1年目は、低反発球でありながら、DeNAから4勝、ヤクルトから3勝、交流戦2勝で9勝11敗 防御率1.98で新人王。
2年目は、右肩関節唇損傷で途中離脱した期間がありながらも、12勝。しかし、防御率は3.74と倍近く上がり、
その後は、7勝 4.39、5勝 4.64と成績は下がり、このままフェイドアウトしていってしまうかと思われた。
2016年は、7月にDeNA戦で大量失点してから勝てない期間もあったが、シーズン通してローテーションに定着して16勝。
最多勝、最高勝率のタイトルを獲得して優勝に貢献した。
復活した原因は、どこにあったのだろうか。
野村祐輔の投球動作
野村祐輔は、入団したときから、左足を上げて後方にやや捻り、上下動の小さい体重移動でテイクバックも小さかった。
腰を打者に向ける頃には、ボールが指先から離れるか否かというぐらい早かった。
2016年は、セットのときも、ワインドアップ、ノーワインドアップのときも、軸足に瞬発力を入れずに立つ。
2016年の投球動作も左足の捻りは、以前とあまり変わらず、テイクバックも小さいままである。
左足を捻り腰を打者に向けて投げるところは、動作をロスしているので個人的には、それがない方が肩関節の内旋運動、外旋運動の回転半径を短くして加速距離を長くできるであろう。
ひねる際に、軸足がピタっと静止してラインができる。
左足を真っすぐ伸ばし、弧を描くことなく、ストレートに本塁方向に踏み出すようになった。
スリークウォーターの範疇だが、若干肩の位置を上げ、以前よりも肩の後ろ回転を強くしてストロークが長くなった。
リリースをした後、左足が突っ立つようになった。
カットボールは全球種の中で最も初速と終速の差が感じられないボールであるが、野村の場合も、打者にとっては、以前よりも初速と終速の差が小さく感じられるようになった。
初速と終速の差が大きいと感じられるシュート系の球も初速と終速の差が感じられなくなった。
黒田から学んだシュート系を投げるときに一塁寄りにプレートを踏んでインコースの対角線上に立ち前述の投球動作をすることにより、インコースが広く空いていると感じられるようになり、以前より大雑把に力を逃さずに制球するようになった。
それにより、簡単にゴロを打たせることができるようになった。
しかし、肩や腰に負担がかかる投球動作なので多くの球数を投げると球のキレが落ちイニングが食えなくなった。
左足で弧を描く、すなわち膝が開く投げ方だとシュートもカットもよく曲がる。
現在でも、よくないときは、左足が弧を描き、カットボールもシュート系の球も大きく変化してしまっている。
リリースし終わったときの左足の伸びも十分でないことがある。
これらの点を踏まえて昨シーズンの野村の成績を見てみることがある。
野村祐輔の昨季の成績(2016)
25試合 16勝3敗 152回2/3 自責46 防御率2.71 完投1 完封1 無四球0 139安打 10被本塁打 91三振 四球37 死球6
暴投3
与四球率 2.18個
対右打者被打率 296-73 .247 6本 24打点 23四球 48奪三振
対左打者被打率 276-64 .232 4本 19打点 13四球 43奪三振
通算被打率 .241
本塁打を除くグラウンド内に飛んだ飛球が安打になった割合である被BABIPが.269
インプレーの打球を排除した奪三振、与四球、被本塁打から評価するFIPが3.51
被出塁率 294 被長打率.332 被OPS .626
被本塁打率 0.65本(9イニング換算)
奪三振率 5.36個(9イニング換算)・・・規定投球回に入った投手の中で最少。
奪三振/与四死球=2.11
アウト内訳:ゴロ197 フライ139 三振91 犠打13 犠飛1 失策10
ゴロ比率 43.7%(Johnson43.4%、黒田45.7%、菅野37.2%)
グラウンドボール比率(ゴロ/(ゴロ+フライ)=58.6%(Johnson 64.4% 黒田62.1 菅野60.9)
1イニング当たりの走者の数であるWhipが1.15人
ゴロアウト比率(GO/AO)=197/130=1.42
残塁率79.2%
平均的な投手と比べてどれだけ失点を防いだかであるRSAA(マイナスよりもプラスの方が評価が高い。プラスはその数値が高いほど、評価が高い)は、18.61
総投球数2,580球
打者633人
打者1人当たり投球数4.07球
5.63球で1アウトを取っている(Johnson5.35 黒田5.17 菅野5.20)
1イニング当たり投球数 16.9球
2桁被安打 0
コース別成績
コース別被打率(2016年)
インハイの34-9のうち、右打者に対しては、21-5 .238
インコースのベルトの高さ73-25のうち、右打者に対しては、32-14 .438 2本
インロー58-20のうち、右打者に対しては、22-7 .318
右打者のシュート系、動く真っすぐ、インコースのボールからゾーンに入るカット、スライダーのうち、
特に、シュート系、動く真っすぐを打たれていることが看て取れる。
上の表の42-7のエリアのうち、右打者に対しては、19-4 .210
アウトコースベルトの高さ75-18のうち、右打者に対しては、41-12 2本 .293
アウトロー49-11のうち、右打者に対しては、32-7 1本 .219
右打者へのカット系、外角のボールからゾーンに入るシュート、動く真っすぐは、低めにくれば、それなりに抑えている。
右打者がバットとボールの距離が取りにくい外角低めも抑えられている。
上の表の42-7のエリアのうち、左打者に対しては、23-3 .130
上の表の75-18のうち、左打者に対しては、34-6 2本 .176
上の表の49-11のうち、左打者に対しては、17-4 .235
左打者へのカット系、インコースのボールからゾーンに入るシュート系は高さを間違えなければ抑えられている。
上の表の34-9のエリアのうち、左打者に対しては、13-4 .308
上の表の73-25のエリアのうち、左打者に対しては、41-11 .268
上の表の58-20のエリアのうち、左打者に対しては、36-13 .361 2本
左打者のシュート、外からゾーンに入るカットスライダー系は、低めの見やすいコースは打たれている。
外角高めのバットとボールの距離がとりにくいコースも対応されている。
右打者のインローのゾーンよりボール2個分下は、21-0、左打者のインローのゾーンよりボール2個分低いところは、20-1 .050。真ん中低めのゾーンよりボール2個下は、34-4 .118。
テイクバックが小さく、手首が体のラインに隠れていて、更に、リリースの際に肩に後ろ回転をかけてストロークを長くしているので、打者は速度を評価しにくいので、ステップの着地の位置、トップの高さ、軸足の静止ができずにスイングをさせてもらえないので、ほぼ、完璧に封じ込んでいる。
沈んだり、初速と終速の差が大きいと感じられる、動く真っすぐ、シュート系の制球が課題と言える。
球種別成績
シュート系の球で打たせてとることに苦労しているから、1イニング当たりの球数、1アウトを取るまでの球数が多くなる。
球種配分は下記のとおりである。
ストレート 18.02%
シュート 17.40%
チェンジアップ 19.57%
カーブ 14.19%
スライダー 9.46%
カットボール 21.09%
フォーク 0.27%
球種別被打率は下記のとおりである。
シュート 121-37 1本 .306 5四球 6三振
チェンジアップ 152-29 3本 .191 10四球 43三振
ストレート 77-21 2本 .273 9四球 10三振
カットボール 115-21 1本 .182 9四球 16三振
カーブ 58-18 1本 .310 1四球 6三振
スライダー 53-13 3本 .245 3四球 10三振
フォーク 0-0 .000
球種別空振り率は、下記のとおりである。
シュート 3.56%
ストレート 2.80%
カーブ 7.10%
フォーク 28.57%
チェンジアップ 22.57%
カットボール 4.23%
スライダー 7.38%
球種別見逃し率は、下記のとおりである。
シュート 11.80%
チェンジアップ 8.12%
ストレート 21.29%
カットボール 15.99%
カーブ 25.41%
スライダー 23.36%
フォーク 0.00%
見逃し率が高いことも球数が多くなることの原因の一つであると考えられる。
カウント別成績
カウント別の被打率は下記のとおりである。
初球 50-14 .280 1本
1ボール0ストライク 44-15 .341 2本
2ボール0ストライク 22-5 .227 2本
3ボール0ストライク 2-2 .1000
0ボール1ストライク 41-17 .415 2本
1ボール1ストライク 62-15 .242
2ボール1ストライク 41-12 .293
3ボール1ストライク 10-4 .400
0ボール2ストライク 11-2 .182
1ボール2ストライク 69-14 .203 1本
2ボール2ストライク 83-18 .217
3ボール2ストライク 50-21 .420 2本
3球三振 12
1ボールを含む三振 33
2ボールを含む三振 28
フルカウントからの三振 18
2球目(1-0, 0-1)に.341、.415と、括弧内の前者は、カーブ、真っすぐ系、
後者は、カーブ、シュート、スライダーを甘いところに投げて打たれている。
ケース別成績
ケース別の成績は下記のとおりである。
走者なし 348-83 7本 7打点 .239
走者一塁 92-26 2本 4打点 .283
走者二塁 43-8 0本 5打点 .186
走者一、二塁 50-9 1本 7打点 .180
打者の後ろに打球を飛ばさないとランナーを還すことが難しい二塁、一、二塁のケースを.186、.180と抑えている。
三振捕逸、三振暴投、内野フライでも1点が入ることがある相手有利のケースで.467と打たれている。
全てタッチプレーの2,3塁でも.286と抑えきれていない。
相手有利のケースでの低めのボールの球の制球は精密機械を稼働するという域には達していない。
得点圏被打率
得点圏被打率は下記のとおりである。
同点 50-7 .140 1本 7打点
ビハインド 22-6 .273 1本 8打点
リード 64-17 .266 0本 18打点
通算 136-30 .221 2本 33打点
イニング別成績
イニング別失点は、下記のとおりである。
1回 9失点
2回 6失点
3回 7失点
4回 10失点
5回 4失点
6回 10失点
7回 1失点
8回 3失点
失点イニングの失点分布は下記のとおりである。
1失点 22
2失点 5
3失点 6
失点時平均失点 1.52
失点イニング率 33.33%
その他成績
100球超 15試合
QS率 68.0%(=17/25)
救護率 5.74 QS勝 13 QS敗 1
Home 14試合 10勝1敗 2.82 83回 81被安打 26自責
Away 11試合 6勝2敗 2.58 69回2/3 58被安打 20自責
昼間試合 1試合 1勝0敗 6回 3被安打 2三振 1四球 0.00
夜間試合 24試合 15勝3敗 146回2/3 136被安打 10被本塁打 36四球 89三振 2.82
捕手別成績
石原 19試合 115回1/3 9本 35自責 2.73
會澤 6試合 37回1/3 1本 11自責 2.65
月別成績
月間成績は下記のとおりである。
3,4月 3勝1敗 2.70
5月 2勝1敗 3.09
6月 4勝0敗 1.44
7月 3勝1敗 5.32
8月 0勝0敗 2.16
9月 4勝0敗 1.88
10月 0勝0敗
まとめ
グラウンドボール投手(打たせて取る投手)でありながら、1アウトを取るまでの球数が、倍以上三振を取っている菅野よりも多いところは、改善の余地があると思う。
イニングとほぼ同じくらい安打を打たれるので1試合に対戦する打者数も多いので球数を抑える必要がある。
寸分たがわぬ制球よりも球のキレを重視する投球方法のままでいいと思うけれども、少ない球数で打たせて取ることができれば、与四球率も2個未満にすることができ、6回100球前後で左方向に打球を飛ばされて捕らえられることが減ると思う。
とはいえ、6回100球2失点は計算できるので右肩の状態が良ければ、今季も11~12は、勝つと思います。
球団別成績
球団別成績は下記のとおりである。
対巨人 4試合 3勝0敗 23回 6自責 2.35
対ヤクルト 8試合 5勝1敗 52回2/3 13自責 2.22
対阪神 1試合 1勝0敗 6回 1自責 1.50
対中日 6試合 4勝1敗 36回 10自責 2.50
対DeNA 3試合 0勝1敗 17回 14自責 7.41
対日本ハム 1試合 1勝0敗 6回0 自責 0.00
対ロッテ 1試合 1勝0敗 6回 2自責 3.00
対西武 1試合 1勝0敗 6回0自責 0.00
主な打者との対戦成績
ギャレット 8-4 .500 1本
村田 9-3 .333 2三振
阿部 6-2 .333 1三振
坂本 11-2 .182 3三振
長野 11-1 .091
小林 9-4 .444
大引 11-5 .455 1三振
鵜久森 10-4 .400 1三振
畠山 8-3 .375 1三振
西浦 11-3 .273 1三振
山田哲人 22-5 .227 5三振
川端 15-3 .200
西田 11-2 .182 3三振
雄平 19-3 .158 1本
坂口 25-3 .120 2三振
バレンティン 21-2 .095 1本 4三振
桑原 9-5 .555 1本 1三振
筒香 7-3 .429 2本
倉本 8-3 .375
梶谷 5-0 .000 4三振
ロペス 8-2 .250 1本 2三振
石川 7-2 .286 1三振
高山 3-2 .667
鳥谷 2-1 .500
福留 3-1 .333
ゴメス 3-1 .333
高橋周平 13-6 .462 3三振
大島洋平 17-2 .118 2三振
平田 7-0 1三振
藤井 8-2 .250 2三振
福田 8-2 .250 1本
森野 6-0 .000
荒木 7-3 .429
堂上直倫 8-1 .125 1三振
文中データは、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場を参照した他、独自に計算したところもあります。
追加更新情報
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