捕手のフレーミングはトリックプレーではありません

Last Updated on 2023年10月21日 by wpmaster

オープン戦に各球団の主力が出そろう前に、現役選手の選手名鑑を作ろうと思っているのだが(候補としては、森下、ケムナ、坂倉、大盛、他球団では巨人梶谷、スモーク他)、私を刺激するような(実際には本人は私のことなんか相手にしていないでしょう)テーマを書く奴がいるので、選手名鑑はもう少し後回しです。ここはいっちょ釣られてみるかということで、今回は、捕手のフレーミングについてです。
フレーミングとは何かというと、立体の五角柱をかするか否かの際どい投球の軌道をストライクと評価させる捕手のスキルのことです。
そうであるなら、捕球の際にミットを動かしたか否かによって審判はストライクかボールかをコールしているのでしょうか、

投手のセットアップ、捕手のセットアップ

投手は、予備動作前の静止段階(セットアップ)においては、後ろ足のスパイクの内側でエッジをかけ、前膝を突っ張らせて前のめりになるのをブロッキングしています。前肩はややオープンスタンスにしていますから、打者寄りの耳が、打者の身長によって異なりますが、アウトハイのストライクゾーンよりボール一つ分くらい上を向いています。

インコースに投げるときも前肩を閉じません。シュート系を投げるときは、投球する手の親指のしなりを小さくすることで投げますので、前肩、前の股関節の使い側は、アウトコース、インコースを投げるときも変えません(変えるのは、リリースの瞬間両股関節をぶつけない、リリースの瞬間、右足を蹴る方向を変える)。投球肘をヒッチしたとき、三塁ベース方向に顔を向ける右投手がいますが、これをやると後ろ足に軸ができて、前肩が背骨の方に入ってしまいます。ヒップファーストで背骨の打者寄りを推進し、顔をミットの方に向けるとストライドが広がり、両肩がマウンドの傾斜とフラットになります。左股関節が右股関節をまたぎ、左股関節をどかさないと投球肘が出せません。後ろの股関節の外旋が解けて骨盤の二塁ベース寄り、骨盤の打者寄りの順で骨盤が浮いてしまいます。投手は、投球する手とは逆の方に頭を向けます(頸反射)。上腕部を外旋した後、骨盤を大腿骨に刺して前肘をヒッチして投球肘を投球する方の手首を出した後は、投球肘の方に顔を向けます。認識が肉体の稼動に先立つことはありませんので、予備動作後リリースの瞬間(投球腕の前腕部の回内)~フォロースルー(投球腕の前腕部の回外)まで目線がどこをみていたかはオンタイムでは認識がありません。
捕手のサインを確認した後、セットアップに入りますが、セットアップに入ってからは、捕手のグラブの方に顔を向けることは一瞬もありません。
捕手が投手のリリース前に半身に体を動かしても投球動作がブレるということはありません。

捕手は、右打席にスクエアスタンスで立った状態から左回りに90°骨盤を回転させて投球の軌道と骨盤が逆Tの字に交わった状態で構えます。すなわち、前肩がスクエアの状態から90°開いた状態(90°のオープンスタンス)で構えます。
捕手は、一部始終、前肩を90°のオープンスタンスにして捕球しているわけではありません。
右投げの捕手は、ガイドハンド(押し手)は右手です。最終的に投球を捕球するのは、グラブをはめている左手ですが、ボールの軌道を捕まえるのは、右手の手首です。左手に右手がしてきた仕事をバトンタッチする。右手の人差し指、中指をしならせたところから引き継がせる。左手に引手の仕事をさせない。左肘を出してからも左肩関節を開かない、左肩関節を左肩甲骨に格納(「開く」との違いは、右左の骨盤が浮かないこと)しないというのが引手主導のスイングとの違いです。後ろ足は、ガイドハンド側にある足ですから、右足です。捕球するときの軸足は、背骨より右側の投球は、前足である左足です。背骨より左側の投球を捕球するときは、ガイドハンドが左手、軸足が右足になります。送球するときは、捕球位置が背骨の左右を問わず、送球する手首とクロスする前足である左足です。背骨の左側の投球を捕球したときは、右股関節を左股関節をぶつけずに、軸足を右足から左足に移します。

捕手は、投手が投球肘をヒッチしたときに、ガイドハンドの肘をヒッチしています。後ろの股関節が外旋されます。前の股関節が引っ込んでヘッドステイバックし、前肩が投球に対してスクエアスタンスに近付いていきます。

捕手が骨盤を前傾させていても、捕手が半身になれば、審判は、ミットの動きの動きの全てを追うことは難しいでしょうが、全くミットの動きが追えないということもないように思われます。審判が際どいボールの軌道をストライクと解するか、ボールを解するかのメルクマールの一つとして、打者のストライドがあると思います。打者の前肩が背骨の方に入り、ストライドが広がれば、ストライク、打者のストライドが全く動かなければ、ボールをコールしているものと推察されます。それと共に、優先されるのが、捕手の前肩(投手寄りの肩)が背骨の方に入れば、必ず前肩を開くからボール、前肩が閉開しなければ、ストライクとしているものと推察されます。

ミットが流れる捕手

捕球してからミットが流れる捕手というのは、引手(ガイドハンドと逆の手)でボールを捕まえている捕手です。捕球の直前、具体的には、左手の親指でボールを押し込む直前に、前肩が背骨の方に入ります。手首が底屈(伸びる)しているので、左手の人差し指と中指がボールの内側(自分の背骨寄り)に入り、ボールを手のひらで受けてしまっているからミットが流れるのです。

ミットが上下にブレる捕手

捕球してからミットが上下にブレる捕手は、ミットを構えたときにウェイトが後ろ足である右足に乗っています。後ろ足である右足に回転軸ができます。左肩が投球に対してスクエアに戻った後も、更に背骨の方に入ります。左肩を開かないとガイドハンドである右肘が前に出せないので、左肩を開きます。左肩を開くと、後ろ肩である右肩も残りません。引手である左手主導で捕球するようになります。両手の手首が底屈(伸びる)します。すなわち、両手に人差し指と中指がドアスイングになります。左手である親指がしなりません。ボールの内側(自分の背骨側)を左手の親指で押し込み、ボールの内側を上から人差し指と中指をかぶせているからです。

インサイドアウトのキャッチング

捕手は、右足のスパイクの内側で地面をかませ、左足にウェイトをかけてかまえます。前肩である左肩をスクエアに戻してからは、前肩を背骨の方に入れません。左の股関節を引っ込めて右肘を出します。里崎氏は、両脇を締めないとミットが流れるので人差し指を投手方向に向け、両脇を締めてミットを構えろと言います。しかし、前脇である左脇を締めると、左肘が突っ張ってコックアップ(捕球直前の手首の位置)が深くなります。前肘のロックを解かないと、右肘が前に出せません。右肩が残らないので右肘が右手首の内側に入り、右手の手首が寝ます。左脇を開けておかないと、左肘が左手首の前に出ません。すなわち、左手の前腕部を回外(左肘を下げる、左手首を緩める、左手親指をしならせる)、左腕前腕部の回内(左肘を上げる、左手の親指基節骨でボールを叩く)することができません。左腕前腕部を回内できなければ投球にバックスピンを加えることができません。前肩を背骨の方に入れるのではなく、前肘を突っ張らせるのではなく、右股関節を引っ込め、背骨と頭を倒して投球を背骨の右側に持ってくる。左手前腕部を回外して左肘を左手首の前に出す。前肘が落ちる。親指の側部が投手方向を向く。親指がしなる。左手親指基節骨でボールの内側を叩く。左手の小指、中指がしなる。左手小指、中指が左手の親指の上にくる。左手小指で投球を叩く。左手の小指と中指で、ボールの外側(投手寄り)を縦にこする(左腕前腕部が回外する)。浮いた投球に微妙にトップスピンが加わる。手首を動かしているのではなく、人差し指、中指のしなりとその解除で手首を動かしている。すなわち、捕球も投球も打撃も体の動かし方は同じなのです。

結論

捕手は、全ての投球に対し、ミットを動かして捕球しています。ミットを動かさずに捕れと言うことは、山口千万石が、澤村栄治のドロップの落差が大きかったので、捕球面を上にしてミットを地面に付けて構えていたというレベルの馬鹿げた話です。ミットを動かしたか否かでストライクかボールかを決めているのではありません。
過去何度も書いていますが、エサ(給料)に付けた単価によってもストライクかボールかが決められます。
人間は、意思によって肉体の稼動を稼動することはできませんから、ミットを動かしたことに関し、動かしたことに意図があったか否かを問うことはできません。後付けで意図があると主張しても、意図は実体がありません。
捕手がインサイドアウトの捕球をすることによって、投球の軌道にストライクであるという価値が付与されたのです。
捕手は、予備動作を早めて、ミットを持つ手の親指をしならせて波動を産み出す間を作ることによって親指基節骨でボールを叩いた後にも脱力ができるのです。
逆に、ドアスイングで捕球すれば、ボールの内側を左手の人差し指と中指がこするのでトップスピンが加わり、投球の軌道が更に垂れます。
ヘッドが手首のラインを超えると、内野手の頭を超えて安打になるのと、ヘッドが手首のラインより下がってしまうと、スライス回転がかかったゴロになるのと言うのとメカニズムが同じです。
すなわち、捕手は、ボールに触れる以上、どんな捕り方をしようが、投球の軌道に変化を加えるのです。
フレーミングは、ボールの軌道を変えずに、肉体の稼動によって、審判を錯覚させる行為ではないのです。ボールに価値を付けるということは、後付ですから錯覚は錯覚ですが、ボールの軌道を捕手が変えているということです。
審判にストライクと言わせられない捕手のキャッチングが下手くそなのであって、ストライクを言わせることができる捕手は、捕球の土台ができている捕手というだけの話です。
審判の錯覚ではなく、インサイドアウトの捕球によって投球の軌道に実際に変化が加えられたのであって、これを錯覚させられたとして文句を言っている審判は、野球における、体の使い方がわかっていない人なのです。