既にキャンプもスタートしていますが、まだ、序盤でオープン戦も始まっていないので、
もうしばらくは、各論的な話をしようと思います。
今シーズンの鍵となる選手は、何人もいますが、
その中の一人が田中広輔。
昨シーズンは、1番打者に定着し、チーム唯一の143試合全試合フルイニングに出場。
田中の得点数102は、山田哲人と並んでセリーグ1位
広島打線が苦手にしてきた菅野から1試合2本塁打した試合を始め、優勝にも大きく貢献した。
2015年は、チームとしては、二塁走者がシングル安打で本塁生還した数が53とセリーグ最下位。
2塁走者がシングル安打で本塁に生還した率もセリーグ最下位の.431であった。
田中、菊池の走塁での貢献もあって
2016年は、チーム全体として、ランナー2塁からのシングル安打での生還数は、91と大きく増加した。
しかし、アウトにならずに、自身の本塁打以外で生還した他力生還率は桑原が.401でセリーグトップ、2位の菊池が.380、田中広輔は、.357。
2015年最も一番打者を多く務めた丸ですら、.361。
盗塁数は、28であるが、失敗も19ある。これは、20盗塁以上したセリーグの野手でワーストの成功率。
捕殺数は、467でセリーグの遊撃で2年連続で1位ではあるが、失策も18で最多。
打撃面の数字を見ても、同年齢の菊池、丸と比べると、やや物足りないのも事実である。
昨季は、後述するように、.319といいスタートを切ったが、シーズントータルでは、.265
一度、打撃を崩すと立て直すのに時間がかかる。
これは、プロ入り以来、言えることだが、どこに原因があるのだろうか。
ファンの方には、疲労があるから休ませろという声もあったが、
私は、田中、丸、鈴木は休ませることには反対してきた。
野手以上に疲れているのは、投手。
打撃そのものに問題があるのではと見てきた。
昨年の打撃成績と打撃の動作を分析した結果、様々なことがわかってきた。
熱心なファンの方は私がここで、述べるまでもなく、気付いていると思うが、書いてみたいと思う。
田中広輔の打撃動作の解析
田中は、オープンスタンスで立ち、主に右膝を使って始動して速度、球筋を評価する。
グリップは、やや高めに構え、投手が骨盤の高さから足を下げ、投手の重心が沈んだときに、始動し、早めにトップを作っているが、真ん中低目のボールの打率が22-0と低い。
打率が落ちかけるときは、オープンスタンスから骨盤の高さまで足を上げて、クロスステップしてスクエアに足を踏みだし、弧を描きながらつま先を地面に触れさせる。
これだと、インコースより上の球に差されてしまう。
股関節と腸腰筋の内旋、外旋で産み出した瞬発力を逃してしまうので、インローを打つとき、瞬発力がバットに伝わらない。
田中は、ステップして着地したときに、左足で地面をかませる動作が甘く、グリップを後ろに引いてトップの角度を45°にキープすることができていないのと、右足の拇指で外旋右膝の割れを作るので、頭が前に出されてしまう。
この一連の動作のときにに頭がぶれる。
低めの球に、ヘッドが返ってしまう。
安打が量産できているときは、頭が残っている。
インパクトの前に左肩が下がる。
後の手である左手が主導でインパクトの瞬間に左の手首の下がりを抑止する。
左肩が下がるのでインコース高目を攻められると遅れる。
逆に外の球には強い。
インパクトした後も後ろの手で押し込むので、逆方向の打球が伸びる。
今季の打撃成績
今季の打撃成績は、下記のとおりである。
143試合 581打数 154安打 .265 13本塁打 39打点 17二塁打 3三塁打 四球78 死球17 犠打3 犠飛1 三振119 盗塁28 盗塁死19
併殺1
出塁率.367 長打率.372 OPS .739
打てない期間は長くても、四球78を選んでいる。三振は119と多いが、球数を投げさせ、1番打者の仕事をしてくれている。
第一打席は、必ずランナー無しで打席に入る1番打者であるとはいえ、シーズン1併殺だけというのは素晴らしい。
対右投手の打率は、316-79 8本 .250 68三振
左投手は、265-75 5本 .283 51三振
シーズントータルの空振り率は、8.21%とやや高い。
月別成績
月別成績は次のとおりである。
3、4月 116-37 1本 7打点 .319
5月 106-27 2本 5打点 .255
6月 83-22 4本 7打点 .265
7月 90-23 4本 9打点 .256
8月 110-33 2本 6打点 .273
9月 73-15 5打点 .205
10月 3-0 .000
打球方向
打球方向は、下記のとおりである。
レフト方向 205-43 .210 4本塁打
センター方向 252-62 .246 1本塁打
ライト方向 115-49 .426 8本塁打
左肩が下がり、弧を描くステップとも関係があるが、逆方向に打球を多く飛ばしている。
カウント別成績
カウント別の打率は、
初球 67-29 2本 .433
0ボール1ストライク 31-14 1本 .452
2ボールワンストライク 32-14 1本 .438
0ボールワンストライク 39-15 2本 .385
早いカウントでの打率が高い。
一方、2ストライクを追い込まれると、
0ボール2ストライク 39-5 .128
1ボール2ストライク 116-23 1本 .198
2ボール2ストライク 121-22 1本 .182
極端に打てなくなる。
得点圏打率は、106-27 .255
トータルの打率と比例して良くも悪くもない。
イニング別では、2回の打率が.393、8回の打率が.328と高く、4回が.167、9回が.162と低い。
第1打席が127-38 .299、出塁率.378
第2打席が117-35 .299 出塁率.427と高く、
第3打席が122-24 .197 出塁率 .293と最も低い。
コース別成績
今季のコース別打率を見ると下記の表のようになる。
今シーズン幾度となくインコース攻めでやられてきたのを見てきたが、ここまでインハイ、インローが打てていなかったとは思っていなかった。
スピードが評価しにくい真ん中高めのゾーンよりボール2個分上のところも12-0と打てていない。
球種別成績
球種別の打率は、下記のとおりである。
ストレート 250-72 .288 4本 45三振
スライダー 158-32 .203 5本 31三振
カーブ 25-12 .480 2三振
フォーク 53-12 .226 23三振
カットボール 26-7 .269 2本 8三振
シュート 34-7 .206 4三振
シンカー 11-6 .545
チェンジアップ 24-6 .250 6三振
緩い変化球や失速する球を投げる投手には強い。
右投手の外のスライダー系(田中にとっては、インコース)を打てていない。
縦に目線を錯覚させるフォークにも脆いところがある。
グリップを体に近くで回らせるか、スクエアで構え、
バッターボックスの線と平行に真っ直ぐ投手方向にステップさせることのいずれかによって、
インコースに対応することが必要になると思われるが、
前者のやり方だと、今まで作り上げてきた打撃の根本から変えなくてはならず、野球人生を棒に振るかもしれない。
個人的には、スクエアで立って、弧を描かずに、真っ直ぐに投手側に右足を運ぶ後者のやり方で対処する方がいいのではないかと思う。
開幕までにどこまで修正してきてくれるか楽しみです。
主な投手との対戦成績
菅野 14-3 .214 2本 3点 6振
田口 26-11 .423 1本 3点 1振
マイコラス 7-2 .286 2振
高木勇人 6-2 .333 2振
大竹 6-2 .333
内海 5-0 .000 1振
山口鉄也 5-2 .400 1本 3点 1振
マシスン 5-3 .600
澤村 5-1 .200
戸根 8-3 .375
石川 17-7 .412 1振
山中 11-4 .364 3本 5点 1振
小川 11-1 .091 2振
成瀬 9-1 .111 3振
新垣 8-4 .500 1振
石田 12-4 .333 1打点 3振
井納 24-6 .250 2振
今永 14-2 .143 3振
三嶋 6-0 .000 2振
モスコーソ 7-0 .000 2振
大野 17-4 .235 1本3点 2振
若松 14-2 .143 1点 4振
岡田俊哉 9-1 .111 4振
ジョーダン 8-4 .500 2点 1振
バルデス 9-3 .333
吉見 6-2 .333 1点 2振
能見 18-5 .278 4振
藤浪 22-6 .273 1本 1点 6振
メッセンジャー 9-2 .222 3振
高橋聡文 8-1 .125 3振
岩貞 16-3 .187 6振
文中数字は、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場他を参照した他、独自に計算したものもあります。
まとめ
今シーズンも不動の一番打者として欠かさせない存在。
内角を克服して、インコースの打率11-2ペース.182ぐらい、シーズントータルを7打数で2安打ペース .286は打って欲しいところ。
試合終盤の厳しい場面、追い込まれたときの勝負球にいかに対応するかである。
早いカウントで凡打するよりは、三振の方が投手に球数を放らせることができるものの、
転がせば安打、毎試合1打席は無走者で打席に立つとはいえ、ランナーのいる場面では進塁打の確率も高くなるので、
できれば三振も98ぐらいに留めてくれればと思う。
盗塁の成功率も47回試みたのであれば、34~35くらい(.723~.744)成功させて欲しい。
捕殺数470前後は中々他の選手にできることではない。
失策数も14ぐらいに抑えることができたらと思う。
走塁面も後半は良くなってきたけれども、打球の見極めとスタートが良くなれば、本塁生還率は更に上がり、
リーグ一のトップバッターになれるだろう。
[追記]
赤松も2月1日から、ゆっくりと体を動かし始めたようです。
まだまだ、チームにとって必要な存在。
球団側も赤松の枠はとっておいてくれるでしょう。
無理はしないことです。
鈴木誠也もウエイトトレで96キロまで増量したようです。
公称181センチ(実尺は、177ぐらいか)で、96キロ。
体のキレが悪くならないかという懸念はありますが、
プロ入り前から足首、腰回りが太く、昨春から1段と太くなりましたが、相変わらず土台はしっかりしています。
全く実戦的な練習ではなく、大瀬良が打たせてくれたとはいえ、最後は、きちんと振り切って本塁打。
WBCでは、3人の中では、最も打席に立つでしょうから、それなりに実戦でスイングはできるでしょう。
戸田は、左肘の違和感という発表ですが、
硬式球を投げた後に違和感を全く感じない投手はいません。
手首の故障も完治していないのでしょう。
今飛ばす必要はありません。
暖かく感じられるまで、体と相談しながら、休みながら、
じっくりと開幕までに合わせてくれればいいと思います。
ラミロペーニャは、本職は、左打者でしょう。
野村から打った本塁打は、コースは甘いですが、高さは間違えていない球。
ローボールヒッターですが、ボールの下をくぐらせる打ち方ではなく、ストロークは短いので、
キャリアは異なりますが、巨人のギャレットのような打者だと思います。
前で、拾う(さばく)打者なので、外の速い球には強いとは思います。
高さ、コース共、ボール半分~1個厳しく変化球を投げられたら 、膝がつま先より前に出ていわゆる泳がされたり、
視界からボールが消えて三振を量産しないか見極めが必要だと思います。
アベレージは、.260前後でしょうか。
[追記]
弱点を修正するよりも、長所を伸ばせばいいという問題ではないところまでインコースを打てていません。
田中は、ベース寄りに立ちます。
本文にも書きましたが、現在の打ち方だと、オープンスタンスから前足を内側に入れてから(死球が多い原因)、前足をかく分、動作がロスしているので、どうしてもインコースに遅れたり、詰まったりします。
いっそのこと、スクエアで立って、膝をルーズに使いながら後の腰を内側に入れて回るなりして対処法を考えていかなければ、これからもインコースを攻められ続けて率が上がってこないと思います。