プロ3年目先発ローテ6番手を争う山口翔のピッチング

Last Updated on 2023年3月13日 by wpmaster

昨シーズン、芽を出し始めた若手投手として山口翔と遠藤淳志がいる。
両者は、共に今シーズンは、先発ローテーション6番手定着を競争する立場にいる。
まずは、山口翔のピッチングの現状と課題から述べていきたい。

動作解析

投手は、右肘を推進させるよりも先に又は同期して後ろ足の股関節を内旋して後ろ足を軸に骨盤を回転すると投げる方の肘の位置が下がって両肩の位置も水平になるから制球がしやすくなる。背中の方に腕を引いたり、脇腹を横に捻じって捻転差を作ると骨盤を回さないと肘が出ていかないから肘が出るより先に骨盤が回る。肘の位置が下がって制球しやすくなる。

ストライドを広くすれば前足を着地したときに前膝が曲がる。前の骨盤が前に出る。後ろの股関節を内旋し、後ろ足を蹴って骨盤を回さないと肘が出て行かないから肘が遅れて出て肘が下がり伸びる。回転半径が広がれば右肘の稼働域が狭くなる。

しかし、骨盤を先に回すと先に引手の肩を開かないと投げる方の肘が出ていかない。骨盤の回転から肘の推進までの間が延びると骨盤の回転方向と肘の推進方向が逆になって制球がしにくくなる。

肘が下がれば肘が伸びるから肩関節や棘下筋に負荷がかかる。肘が下がれば後ろの脇が閉まるので投げる方の肘の推進が遅れる。ドアスイングになるから右肘の稼働域が狭くなるからスピードが出ない。
オーバーハンドは投げる方の肩を引手よりも下げて上腕部を外旋、内旋して両肩の腱峰をぶつけるから制球がサイドハンドやスリークウォーターに比べると難しい。
打者が凡退するのは、100%始動の遅れである。
しかし、野球は、打者の始動を遅らせて後ろの股関節の外旋をする間を作らせずにストレイドを広げさせて打撃を崩していくスポーツである。
コーナーを突くコントロールは必要ないのである。

山口翔は、「自分が一番下手だと思ってやっていきたい」と言い放った。
言霊なんて存在しない。
言葉だけで「俺は上手くなれる」と言い聞かせても実際に体を動かさなければサービスは向上も低下もしない。
山口翔は、高校時代は、サイドハンドに近いスリークォーターであったが、プロ入り後、投球動作の改善により、縦回転の動きを作りオーバーハンドに近いスリークォーターになった。

背骨を軸に回転できる稼働域はほぼなく、回転半径を小さく投球腕の前腕部の稼働域を広くする投げ方のポイントとなるのは、後ろの股関節の外旋である。骨盤と投球腕の前腕部の回転軸となるのは前足である。

山口翔は、左膝の2回目のレッグダウンのときに右股関節を外旋し、外旋したままスパイクの外側でエッジをかけて左足の内転筋を内旋して「く」の字を作る。

山口翔は、高校生のときには「く」の字のときに吉見のように肋骨と右膝がくっつくぐらい上体を前傾させて右股関節に荷重をかけていた。
これだとヒッチ運動が難しいのでステップ幅を調整するのが難しく、右肘の高さが上がっていかない。
プロに入ってからは上体の前傾をルーズにした。

左膝と左肘の並進前に右股関節の外旋によってリリースの瞬間(回内)に両股関節をぶつけたとき左股関節が引っ込んで左膝が突っ張るので、左右の臓器の負担のことも考えれば右投手も左投手もオーバーハンドで投げた方が臓器の負担も軽くなる。

山口翔は、テイクバックのときに上体と下半身の捻転差横にが小さいところは動作の無駄が省け、横回転を抑え、波動が作りやすいので、いいところ。右肘をつまみ上げる前に1回右肩は下げるものの、テイクバックのときにもう少し右肩を下げると縦回転が増してもっと良くなる。

山口翔は、「く」の字を作ったときに右足の踵が地面から離れて小指球に重心がかかる。右の内踝、右膝が前に倒れる。右股関節の外旋が足りないから左足内転筋の内旋をしていても大腿骨を浮かす前に左足が先に出て行くことがある。

右足のスパイクの外側又は右足の踵に重心を残さないと左足の推進にブレーキがかけられない。リリースの瞬間に両股関節をぶつけると右膝が外(三塁方向)に外れる。右股関節が伸びて右足のターンが遠回りする。右腕上腕部の外旋→内旋の間がないから右肘が伸びてボールを縦に擦り下ろすことができないので瞬発力がボールに伝わらない。

山口翔は、右肘をつまみ上げたとき(右肩関節の外転)に右足の拇指球を支点に右膝が入り始める。踵がつま先の後ろに向かう後ろ体重になっている。すなわち右足を軸に骨盤を回している。骨盤が右肘より先に回れば左肩を開かないと右肘が出ていかない。手投げになって右腕の棘下筋に負荷がかかって右腕上腕部が凹んでボールを引っ掛けて投球をワンバウンドさせる。

左膝で地面を蹴って左足首を背屈させているときは、リリースの瞬間に左足が突っ張る。左股関節が引っ込んで左の股関節より前に右肘が出る。左足を軸に骨盤を回転できる。これが山口翔のセールスポイント。

メディアは盛んに右腕のしなりを強調するが、レイトコッキング期において右腕前腕部のレイバックの角度は90°未満で、右腕上腕部の外旋の大きさはプロでは並み。しかし、フィニッシュで頭より上に持ってくる。

正確に言うと、フォロースルー期の右腕前腕部の回外(しなり)は大きくはないが右腕のフォロースルーが大きい。

各種データ

球場別成績

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コース別成績

右打者

左打者

球種配分

球種別成績

地面がサービスを産み出すのではなく、肉体の稼働がサービスを産み出す。
山口翔の場合、NPBのチームの選手が使用するマウンドの内、最も硬い札幌ドームでの成績は悪くない。
相対的には、硬くはないが粘土にして硬くした神宮のマウンドにも対応している。
レンガ色の粘土のマウンドであるマツダ、ナゴヤドームの成績も良くない。
相対的に傾斜の緩い神宮、メットライフのマウンドに関しては、前者の成績が良いが、後者は良くない。傾斜の急なナゴヤドームの成績は良くない。

波動が足りず「く」の字を作ったときに右足のスパイクの外側に体重が乗らないので傾斜の急なマウンドでの成績は良くない。
左肘、左膝の並進前に右足のスパイクの外側でエッジがかけられるようになれば、左膝で地面を蹴って左足首を背屈させて投げる投げ方をしているので、硬いマウンドにも対応できるだろう。
右肩を右肘の推進開始までに左肩よりも下げ、左膝で地面を蹴って右股関節を外旋することができているときは、ストライドの幅を狭めて投げられるのでマウンドの傾斜の緩いマウンドには対応できる。

まとめ

山口翔は、もう少し右腕上腕部を外旋して右肘を推進し始めるまでの過程で波動が欲しい。それには「く」の字のときにもっと右膝をルーズに曲げる必要がある。
波動を作ることで、リリースの瞬間に右腕上腕部が凹み棘下筋が損耗している山口翔はスムーズに右腕上腕部の外旋→内旋ができるようになる。

下半身の使い方は、左膝で地面を蹴っているときは、右腕前腕部の回内のときに左足の拇指球、小指球で地面を蹴って両足をシャッフルするところまでは辻褄を合わせることができている。
しかし、現状では本塁とプレートの間の中間(45度ぐらい)に上体を倒しているので、右肩関節の外転のときに左肩を下げて右肘を推進し、右足をターンして両足をクロスさせてもっと一塁側に上体を倒した投球を増やした方がいい。

急ブレーキをかけるとムチ打ちになるのと同じで三塁側に右足を着地させると右腕のスイングに急ブレーキをかけてしまう。
左足の蹴りとこの右足のターンは人差し指と中指でボールの外側を縦に擦り下ろして親指で押し込む動作を後押しするだけでなく、フェイドアウト(徐行運転)の役割を果たすのだ。

対戦成績