきた)。

鈴木誠也のようなエッジをかけて後ろ足を運び、拇指球回転→踵に重心を移していくハイブリッド型の打法が田口のような投手は攻略しやすいだろう。

年度別通算成績

NPB