丸佳浩は今季も引き続き結果を残すことができるか。

一昨年の不振から脱出し、打率3割には届かなかったものの、本塁打、打点は自己最高を記録し、優勝に貢献し、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞した。

今季も最も重要な打順の一つである3番を打つことが予想されるだけに、連覇をする上で鍵を握る選手の一人である。

丸佳浩のバッティング

2015年の丸は、オープンスタンスで立ち、グリップを真下にストンと落とした後、前足に体重移動する際に、グリップの位置をゾーン高めいっぱいのところまでしか戻さずない。インパクトの際、膝が伸び切り、多くの解説者が指摘したかかと体重になっていた。上体だけは開いてしまっており、打球に瞬発力が伝わらずに詰まらされた。

.310を打った2014年は、グリップの位置を高くしてバットを立ててオープンスタンスで構え、投手が腕を後ろ回転した辺りでスクエアスタンスにして2016年ほど大きくはないが、ヒッチして上げる打法をしていた。

2014年は、インハイが25-11 4本 7三振 .440(ボール球を含めると26-11 .423)。但し、14-3 1本 3三振 .214とインローは強くなかった。

2015年は、23-5 .217に大きく下落した。インハイのボール球を含めると37-6 0本 13三振 .162。左投手が投げたインハイは、12-2 .167ボール球を含めると19-2 10三振である。

2015年は、膝と手首を使って速度を評価できていないから、膝が伸び、「ヒッチして上げる」の「上げる」が足りていない。懐が狭い打撃になっていた。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5

写真6

2016年の丸は、同じくオープンスタンスであるが、投手が足を上げたときに、バットを寝かせて揺らしながら、また、膝を使い、かかとを浮かせ、つま先に体重を置き、そして地面と水平に戻すという動作を繰り返し(写真1 : シンクロ打法)、速さと軌道を評価している。また、打席によっては、前後に膝を揺らしてからスイングして速度や軌道を評価している。

ストンとグリップを落とした後、つま先で着地する位置を探り着地するまでにグリップをゾーン高めいっぱいからボール2個分高いところまで戻している。膝も曲がって、ポイントを前に置いている。

始動が早いので、膝がつま先より前に出てしまってないから、真ん中低めのコースを拾って安打にできる。

ヒッチして上げる打法に修正して左足を地面にかませることができ、後ろ足の踵体重を防止することができている(写真5)。

しかし、右足は、踵から着地するので、前足の筋肉を下からうねり上げるようにして瞬発力をバットに伝えている(写真6)。

踵から着地すると、トップの位置をこらえるときにヘッドが立つが、左足が螺旋状に筋出力するので、振り下ろすのが遅いと、球を受けて、右膝が伸びてインパクトの瞬間、少し差されることがある。

重心が後ろに残っていればセンターから逆方向の当たりが増えて率が残るが、本塁打は、増えない。

バットを回り道してボールの下に入れるのではなく、回り道することなくボールのサイドに入れてミートしているので、ストロークが短い。

前の手主導でも打つこともできる。

後ろの手手動で手首の下がりを抑えてヘッドを下げずに打つこともできる。

膝は開くが上体は開かずにミートしている。

手首と膝を使って振る事で、速度を評価できるようになったので、トップが高く戻せ、つま先でステップの着地する位置を探れるようになり、膝が曲がって開く。上体は開かずに残り、割れができている。懐が深くなった。

インハイの打率も、17-5 1本 4三振 .294。ボール球を含めると26-8 1本 7三振 .308。

只、ヒッチしたときに頭が骨盤の上に乗らずに、前に出されている。

インローもゾーン内だけなら30-8 1本 7三振.267。ボール球を含めると41-8 13三振 .195なので課題は残す。

昨季の丸佳浩の打撃成績

昨年の丸の打撃成績は、下記のとおりである。

143試合 557打数 162安打 .291 20本塁打 90打点 30二塁打 8三塁打 107三振 85四球 7四球 犠打1 犠飛3 9併殺 2失策

出塁率.389 長打率.481 OPS .870(2015年は.681)

全試合3番センターで出場した。

マルチ安打 43、3安打以上 11

1試合2本塁打 1 試合

ソロ本塁打10、2ランが7、3ランが3本

2四球超18試合

本塁打以外のフィールドに飛んだ打球が安打になった割合であるBABIPが.327

対右投手 298-88 ・295 12本 59三振

対左投手 259-74 .286 8本 48三振

得点圏打率

得点圏打率は、148-41 .277 3本 59打点 26四球 30三振

2015年は、126-25 .198であるから、回復したのであるが、それでも、もう少し得点圏で安打を打って欲しいところである。

2016年の得点圏打率は、ビハインド 36-8 .222 0本 13打点 9三振

内、1点ビハインド 12-3 .250 5打点 2三振

同点 43-13 .302 0本 12打点 9三振

リード  69-20 3本 .290

内1点リードのときに、21-7 .333 2本 16点 2三振

追加点を取ってチームに貢献した。

ケース別打撃成績

無走者 280-79 .282 10本 10打点

走者1塁 129-42 .326 7本 21打点

走者2塁  57-14 .246 0本 10打点

走者3塁  13-5 .385 0本 5打点

走者1、2塁   44-11 3本  15打点

走者1、3塁  17-7 .412 0本  13打点

走者2、3塁  7-0  .000 0本 1打点

満塁     10-4 .400 0本  15打点

カウント別打撃成績

カウント別の成績は、下記のとおりである。

初球  83-29  .349 5本

1ボール0ストライク 43-15 .349 1本

2ボール0ストライク 27-9 .333 2本

3ボール0ストライク 3-1 .333

0ボール1ストライク 28-11 .393 3本

1ボール1ストライク 47-18  .383 2本

2ボール1ストライク 35-14 .400 2本

3ボール1ストライク 31-12 .387 3本

0ボール2ストライク  24-5 .208 0本

1ボール2ストライク  71-14 .197 1本

2ボール2ストライク  101-22 .218 0本

3ボール2ストライク 64-12 .188 1本

初球、0-1、1-1、2-1、3-1と熟練していないバッテリーが甘い球を投げてくるところで、逃さず打っている。

追い込まれてからの打率が落ちる。

難しい球に対応するよりは、配球を読んで追い込まれるまでに打つ打者である。

打球方向

打球方向は下記のとおりである。

レフト方向  205-39 .190  5本

センター方向 218-61 .279 3本

ライト方向  122-62 .508 12本

本塁打は広角に打っている。

ストロークを短くして逆方向に打っているが、ランナーより後ろの1、2塁間に、

もう少し引っ張る打撃をすると、得点圏打率も上がるし、打点も増える。

最低でも進塁打になる。

その他

第1打席 .342

第2打席 .241

第3打席 .311

第4打席 .287

第5打席 .254

イニング別では、5回が.354、9回が.344、初回が.342と高く、8回が.176と低い。

昼間の試合 .331 8本 32打点

夜間試合  .278 12本 58打点

Home 269-85 .316 10本 49打点(裏の攻撃)

Away 259-74 .267 10本 41打点

コース別打撃成績

コース別打率は下記のとおりである。

 

ヒッチして上げる打法なので、真ん中のコースのゾーンよりボール2個分高い球も評価しやすく対応できる。

ヒッチする打法なのでアウトローは、軌道を評価しにくいので空振りが多い。

空振り率は、9.91%

ストライク見逃し率は31.65%

ボール球見逃し率は81.57%

球種別打撃成績

球種別打率は、下記のとおりである。

ストレート 267-80 .300 10本 51四球 40三振

スライダー 105-30 .286 6本 13球 30三振

シュート  49-16 3本 5打点  .326 3四球  5三振

フォーク  45-12 .267 1本 5四球 16三振

カーブ   36-9 .250 4四球 4三振

チェンジアップ 27-7 .259 2四球 3三振

カットボール  18-6 .333 5四球  5三振

シンカー 10-2 .200 4三振

前でさばくようになった分、フォークを待てずにフォークボールの空振りが増えた。

初速と終速の差がないカットボール、差があるシュート系の球も巧く打っている。

現在のフォークの打率も悪くはない。

膝を使って速度を評価するのが更に巧くなれば、ゾーンよりボール2個分低い球も拾って安打にすることができるし、三振も減る。

カード別打撃成績

球団別成績は下記のとおりになる。

対巨人 99-27 .273 3本 11打点

対ヤクルト 97-29 3本 13打点

対阪神 95-24 .253 3本 15打点

対中日 99-36 .364 9本 34打点

DeNA 101-26 .257 2本 10打点

対西武 10-5 .500 2打点

対日本ハム 11-3 .273 2打点

対ロッテ  12-2 .167

対オリックス 12-4 .333 1打点

対ソフトバンク 11-3 .273 1打点

対楽天  10-3 .300 1打点

月別打撃成績

月別成績は下記のとおりである。

3,4月 115-38 .330 5本 23打点

5月  104-24 .231 5本 20打点

6月  82-23 .280 0本 7打点

7月  84-15 .274 2本 10打点

8月  97-32 .330 5本 22打点

9月  72-22 .306 3本 8打点

10月  3-0 .000

まとめ

2016年の秋からバットを担ぐ構えから、初めからトップを高い位置に定めて構えている。ヒッチして上げるという動作を省くことはできる。グリップを動かさずに、腕を動かさずに始動のときのトップの位置を定める打法だとスピードや軌道を評価するのが難しくはなる。

個人的には、ヒッチして上げる打法を微修正しながら極めていった方がいいと思う。

しかし、膝をルーズに使うことで、オープンスタンスで立っていても、足を上げてつま先で地面に触れて着地する際に膝が曲がり、そのときもトップが高いところにキープされていれば2015年のようにはならないだろう。

一度作り上げた打球動作をマイナーチェンジするのではなく、壊してまた打撃を作り変えているのだが、果たして開幕までに完成させることができるか。

オープン戦に入り、昨秋から取り組んでいる打撃で臨んでいるが、本塁打も打ったし、凡退した打席でも膝が伸びずに、前でさばけている。

主な投手との対戦成績

菅野  12-5 .417   1打点 1三振

田口  24-7 .291 1本 2打点 5三振

マイコラス 8-2 .250 1三振

戸根   11-1 .091 1本 1打点 2三振

今村   7-3  .429  3打点

Matieson 6-1 .167 1三振

山口鉄  5-0

内海   4-2 .500 1本 2打点

石川  16-7 .438 1打点 1三振

小川  10-2 .200 1本 2打点 1三振

山中  9-2 .222

ルーキ 7-3 .429 3打点 2三振

井納  19-4 .210 1打点 4三振

今永  15-2 .133 8三振

石田  11-1 .091 1打点 4三振

山口俊  7-3 .429 1本 3打点

三上  8-1  .125 1三振

山﨑  2-1 .500 1本 1三振

八木  3-2 .667  1本 1打点

大野  13-5 0本 1打点  3三振

バルデス 9-3 .333 0本 2打点 2三振

若松  13-3 .231 1打点 1三振

ジョーダン 8-2 .250 1本 3打点

能見  16-6 .375 0本 2打点  3三振

岩貞  14-3 .214 3打点 2三振

藤浪  18-2  .111 2打点 7三振

高橋聡文 8-0  .000 2三振

メッセンジャー 8-4 1本 2打点 1三振

文中データは、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場他を参照した他、独自に計算したものもあります。

[追記]

野村は、右足全体でプレートを踏んだ後の体重移動も上手くできているので、調整は順調に進んでいるようです。

岡田は、テイクバックのときに右肩が下がらずに投げられていましたが、いつもより肩の後ろ回転が作れずに、リリースポイントが一定していませんでしたが、何とか0に抑えました。

緒方監督、畝コーチが将来のクローザーとして考えている塹江は、

軸足の蹴りが足りずに腕が伸びて高めに外れる球がありました。

下半身は鍛えられているので、飛ばしすぎて少し疲れがあるのかもしれません。

シーズンのどこかで必ず必要になる選手なので、無理に開幕一軍にこだわらず、細かく動作をチェックする必要があるでしょう。

ペーニャは、前回も述べましたが、アベレージヒッターではないですね。外低めを待ちきれずに空振りをしていました。

堂林の打球は、バットをボールの下にくぐらせたところは良かったですが、わずかにスライスしすぎました。膝を使ってバックスピンをかける打撃を習得できれば、大きい当たりももっと増えると思います。

九里は、Johnsonを参考に、始動する際に、プレートの後ろに引いていた左足を横にステップした後に上げるという投球動作を採り入れているとのこと。

なるほど、これなら、左足が弧を描いて開いて力が逃げることなく、左足を本塁に向かって真っすぐに踏み出せやすくなりますね。

あとは、試合の中でそれを続けていくことができるかでしょう。

菅野を参考に、リリース直前で腕を止めるのをやめたとのこと。細かな制球よりも球のキレに重点を置くということでしょう。