踵体重とヒップファースト

Last Updated on 2021年2月20日 by wpmaster

広島東洋カープのスプリングキャンプにおいては、既にフリー打撃が始まっています。フリー打撃は打者が打ち易い投球をします。前肩を開いてから投球肘を出せば、打者は投球の軌道と手首の距離が取りやすくなります。フリー打撃における投手の被打率が高くても、柵越えを何本浴びようとも気にする必要はありません。但し、キャンプ前半と同じ投げ方をキャンプ終盤までしていたとすれば、投打ともスイングのレベルは上がっていきません。

背骨は縦回転なのに肘が下がるのは何故?

投球肘をヒッチ(地面の方に引っ張る)すると、後ろ膝を折らなくても、後ろの肩が下がる。後ろの股関節を外旋することができる。ポイントは後ろ足を軸にするのではなく、後ろ足も投球腕と同じくスイングするということである。
後ろの股関節は後ろ足をスイングする準備、すなわち、後ろの股関節にしなりを作ることである。
高橋昂也は、セットアップのときには、前足である右足にウェイトをかけている。しかし、高橋昂也は、左肘をヒッチする前に左足の踵で地面を踏んでしまっている。側副靭帯の手術をする前は、左肘をヒッチしてから左足の踵で地面を踏んでしまっている。
右投手である大道も右肘をヒッチする前に右足踵で地面を踏んでしまっている。大道は、スライダー系のボールを投げるとそれが顕著になる。森下も昨シーズン中盤まではカーブを投げるとき、右肘をヒッチする前に右足踵で地面を踏んでしまっていた。
ワインドアップ又はノーワインドアップで投げると両手首を胸元に引く。ワインドアップ、ノーワインドアップは、セットアップで打者と正対し、後ろ足の踵で地面を蹴ってから両足をスクエアにする。頭上から手首を胸元に戻したときにそれを行う。共に、投球肘をヒッチする前に、後足の踵にウェイトが乗ってしまう。すなわち、後足のアキレス腱から後ろの腹横筋のラインに軸ができてしまう。遠藤のように両足をスクエアに戻したときにヒールアップすると、それが顕著になる。
クリスジョンスンや九里のように、セットポジションで投げても、セットアップの後に後足の小指球で地面を踏んだり、後ろ足の小指球を骨盤の方にスライドすると投球肘をヒッチする前に後ろ足の踵にウェイトが移ってしまう。
2段ステップを採用すると、一回目の前膝のレッグアップの前に投球肘をヒッチしたとしても、2回目に前膝を上げたときに後ろ足の踵にウェイトがかかり、それと同期するか、それから投球肘をヒッチすることになる。1回目の前膝を上げる前に投球肘がヒッチできていないと、計2回後ろ足に軸ができる。ケムナ誠は、2回後ろ足に軸ができることがあった。
投球肘をヒッチする前に後ろ足に軸ができてしまうと、両股間接が後ろ足を跨いでしまう。打者寄りの臀部が背骨の方に入ってしまう。
ヒップファーストは、打者寄りの骨盤を出してから前肘を推進するという限りでは、投球する方の人差指、中指をしならせる(前腕部の回内、トップに入る前)間ができる。
後ろ足の踵体重が更に顕著になると、遠藤や中村祐太、菅野、千賀、佐々木朗季、松坂大輔、野村祐輔、一昨季までの山本由伸のように前肩まで背骨の方に入ってしまう。菅野や野茂はトップに入る前に前肘が突っ張る。大腿骨を骨盤に刺す間ができない。後ろの膝が折れて後ろ足の小指球にウェイトがかかり、後ろ足のつま先の前に出る。後ろ膝が開いて人差し指、中指のしなりを作ったときの波動が外側に逃げてしまう。後ろの股関節をしならせることができない(後の股関節を二塁ベース方向に蹴ることができない)。打者寄りの骨盤を前に出したときに上体と下半身に捻転差ができてしまう。前足がインステップしてしまう。打者寄りの臀部を開かないとインステップを修正できない。前足を底屈したときの両足の間隔は狭くても、前足の着地位置の探りが長くなる(例:床田)。前足の着地位置の探りが短いのが一岡。

前足の着地位置の探りが長いと前膝をブロッキング(前足首の背屈、両股関節を引っ込める)するのが遅れる。前膝のブロッキングが中途半端になることもある。投球する方の人差指、中指をしならせる間ができない。
島内、藪田は、大学のときから前膝のブロッキングが完全であったが、森下は、大学のときは、前膝のブロッキングは、完全ではなかった。大道は、フォロースルー期に入りかかってから前膝をブロッキングしていた。両足のシャッフル(前足首の再背屈)によって前膝のブロッキングができ、後ろ足に軸を作らずに後ろ足を順方向又は逆方向にターンすることができる。
大瀬良、菅野、遠藤、矢崎、マシスンは、リリース(2回目の投球腕前腕部の回内)の前に前膝のブロッキングができていないから、後ろ足に軸ができる。両股関節をぶつけてシャッフルすると前膝が折れて前足踵が動く。フランスアは、前足踵が動かない。
投球腕の上腕部を外旋(トップポジション、投球肘が投球する手首の前に出る)してから、、前肩を開かないと、前肘のロックを解かないと、人差し指、中指のしなりを解く(投球肘の再ヒッチ、親指のしなりを作る、投球肘、後ろの胸の推進)ことができない。

故に、外国人投手の多くは、投球腕の前腕部のレイバックが大きくなってる。レイバックが遅れる。急ピッチでレイバックしているので側副靭帯、投球腕の上腕部を損傷する。投球肘を推進する前に前肩が下がらずに、頸反射してしまったり頭が前に推進する。森浦の頭が背骨より前に突っ込むのもこれらが原因である。
すなわち、前肩の開き、前肘の推進、前肘のロックの解除、ヒップファーストにより、投球する方の手首がトップポジションに達したとき(投球腕上腕部の外旋)に頭と手首の位置が離れてしまう。投球肘を推進する前に後の股関節の外旋が解けてしまう。投球する方の親指をしならせる間ができない。投球する方の親指でボールを押し込む距離が短くなる。投球する手首が背屈しない。投球腕の前腕部の回内が中途半端になる。即ち、投球肘が上がらない。リリースポイントが下がる。

踵体重と側副靭帯、ローテカフ(上腕部の筋肉群)の損傷

大瀬良が2段モーションを採りいれたとき、メディアの人間は、後ろ足にタメができ、前足に体重が乗るようになった」と太鼓持ちを務めました。二段モーションを採用すれば、後ろ足に軸ができ、骨盤の閉開という横の動きが加わります。前述のように腕の振りがドアスイングになります。二段モーションによって、労働量が増えて股関節だけでなく、上腕部、側副靭帯を含む肉体の損傷が進むのです。大瀬良の成績が上がったのは、二段モーションの採用ではなく、①背骨の縦回転と②着地したときの両足の間隔の幅を狭めて回転半径を狭く、指先の加速距離を増やしたからです。
高橋昂也は、今回のフリー打撃の投げ方であると、「高橋昂也は、上半身は、担ぎ投げ(投球肘のヒッチ、ヒッチし後トップの位置を戻す)でギッタンバッコンの縦回転だが、骨盤の回転が”生まれつき”横回転だから、肘の位置を下げて見ろ」と斎藤雅樹の成功を知っているOBがバカなことを言いだすだろう。否、高橋昂也は、キャンプ前を含め、取材する人間がカメラを向けていないところで、既に肘を下げろと言われたのかもしれない。スリークウォーターに近付ければ、更にはサイドハンドに近付ければ、ドアスイング(手首が寝る手投げ)になり、再び、側副靭帯、上腕部の損傷がオーバーハンドで投げる以上に進む。
高橋昂也は、上半身は、担ぎ投げ(投球肘のヒッチ、ヒッチし後トップの位置を戻す、前肩は後ろの肩よりも上がる)である。背骨は縦回転である。これは生まれつきではない。体を動かしてから試行錯誤を経て作られたものである。
骨盤の回転が生まれつき横回転、縦回転であるということはありえない。高橋昂也は、手術後、ブルペンで投げ始めたときも、骨盤の回転も縦回転で投げていた。
高橋昂也は、投球肘を推進した後、頸反射して傾けた背骨と投球腕が交わったとき、限りなくゼロポジション(私見では、肩甲棘と上腕骨(二の腕の骨)が一直線で、投球腕側の骨盤の横と155°、打者寄りの骨盤より前方に165°くらい)に近い。前肩が下がり、背骨の傾きが順方向に大きいほど、投球腕と背骨の交わりが90°に近くなる。アナログの時計で言うと、高橋高橋昂也が11時15分(右投手に換算すると12時45分)で中村恭平、床田、右投手の才木、堀岡、藤嶋、島内、ケムナ、柳、中﨑と同程度。但し、床田と中村恭平は、前膝が屈曲するので、前方がゼロポジションではない。高橋昂也よりも更に完全なオーバーハンドに近いのが、森下、濵口、フランスアである。
森下、濵口は、12時13分(濵口は11時47分)。フランスアが11時30分。塹江が10時45分(右投手に換算すすると1時5分)で岡田明丈と同程度、栗林は、1時20分。中﨑と栗林は、後述するリブダウンが大きいから真上から投げていると錯覚する。今村猛、野村祐輔、引退間際の永川が1時30分、大瀬良が1時35分、九里、マエケン、則本、広島に戻ってからの黒田が1時45分、ジェイジャクスン、バリントン、田中将大、ダルビッシュ、藤浪が2時、菅野は、戸郷、山口俊と同じ2時30分。中川皓太が9時20分。リブダウン(肩甲骨で地面を押しつぶす、背骨をタンブル(倒す)角度が大きい)したとき投球する腕の角度が森下、岡田明丈、フランスア、矢崎、栗林、前ヤクルトのブキャナンは骨盤と180°

鈴木誠也が前膝の位置を上げてスイング

鈴木誠也は、マスコットバットを使ってスイングを行いました。マスコットバットを使うことによって、ガイドハンド(押し手)の肘をヒッチしたとき、推進したときに使う後ろの股関節、腹横筋を強化することができます。マスコットバットを使うだけでは腹横筋の強化が足りないのでしょう。ガイドハンドの肘をヒッチした後、後ろの膝を折らなければ、前膝の高さを上げれば上げるほど腹横筋に負荷がかかります。大腿骨にも負荷が増します。その上で後の股関節をしならせ、大腿骨を骨盤に刺すことで、後の股関節のしなり、大腿骨周辺の筋肉の稼動域を強化しています。更に、このまま前膝、前肩を真下に落すと前足の内転筋に負荷がかかります。その上で前膝をブロッキングしてヘッドステイバックを大きくします。ガイドハンドの肘を再びヒッチした後、トップを緩めます。小指を180°回転させます。準ノーステップでマスコットバットよりも軽量のバットで振ったときの振る力(パーフェクトインサイドアウトスイングのレベル)のアップをしていくのです。

結論

投球肘のヒッチの前に後足の踵で地面を踏まないようにするには、どのようにすればよいのでしょうか。
岡田明丈はプロ入りしてから全投球をセットポジションで投げていました。大道も、全投球をセットポジションから投げることを佐々岡から提案されました。ケムナも島内も高橋昂也もワインドアップ、ノーワインドアップをせずに全投球をセットポジションから投げることです。セットポジションの方が前足に軸ができて指先の加速距離が益します。ボールの回転数は却って増えます。その上で二段モーションをやめることです。
予備動作(投球肘のヒッチ)前のセットアップの段階では、”後ろ足のスパイクの内側”で地面を噛ませ(エッジをかける)、前足にウェイトをかける。前肩はややオープンにしておきます。そうすることで、後ろの腹横筋に負荷がかかりません。予備動作の前に後ろ足に軸ができることを防ぐことができます。
高橋昂也は、キャンプに入る前まではそれができていました。始動(投球肘のヒッチ)が、後ろ足のスパイクの外側、前足のスパイクの外側(共に踵寄り)で地面を蹴る前に行うことができていたので、大腿骨の上下運動、波動を作って人差し指、中指をしならせる間ができていました。後ろ足に軸ができないので、前肩、打者寄りの臀部が背骨の方に入らないので、臀部の閉開、前肩の閉開という横の動きが削られます。ゆったりと前膝を落とせます。故に、上半身下半身ともリリースの瞬間(親指でボールを押し込む)以外は脱力できていました。今回のフリー打撃で投手を務めたときは脱力しきれていませんでした。
セットアップのときの後ろ足のエッジのかけ方を修正すれば、骨盤の回転を縦回転に戻せます。況してや、スリークウォーターやサイドハンドに変えるなんてもっての他です。