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今季の藪田和樹(2017)
今シーズンの藪田は、中継ぎでスタート。
リリーフで、23試合に登板し、27回 121打者 463球 26被安打(被本塁打3) 22奪三振 16四死球 9自責 防御率3.00
3勝1敗 3HLD
連投は、9回 3連投が最多
最多投球数は、40球
35球が2回、以下33球、31球と続く。
1試合 平均20.1球
回跨ぎが、2試合
チーム 45試合の段階(5/23)で、23試合の登板
5月30日からは、先発に回り、
15試合 102回 1,683球 415打者 76被安打(7被本塁打) 93奪三振 39四死球 28自責 防御率2.47
2完投 2完封
12勝2敗(QS率80%)
1試合最多投球数は、124球
1試合平均 112.2球
中5日が1度あった以外は、中6日で回る。
菅野とのマッチアップを制して1-0で勝った試合は、今季のカープのベストゲームだろう。
シーズントータルで、38試合 打者536人 2146球 129回 102被安打(9被本塁打) 115奪三振 55四死球 防御率2.58
15勝3敗
規定投球回未満ではあるが、最高勝率のタイトルを獲得した。
今年1年は、先発に、リリーフにと、大車輪の働きをして、チームのエースの役割をした。
ゴロアウト比率60.5%(フィールド内の打球のゴロ割合も59.8%)のグラウンドボールピッチャーでもある。
球速表示よりも評価されるのは、投げている球そのもののレベルなので、あくまでも参考程度だが、12球団の先発投手の中でフォーシームの平均球速がナンバーワン。
藪田については、テイクバックが極端に小さい投げ方をしているのに何故(打者の対応から見て)あんなに速い球が投げられるのかという疑問の声がある。
それでは、今季ブレイクした藪田のピッチングを見てみよう。
藪田和樹のピッチング
プレートは、一塁側寄りに踏みます。
一塁側に踏む投手は、重心が上り坂に移動していくので、縦回転の球が投げられます。
右足は、拇指にも体重がかかっていますが、やや踵の方に重心の比重がかかっています。
上体がやや反ると、股関節の移動が内旋→外旋が遅れる場合があります。
労働量が増え股関節が消耗します。
藪田は、ややヒップファーストの重心移動をします。
ヒップファーストの重心移動は、ステップ足である左足が着地したときに、左足に重心がかかりすぎてバタンと上体が倒れる場合がありますが、藪田の場合は、どうでしょう。
左肘を緩く三塁側に曲げ、グラブを持つ手である左手の上腕部を緩く深く内旋しています。
テイクバックは、全くといっていいほどありませんが、テイクバックのときに、右肩が下がります。
若干、右肩を下げることによって、その反動で縦回転の球が投げられるので、右肩が若干下がることは、は止むを得ません。
テイクバックのときに右肩が下がる投手は、コックアップを作るのが遅くなり、着地と同期すれば、ステップした左足が着地したときに重心が左足に過度にかかる場合があります。
藪田は、どうでしょうか。
左足のくるぶしを本塁方向に向けてスライドステップしていますので、左足で弧を描きません。
右腕上腕部の内旋、右腕前腕部の外旋運動の回転半径が短く加速距離が長い。
右肘は、やや逆L字型ですが、ルーズに曲がっているので、トップを作るのは遅れないでしょう。
右股関節を外旋し、二塁側に引きます。
しかし、やや、骨盤が三塁側に滑ってしまっています。
ここを修正すると、内旋運動の加速距離を短くさせずにボールに内旋運動を伝えることができるようになり、右手中指基節骨の関節窩にボールが嵌り制球も良くなります。
右股関節にタメができており、股間が「く」の字を下向きにした形になっています。
左足は、スパイクの内側、踵寄りの方から着地していきますので、フィニッシュで左膝が伸び、縦回転の球が投げられます。
兎に角、このとき、全く左肩が開いていないのは、素晴らしい。
後ろの骨盤も打者に隠せています。
プレートの縁にかけた足から内旋した右腕に、いわゆるCアーチもかけられています。
右肘をつまみ上げます。
右大腿骨を上に突き刺します。
左股関節のタメがあったので、右足を蹴り始めたときに、股関節、腸腰筋は内旋していません。
よって、縦回転の球が投げられます。
ここでも、未だ、左肩は開いていません。
両肩の肩甲骨をぶつけていきます。
着地したときにはコックアップはできていませんが、打者の正面に胸が向いていません。
ステップ幅は、7足分で、平均的ですが、もう少し、狭めると、左膝を緩く蹴り伸ばして壁を作って股関節の外旋方向と同一の方向にターンしやすくなります。
右腕上腕部を内旋していますが、タイトではなく、右肘も一塁側に倒れていません。
両肩は水平ではなく、右肩が下がっています。
しかし、右肘が両肩より上に上がっていません。
ルーズショルダーに全くならないとは言いませんが、なりやすい投げ方ではありません。
それによりトップを作るのも遅れないでしょう。
ボールを握る手は、頭の後ろに隠れています。
左膝も開いていません。
上体は、骨盤の上に乗って直立しています。
右肘を直角に曲げ。トップを作ります。
ボールを握る手は、頭の後ろに隠れています。
耳とボールを握る手の距離が近いので、腕が伸び切ることによる高めに外れることがありません。
トップを作るのがやや遅いのは、ヒップファーストの投げ方によるものです。
右腕上腕部を外旋していきます。
左膝も垂直に近く曲がり、左膝に体重がかかりすぎず、右膝も伸び切らずに、緩く曲がり、左膝が爪先よりも前に出されていません。
左膝が後方に伸びて、腰が引けて重心が右足に残っているということもありません。
右胸の張りを作ります。
回転軸も一塁側に倒れます。
肋骨下の筋肉をスライドさせていきます。
背筋力を消耗しない投げ方に改良されていますが、
右胸の張り、回転軸の一塁側への倒れ方は、前回取り上げた加藤ほどではありません。
球数も平均的な先発投手並みには放れるでしょうが、ややリリーフに対応しやすいでしょう。
右胸は、打者の正面に向けていません。
ボールを握る手の平は外側に向けています。
グラブを肋骨に沿わせて引いていきます。
右腕上腕部を外旋し肩を後ろに回転し、引っ張ります。
胸の張りを作っていたので、右腕上腕部棘下筋に負荷がかかりません。
左肩の内旋ができていたので、右肩甲骨を剥がす投げ方ができます。
右肩の肩甲骨周辺の筋肉の可動域も広くなります。
肘も捕手の方に向いています。
ボールを握る手が、僅かに見え始めます。
テイクバックが小さいのと、コックップ前に、右股関節の内旋しなかったので、頭が前に出されません。
後ろを小さく、前を大きくする投げ方ができます。
股関節の内旋が早くないので、右肘も上がっています。
左膝が開かないので、右腕上腕部が伸びてロックされません。頭の右横の空間が広くなりません。
いわゆる0ポジションができています。
小指の側の方からチョップさせていきます。
右腕上腕部を外旋させます。
外側に向けていた手の平を股関節の外旋方向に向けます。
左膝を上方に蹴って伸ばしていきます。
リリースの瞬間、左足が突っ張っているので、右腕前腕部が加速します。右腕上腕部の内旋運動の加速距離が長く、失速を遅らせてボールが投げられます。
胸の張りを作っていたので、腕のしなりができています。
上体を一塁側に傾けています。
左膝を上方に伸ばしていき、壁を作り、一塁側にターンするのが早くなるのが抑止できます。
右足を股関節の外旋と同じ方向にターンします。
右腕のフォロースルーの通路をふさがないので、右腕前腕部の回外運動を完結することができ、トップスピンがかかった球が投げられます。
この段階で、上体を一塁側にもっと傾けていられるとメジャーで通用する投手になれます。
各種成績(2017)
コース別成績
右打者
左打者
右打者、左打者共に、打者の首から近いインハイは打てていません(合計22-1 .045)。
真ん中高めのゾーンよりボール2個分高い、打者の首から近いコースは、右打者、左打者合計6-1 .167
打者の首からやや近く打者の肘がロックされるアウトハイは、右打者が.458、左打者が.294と打たれている。
打者が後ろの内臀筋、股関節の内旋運動で産み出した加速が伝えてインローに投じると、右が8-2だが、左打者はオープンスタンスの打者が多く、内にステップ足を入れてから打つので、引っ張ることが難しいので、15-0となっている。
しかし、それより外の真ん中低めは、.414と打たれている。
球種別成績
ストレート 199-49 .246 7本 46振 空振率7.11% 見逃率16.30%
カットボール 104 -23 .221 2本 19振 空振率14,23% 見逃率15.50%
ツーシーム 145-23 .159 1本 48振 空振率22.16% 見逃率 9.83%
ハードカーブ 20-7 .350 2振 空振率4.40% 見逃率16.37%
スプリット 2-0 .000 空振率25.00% 見逃率0.00%
ツーシームは、チェンジアップとしての役割を果たしている。
ストレートのMaxは、156km/h(先発)
アウトの内訳
①通算
内野ゴロ 147
フライアウト 104
併殺による増加分 11
犠打 9
犠飛 1
三振 115
合計 387
内野失策 2
外野失策 1
ゴロ比率 (147+9+2)/(261+3)=59.8%
②リリーフのときのアウト内訳
内野ゴロ 30
併殺による増加分 4
外野フライ 12(内、邪飛2)
内野フライ 6(内、邪飛 4)
内直 2
犠打 5
合計 81
内野失策 1
ゴロ比率=31/60=51.7%
打球方向
右打者
右 44-17 .386 2本(24.4%)
中 52-12 .230 1本(28.8%)
左 84-26 .309 4本(46.6%)
左打者
右 54-21 .389 2本(31.2%)
中 72-10 .139(41.6%)
左 47-8 .170 1本(27.1%)
※失策3が加わって他、犠打、犠飛も打数に加えている。
逆方向への打球割合が18%以下の打者をプルヒッターと言う。
右のホームラン打者であると、左方向への打球は、50%前後、左のホームラン打者の場合には、右方向の打球が23%前後であるので、左打者に引っ張られていることがわかる。
リリーフのときに限って打球方向を見ると、
①右打者
右方向 12-6 .500 1本(32.4%)
中方向 7-1 .143 (18.9%)
左方向 18-7 .389 (48.6%)
②左打者
右方向 15-7 .467 1本(35.7%)
中方向 15-2 .133 (35.7%)
左方向 12-2 .167 1本(28.6%)
ケース別成績
得点圏被打率 113-24 2本 27打点 .212
走者二塁 30-6 1本 4打点 .200
走者三塁 10-2 3打点 .200
走者一、三塁 14-1 3打点 .071
走者二、三塁 10-4 1本 8打点 .400
満塁 12-2 6打点 .167
主な打者との対戦成績
坂本 9-3 .333 2振
阿部 8-2 .250 2振
マギー 11-2 .182 3振
村田 6-1 .167 1振
陽岱鋼 7-2 .286 2振
小林誠司 6-2 .333 1本
亀井 8-2 .250 1振
長野 3-1 .333
石川慎吾 4-2 .500
山田哲人 14-5 .357 1本 5振
バレンティン 15-4 .267 1本 4振
坂口 17-2 .118 3振
中村悠平 16-1 .062 1本 4振
藤井亮太 15-1 .067 4振
大松 10-3 .300 1本 3振
西浦 8-3 .375 2振
筒香 5-2 .400
ロペス 5-2 .400 2振
宮﨑 4-2 .500
石川 1-1 .1000 1本
桑原 5-1 .200 3振
柴田 5-1 .200 3振
福田 10-4 .400 1本 2振
ゲレーロ 15-2 .133 2本 1振
大島 9-2 .222 2振
藤井淳志 11-3 .273 2振
松井雅人 11-2 .182 2振
京田 15-2 .133 3振
亀澤 8-1 .125 1振
ビシエド 4-1 .250 1振
福留 2-1 .500 1本
糸井 2-0 .000
鳥谷 4-1 .250 2振
梅野 2-2 .1000
レアード 3-0 1振
大田 3-2 .667
田中賢介 2-0 .000
中田翔 2-0 .000 1振
秋山 2-0 .000 1振
メヒア 3-2 .667
中村剛也 3-1 .333
浅村 2-1 .500
ロメロ 3-0 .000 1振
T-岡田 3-0 .000 3振
中島宏之 2-1 .500 1振
小谷野 3-0 .000 1振
カード別成績
巨人 6試合 20回1/3 4自責 1.77 2勝0敗
ヤクルト 10試合 39回2/3 15自責 3.40 4勝2敗
DeNA 5試合 10回2/3 5自責 4.22 1勝0敗
中日 9試合 33回 8自責 2.18 5勝0敗
阪神 5試合 5回1/3 2自責 3.38 0勝1敗
西武 1試合 6回 0自責 0.00 1勝0敗
日本ハム 1試合 6回 3自責 4.50 1勝0敗
オリックス 1試合 8回 0自責 0.00 1勝0敗
※ゴロアウト割合、打球方向以外は、独自計算、それ以外は、データで楽しむプロ野球を基に当方が作成。
まとめ
藪田の場合、トップを作るのが遅れても、急ピッチでコックアップを作って左足のステップと右肘のアクセレーション(トップを作るときに右肘を直角に曲げること)がシンクロして出てきて、胸が打者の正面に向くことが少ない。左膝を使ったブロッキングがなくなって、左つま先の前に左膝が出て左股関節を荷重し、上体が前に倒れたり、右股関節の内旋が静止せずに左膝が開いて頭がラインから外れることが少ない。よって右腕上腕部が伸びて、空間ができてしまうことが、他の投手に比べると少ない。
ステップ幅を6.5足分くらいにして、一塁側へ上体を傾けたまま、一塁側へ右足をターンし終えることができれば、更に加速距離を減じることなく右腕上腕部を内旋して球が投げられるでしょう。
藪田と雖も、右肘のコックアップを作るのが遅れ、左膝を使ったブロッキングができなくなって、爪先に体重がかかったり、右膝が前に伸びたり、一塁側へのターンが早くなってしまうと、右腕上腕部棘下筋が伸びてしまうので、球がシュート回転してインハイに外れたり、ボールを引っ掛けてアウローに外れてしまう。よって、打者は振ってくれない。
又、フィニッシュで重心が三塁側に残って、股間から下が台形になれば、フォロースルーの通路をふさぎ、右腕前腕部の回外が完結できなくなってボールを置きに行く状態になる)、右手親指の指先がしならず、右腕上腕部の内旋運動が加速せず、バックスピンのかかりが悪くなって打者に打たれている。
コーナーピッチングは必要ないので、ホームベース上に、フォーシームも半速球も変化球もこれまで述べてくたような、左股関節を引っ込め、両股関節の幅を狭めて右股関節の内旋運動によるフォローを行わせることができるかが来季以降も活躍できるかどうかの鍵である。
[追記]
藪田は、フォークと縦のスライダーを習得するようです。
九里は、ステップの幅を7足分から6足分にするようです。