アッパースイングは、内側からバットを出せ

Last Updated on 2019年12月9日 by wpmaster

今回のテーマは、従来から日本ではファンや指導者から忌み嫌われてきたが、メジャーではフライボール革命も相俟って改めてスポットが当てられているアッパースイングに関してです。

前回の更新から今回のアップまでの間に、森下の背番号が18に決まりました。これに関しては、前田健太との関係で反対論があります。
「マエケンにカープに帰ってきてほしい」「前田健太、おまえなんか二度とカープに帰ってくるな」
文面だけ見ると、前者の方がマエケン思いの優しい奴、後者は酷い奴と受け取る方が多いでしょうが、実際には、マエケンがメジャーで成功し、年俸が上がって経済面でゆとりのある生活をすることを妬み、メジャーでの失敗を願い、カープで安い給料で働き続けろというストーカーチックな野郎です。

序論

日本の野球指導者の間では、アッパースイングは、「ダウンスイング同様、ミートポイントが一か所であること」、「レベルスイングは、複数箇所あること」、「ダウンスイングは、最短距離でインパクトに達するがアッパースイングはバットの軌道が遠回りすること」から、アッパースイングは嫌われてきました。
ダウンスイングやレベルスイングの仕方については、詳しく述べられているコンテンツは、無数にありますが、アッパースイングの仕方について具体的に述べられたコンテンツは、殆ど見られません。

しかし、ダウンスイングにおいてもヘッドの軌道は長い方がいい。日本の指導者は、肩を内に入れたり、引手の肘を突っ張らせて後ろを大きくしてきたが、ヒッチと後ろの股関節の外旋によって後ろを大きくしなければいけないことは前記事でも述べました。

更に、アッパースイングにすると、従来の指導者は、バットが遠回りになると言うが、実際そうだろうか。

鈴木誠也、吉田正尚を始め、最近の若い選手は、複数の始動の仕方、接地に仕方、スイングを、投手の肉体の稼働、ボールの軌道、球種、回転数に応じて使い分けるようになってきました。

鈴木誠也、吉田正尚クラスになるとどの始動の仕方、どの接地のプロセス、どのスイングも水準が高い。

吉田正尚は、前足を底屈してつま先を接地したときは、押し手の肘をヘッドの外に張り出し、①後ろの股関節の外旋によってバットの軌道を長くする、②押し手の肘の推進→前足を軸に骨盤を縦に回すというプロセスで打っている、③骨盤を前傾させて両股関節をぶつけると後ろの膝が真下に落ちるという面で手本になる選手であり、個人的に、左打者では、柳田悠岐、秋山翔吾、森友哉よりも価値を高く付けている選手で、パリーグの打者の中で最も好きな打者です。

その吉田正尚を取り上げてケーススタディをしていきたいと思います。

吉田正尚に見るアッパースイング

吉田正尚は、スイングに関しては、投手の肉体の稼働、球種、ボールの軌道、コースに応じて大きく分けて3つのスイングを使い分けています。部分的に見れば、相互の差異は絶対的な差異ではなく相対的である場合もあります。この3つのスイングを比較検討しなから論を進めていきたいと思います。
(1)レベルスイング

(2)ダウンスイング

(3)アッパースイング

王貞治も城島も試合になると、インローのボールを打つときは、アッパースイングになりますが、振り下ろし始めにおいては、ヘッドが寝て頭とバットのヘッドの距離が離れます。

しかし、吉田正尚の場合、振り下ろし始めにおいて(一番右側の画)、ダウンスイング、アッパースイング共に頭とバットのヘッドが至近距離にあります。

吉田正尚の場合も、レベルスイングになると、ダウンスイング、アッパースイングに比べると、頭とバットのヘッドの距離が離れます。

振り下ろし始めは、ダウンスイングでもヘッドは寝てはいませんが、アッパースイングにおいては、ダウンスイングよりもヘッドを立てています。振り下ろし始めに関して言えば、アッパースイングでは手首の位置が、ダウンスイングに比べ真下に落ちています。これを専門用語でダウンロールと言います。

振り下ろし始めで、ユニフォームの襞が斜め上に向かって入っています。前足のつま先が接地した後ですが、後ろの股関節を外旋して上体と下半身に捻転差(割れ)ができています。この動作よって後ろを大きくしています。

吉田正尚の場合、振り下ろし始めにおいて、レベルスイング、ダウンスイング、アッパースイングのいずれにもおいても後ろ肩は下がりますが、その下がり具合は、アッパースイングの場合が最も大きい。

ボールにバットをコンタクトしていく前においては、レベル、ダウン、アッパー何れも、押し手の肘を畳み、ヘッドが両手首のラインを越えていますが、ヘッドの下がりは、レベルスイングが最も大きく、アッパースイングは、ヘッドが立っています。レベルスイングが最も押し手の手首、押し手の肘が伸びています。

押し手の上腕部とヘッドの距離が近い順からアッパースイング、ダウンスイング、レベルスイングとなっています。

アッパースイングでは、グリップからヘッドまでが、骨盤の両側を結ぶライン、両股関節のラインとほぼ平行になっています。

ダウンスイングとアッパースイングの調整は、押し手の親指でグリップを押し込む幅の差によって行います。アッパースイングの方がグリップを押し込む幅を大きくします。

吉田正尚は、アッパースイングで打つときは、ダウンスイング、レベルスイングに比べると、ポイントを体の近くにしています。それでも、この画でもそうですが、試合中は、前膝で地面を蹴って前膝を完全に突っ張らせ、内転筋を内旋し、ヘッドステイバックの角度は、地面を基準にして体軸を73°前後に捕手側に倒して打っており、前足の股関節の前に押し手の肘が出ていきます。

インパクトの瞬間、押し手の手首の角度が緩い順から、レベル、ダウン、アッパーで、アッパーの場合、ほぼ90°になっています。このことから、レベル、ダウンスイング同様、押し手主導で打っていることがわかります。

ダウンスイング、アッパースイングは、ボールの軌道の外側を擦ってヘッドをボールの下2/3に潜らせるという面では共通しますが、ダウンスイングは、ボールの軌道と45°の角度で縦に擦り下ろしますが、アッパースイングは、もう少しボールの軌道と水平の角度からバットを擦り下ろします。

レベルスイングは、引き手の肘を抜きながら押し手の肘の伸展でボールを運んでいきます。

一方、ダウンスイング、アッパースイングは、共に、押し手の肘で引手の拳で押し手の人差し指の付け根を押し込んで、ヘッドに手首のラインを越えさせますが、アッパースイングは、スイングの場合、真上から引手の拳を押し込んでいますので、先程、述べたように後ろの股関節を外旋しているスパンを長くしているのです。

まとめ

アッパースイングのメリットは、ヘッドステイバックすること、ヘッドを立てた振り下ろし始めに手首を真下の落とすことによって後ろの肩を下げることから、ダウンスイングよりも後ろの股関節によってバットとボールの距離が取りやすいことです。

アッパースイングで振ると、バットの芯がインローのボールの軌道を通過します。

前膝で地面付近を蹴って後ろの股関節を作って捕手側に体軸を倒します。
ダウンスイングのときは、地面と体軸が84°前後ですが、アッパースイングの場合は、73°前後です。
前膝で地面付近を蹴って後ろの股関節を外旋することによってタスキ掛け(外腹斜筋、内腹斜筋)のラインが斜め上に引っ張られ、大胸筋が後ろの肩甲骨に格納されます。
手首をL字型に曲げてヘッドを立てたまま、手首を真下に落として後ろの肩を前の肩よりも下げます。

押し手の肘を畳んで推進することによってグリップを前に出します。

押し手の親指でグリップを押し込みます。ボールを擦る瞬間に押し手の親指にかける負荷をダウンスイングよりも強くかけます。ボールにコンタクトする瞬間、ヘッドはダウンスイングと同じく、ボールの外側に入れます。ダウンスイングよりもボールの下にコンタクトして擦り下ろす。
ヘッドを内側に入れるとサイドハンドやアンダーハンドの投手のように体軸がホームベース方向に倒れて手首が伸びてドアスイングになります。
引手の肘を抜いてしまう引手主導のスイングだと手首が伸びてしまいボールを手の平で受けてしまいます。
引手の拳で押し手の人差し指で押し込んでヘッドに手首のラインを越えさせるところはダウンスイングと同じです。
引手の拳をダウンスイングよりも真上から押し手に人差し指を押し込んでいますので、前足の踵を支点に前足を軸に骨盤を回さないとカチ上げられません。ダウンスイングよりも更にインパクト直前まで後ろの股関節の外旋をキープして一挙に両股関節をぶつけないとカチ上げられません。
腹横筋、多裂筋、腸腰筋、ハムストリングス、内転筋を強化、稼働域が広げられていなければ、カチ上げる(しゃくり上げる)ことも、ヘッドステイバックのときに上体を支えることもできません。

ダウンスイング同様、アッパースイングもガイドハンドの肘ファーストのパーフェクトスイングで振る必要があると言えるでしょう。

確かに、硬式野球は、飛距離を競うスポーツではありませんが、塀際ポール際を除き、スタンドインした打球は100%安打になります。
2アウトからはヒットを打つしか得点する手段がありません。一三塁の場面では、シングル安打を3本打たないと、少なくとも2本打たないと3点入りませんが、本塁打は、一振りで3点入ります。

また、打者は、ゴロを打つ練習をするとヘッドがボールの内側に入ってヘッドアップするので、ティー打撃やペッパーではフライボールを打つ練習が必要となります。