塹江は、プロ2年目の今季、プロ初登板となった9月11日の巨人戦では、1/3で4安打2四球6自責、防御率162.00という内容であった。
その後中日戦では1イニング、3者凡退。9月19日のDeNA戦では、プロ初の敗戦投手すなわちイニングを食えたということでもある(5回2自責)。
それでは、塹江は、先発とリリーフのどちらで起用したらいいだろうか。
塹江敦哉のピッチング
塹江は、下半身が相当鍛えられていて、太く、軸足である左足を立て、骨盤、ベルトよりも上に右足を上げ、腰を沈めて、ステップを広くし、左足を強く蹴るという大野豊のような投球動作をしていた。肘を故障しやすい投球動作をしていた。肩もテイクバックのときにM字型になっていて肩を痛めやすい投球動作になっていた。
今季は、構えるとき、左足の屈曲をルーズにして、右足は骨盤の高さまで上げている。
テイクバックのときに、M字にならず、殆どの球が両肩も水平になっている。
ステップが本塁に向かって真っすぐ始動する。鍛えられた下半身を活かす投球動作を別の方法で生かしている。
リリースの際、上体を骨盤の上に立たせ、軸回転で腕を回し、内転筋を伸ばし、左足~左肘のラインが「入」の字、左肘~左肩~右肩のラインが斜め下に一直線になっている。肩を故障しにくい投球動作になっている。
肘をL字にして、腕先を遅らせ、肘を前に出して、しなりを作り出し、チャップマンのように上体をぐっと前に倒している。
左肘から下を内側に捩じり(左腕前腕部の回外)、縦回転を作り、左肩が内側に向いている。
リリースをし終わったときに右足が突っ立ちボールにトップスピンが加わっている。
右肩が下がったり、頭が突っ込むときに、暴投する。
今季の成績
主要成績
今季の成績は、先発1、リリーフ2試合
3試合 6回1/3 6被安打 2本 被打率 .261 4四球 6奪三振 8自責 防御率11.37
奪三振率8.53
球種配分
今季の球種配分は、ストレートが59.09%、スライダーが36.36%、フォーク2.73%、チェンジアップが0.91% カーブ 0.91%
ストレートの被打率が.267 1本 2三振 3四球 空振り率1.54%
スライダーの被打率が.250 1本 4三振 空振り率が2.50%
フォーク、カーブ、チェンジアップの被打率が.000、空振り率も.000
アウト内訳は、ゴロ9 フライ2 三振6 ゴロフライアウト比率が4.5 ゴロ比率が52.9%
初球、1-0とファーストストライクの打率が.1000と打たれている。
打者1人当たり3.92球、5.78球で1アウトを取っており、球数が多い。
巨人戦のMaxは、146キロであったが、中日、DeNA戦では、150以上を出している。
ファームでは、159キロを記録したようだが(マシンの稼動させる者のミスとの説もあるが、菊池雄星も157キロを出しているし、塹江投球動作から言って全くあり得ない話ではないと思う)。制球重視の投球をしてからも、151キロ前後を出している。セットでも148キロを出せる。
スピードだけなら、広島どころか、セリーグの左で最も速い投手である。
登板数は、少ないながらも、今季中に一軍で登板でき、村田、大島、筒香といった一流打者からアウトを取った。自分の真っ直ぐや変化球への打者の対応を知ることができたのは大きい。
リリーフであっても、三振暴投があるとはいえ、三振が要求されるランナー1,3塁、2、3塁のようなケースになるまでは、先発投手と同じく、ゴロを打たせてとればいい。
現代の野球では、一軍の打者からは、どんなに速くてキレがあってもフォーシームで空振りは、中々、取れるものではない。
塹江の高低の真っ直ぐの伸びが悪いというわけではない。
真っ直ぐの空振り率の高い投手は、初速と終速の差がないカットボールのようなリリースで真っ直ぐを投げている。
塹江のスライダーは、ツーシームの握りで投げる145キロぐらいカットボールのようなものもある。この制球次第で、且つ投げる割合を増やせば、真っ直ぐ系の空振り率は高くなる。
しかし、2ストライクを取ってからは、セットで右のエリアンから奪ったギアを入れた149キロのクロスファイアを含め、ストレートで2三振を取っている。
しかし、速い真っ直ぐが投げられれば、投げられない投手に比べ、変化球の精度次第で、変化球で空振りが取りやすい。
コース別成績
長野、ロペスといった前の手主導の打者に真ん中低めをバックスピンをかけられたり、インコースベルトの高さをサイドスピンをかけられて変化球を打たれている。後者の場合には、左肩が本塁方向に向かずに途中で止まっている。腕が振り切れていないから、コース、高さとも甘くなった。
現段階で、未完成ながら、奪三振率は、8.53と高い。
その他成績
インプレーの打球を排除した奪三振、与四球、被本塁打から評価するFIPが7.50と自力救済、独り相撲の投手である。
中日戦では、初球から150キロの真っ直ぐを投げ、3者凡退に切って取った。
試合序盤で本塁打を打たれてもどうにかなるが、ロースコアの接戦の終盤は、本塁打が許されない。
ゴロアウト比率も高く、真っ直ぐ系を投げると、桑原のように前の手主導の、インパクトのときに後の手首の下がりを抑止動作しない打者が高いバウンドのゴロヒットを打つのは止むを得ない面があるが、打球が上に上がらないので犠飛も打たれにくい。
本塁打以外のグラウンド内に飛んだ打球の内、安打になった割合のBABIPは、.267と振り切ることも難しい。
塹江の真っ直ぐの力があるので、塹江の150キロ真っ直ぐを前の手の中指、薬指、小指の三本で握り、後の手の手首に力を入れずに、ヘッドを下げて、インパクト後にダンベルを持ち上げるようにしてバックスピンをかけて犠飛や本塁打にできるのは、右では、鈴木誠也とロペスぐらいだろう。
オープンスタンスの左打者は、膝が伸び、塹江の真っ直ぐに対応することは難しい。
右打者の被打率は、12-4 2本 2三振 1四球 .333
左打者の被打率は、11-2 4三振 3四球 .182である。
まとめ
球が速く、変化球で三振も取れるので、先発、リリーフどちらもできるが、
球種が少ないので、又、真っ直ぐは、フライが飛ばされにくいので、長打を打たれにくいので、起用するとすれば、リリーフだと思う。
変化球を投げるとき、特に、チェンジアップよりもスライダーを投げるときに背中が曲がっていたので、134~147キロの範囲の失速する小さな山なりの真っ直ぐのような軌道になり、打者に対応され、空振りが取れなかった。初登板でも長野に本塁打(塹江のスライダーは速い。握り直しているところを見ると真っ直ぐのようにも見えるが、背中とボールの軌道を見ればスライダーだと思う。リリースのときの切り方は、体に隠れて見えない。)を打たれている。
しかし、DeNA戦に先発したときは、変化球を投げるときに、背中が丸まるところが修正され、軸回転で腕が出てきて、右のロペスには、本塁打を打たれたが、左の倉本からスライダーで空振りの三振を奪っている。小さく曲がり落ちるスライダーに進化したスライダーも投げられるようになった。エリアンから、シュートしながら直前で入ってくるバックドアのスライダーで三振を奪っている。左肩が本塁方向に向いて体が三塁方向に流れているのでシュート回転ではない。
133キロ前後のチェンジアップは、背中が丸まり、すっぽ抜くことも、叩きつけることもできずに、失速した真っ直ぐ、よく言えば、小さく曲がり落ちるスライダーが膝の上辺りに来ているので空振りが取れず、ファウルで逃げられている。
背中が丸まるところが修正できれば、すっぽ抜いてフォークのような軌道にしたり、叩きつけてスプリットのような軌道にしたりとチェジアップを投げ分けられる。
カーブはストレートと体の使い方が大きく違うが、他の変化球は、ストレートと体の使い方が、細かいところは違いがあるが、基本的には同じなので、来季は修正してくれると思う。
戸田は、前回書いたように、先発起用を提案したが、そうなると左のリリーフはどうするか。
強い投手であれば、投手の右、左に、こだわりはないが、左のリリーフを、言うのであれば、
森福を入団させろと言わずに、森福よりも遥かに速くて強い球が投げられる、もっと将来が楽しみな左のリリーフになりうる投手が、既に、広島には、いるじゃねえか。
若い投手をリリーフで潰すのかという声も上がりそうだが、先発には回跨ぎがある。先発で投げると、相当な数の毛細血管が切れ、投げ終わった後の肩、腰、肘は激痛で、中4日ぐらいでは痛みが取れない。先発投手であれば潰れにくいということはない。
負担のかかりやすい、故障しやすい投球動作であれば、先発であろうと、リリーフ投手であろうと故障する。
強い投手であれば、左でもリリーフ起用を考えてみてもよい。
塹江も来季は、3年目。
ペナントは、序盤は、ファームの実戦の中で変化球を磨きながら、夏頃、リリーフで起用してもらえたらと思う。
※データは、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場他を参考にした他、独自に計算したところもあります。
[追記]
デラバーの退団が事実上、決まったようである。筒香、ロペスらのDeNAの主軸を抑えた投球を見ると惜しいが、デラバーの投球動作の問題点は、以前書きましたし、決定に関してこれ以上、異論を唱えるつもりはありません。
来季は、メジャーからデラバークラスの中継ぎを補強して、Jacksonに何かあったときの備え(デラバーも保険ではないでしょう。)としてではなく、ペナントの最中に実際に起用してもらいたい。
外国人投手は、4人一軍登録できないので、
日本ハムの中継ぎ起用のように、Jackson45試合、新外国人35試合というように投げ分けができればいいのですが。
[追記]
MVPは、既に述べたように菊池だと思います。
新人王は、髙山だと思います。規定打席に到達し、得点圏打率も高かった。
今永には、広島打線も手こずりましたが、登録抹消もありましたし、規定投球回に惜しくも到達しませんでした。
[追記]
投球動作をサイドハンドに近付ける(2024)
左足のスパイクの外側をプレートの一塁側に沿わせる。
左足内踝~親指、右足の拇指球で地面を荷重している。
左股関節、右股関節を内旋し、オープンスタンスで立つ。
右足の爪と皮膚の境目から踵までが左足踵あら出ている。
左腕前腕部を回内、右腕前腕部を回外し、グラブを背骨の左側、首の高さにセットする。
左手首は背屈している。
首は、左打席の外側のラインのバックネット寄りのコーナーに向けている。
右足拇指球で三塁方向に地面を蹴る。
右股関節を内旋して右膝を一塁方向にニーアップする。
右股関節を外旋する。
右股関節を内旋してヘソの高さまで右膝を上げる。
右足首は背屈する。
左腕前腕部を回内してグラブからボールを抜く。
右股関節を内旋して右膝を胸の右高さまで上げる。
左腕前腕部を回外してグラブにボールを収める。
右足踵が左打席の外側のラインと一塁線が交わるポイントに、右足つま先が二塁ベースの方に向く。
右股関節を外旋する。
左足踵が地面から浮く。
右腕前腕部、左腕前腕部を回外してセットを解く。
グラブが背骨を跨ぎ、左肩の方に入る。
左足小指球にウェイトがかかる。
右足前脛骨筋が回内(外反)する。
左腕前腕部、右腕前腕部を回内する。
左腕前腕部は、背面を越える(背面と左腕前腕部の空間は、ボール1個分)。
左肘の屈曲の角度は、150°である。
左腕前腕部を回外、左腕上腕部を内旋する(インバートL)。
左腕前腕部を回内する。
左腕前腕部が左肩の高さに達する。
左足拇指球にウェイトが移る。
右腕前腕部を回外する。
右足首が底屈する。
右足は、スパイクの内側の踵から入射する。
ストライドは、6.5足分である。
左腕前腕部が左肘の上で立つ(左腕前腕部は回内)。
右股関節は、外旋している。
頸反射はしていない。
左肘をアクセレーション後(左腕前腕部を回外後)に左足親指IP関節が屈曲する。
左足長母趾屈筋が弛緩する。
トップポジションにおける左手小指基節骨の入射角は、50°である。
左肘の高さがサイドハンドに近いスリークォーター、左肘のレイトコッキングの角度、スイングプレーンの角度は、スリークォーターである。
リリース直前の右膝の屈曲の角度は、150°である。
左足の親指の付け根で地面を蹴る。
左腕前腕部を回外する。
左膝をニーアップして三塁側にターンさせ、両足をクロスさせる。
左腕前腕部を回内して左手親指基節骨でボールを叩く。
左手首を頭上に上げる。