ドラフト上位指名が予想される大学生三投手を比較解析します。

入団交渉権の獲得は、くじ引きではなく、ドラフト候補選手本人と関係のある全ての者との経済関係で決まる。くじ引きは演技で、ドラフト会議の前に既にどこの球団代表が当該選手と交渉するかが既に決まっている。
そこでドラフト会議というセレモニーで俎上に載せられるであろう三投手の投球動作を解析してみたい。

早川隆久(早大)

早川は、左足小指球で地面を蹴り、僅かに左足踵をヒールアップさせる。右足の小指球で地面を蹴ってから左足踵で地面を蹴る。前足で地面を蹴ってから後ろの股関節の外旋を行うまでの間は短い。
左肘を逆Lにするときまでは、左足のスパイクの外側でエッジをかけ、左の股関節を外旋できている。左腕は骨盤の横で留め、テイクバックは大きくない。
しかし、1回目の左腕上腕部の外旋の過程で、左足の拇指球にウェイトが移る。
右足は馬酔木を底屈してから前膝で地面を蹴って右足首を這屈する。インステップの程度は、左投手の標準程度。レイバックの角度は、ほぼ垂直(地面と左腕前腕部が水平)である。左腕前腕部を回外(フォロースルー期)に左腕前腕部がしなる。
しかし、前膝で地面を蹴るのが2回目の左腕前腕部の回内(リリース)の後である。リリースの瞬間、指先がしならない。両股関節をぶつけて産み出す瞬発力が下半身吸収されてしまう。左肘側副靭帯損傷をしやすい投げ方である。
後ろの股関節の外旋が左肘の推進の前に解けるので、リリースの瞬間に後足にウェイトが残る。故にダブルプレーン投球になってインハイにボールの軌道がシュート回転することがある。
森下も早川もドラフト前の段階では、リリースの瞬間に前膝は突っ張り切れていないが、森下は、後ろの股関節を外旋してから前足で地面を蹴る。森下の方が、投球肘をつまみ上げて以降の動作をゆったりと行うことができている。
ドラフト前の完成度としては、早川は、大瀬良、矢崎や床田よりはずっと上である。
大学左腕の中では抜けた存在の一人であることは否定しないが、森下より上かというと、森下の方が早川よりも上である。

伊藤大海(苫小牧駒澤大)

伊藤は、右足小指球で地面を蹴ってから左足のスパイクの内側で地面を蹴る。右股関節を外旋する。左肩甲骨周辺の筋肉が僅かに背骨方向に動く。「く」の字を作ったときに、右足小指球にウェイトが移る。右腕は骨盤の横まで引く。逆Lにしたとき、右腕が背中の方に入る。前肩を開いてからでないと右肘を推進できない。右腕上腕部を一回目に外旋する過程で右足拇指球にウェイトが移る。左足は踵から着地し、レイバックの角度は大きくない。森下同様、右腕を楕円運動して投球を行う。リリース前に前膝で地面を前足首を背屈する。前足首を底屈してから右肘が推進するまでの間は短いので、前足で地面を蹴ってから後ろの股関節を外旋し、且つ。前足の着地位置を探る打者には、通用するだろう。

右股関節を外旋する間が短く、逆Lのときの上体と下半身の捻転差が背中の方に大きいので、後ろの股関節を外旋してから前足で地面を蹴り、前足の着地位置を探らずに前膝を真下に落とす外国人選手、鈴木誠也、大山には打たれるだろう。

森博人(日体大)

踵にウェイトをかけてワインドアップ 左足スパイクの内側で三塁側にスライド
ヒールアップして前膝を胸の高さまで上げる
背骨、骨盤が一塁側に反る。踵体重 投球肩を下げる。逆Lのときに左肩甲骨周辺の筋肉があヘソの方に入る。右足小指球にウェイトがかかり、右股関節の外旋が解ける。上半身と下半身の捻転差が背骨方向に大きい。捻転差の程度は、今村猛より大きく、戸郷、スコット、プロ1~2年目の黒田博樹よりは小さい。前肩を開いてからでないと右肘を前に出せない。左足のインステップが戸郷やスコットと同レベルで左足の着地位置を探りが長い。右肘をつまみ上げる前に左肩が開き始める背骨が三塁側に傾く。前膝で地面を蹴って一回目の右腕上腕部の外旋、前腕部の回内する間を作る。2回目の右腕上腕部の外旋したときに、右腕前腕部を回外(小指を打者の方右に向ける。)します。前膝で地面を蹴る間ができないと右腕前腕部を回内→回外する間ができません。前腕部の2回目の回内の直前のレイバックが垂直に近く、スコットやクリスジョンスン並みに大きい(側副靭帯の稼働域が広い)。左足の底屈から右肘が出てくるまでの間が長い。右手親指でボールを押し込む直前(=2回目の右腕前腕部の回内、肘を上げる、親指~小指をしならせる、手首の背屈=リリース)に側副靭帯にかかる負荷が大きくなる。

総評(暫定)

総合すると、上記の三投手の中では、最も、早川が優れているといえよう。しかし、プロ一年目から森下と同レベルのサービスを産み出せるかというとそれは難しい。”この上記の三投手しかいないのであれば”、広島は、早川と新入団候補の中で最も優先して入団交渉を進めて妥当であろう。