今村は、プロ2年目から、チーム事情により、中継ぎ登板をしてきたが、登板過多により、2013年以降は、低迷し、今季は、復活した。
投球動作や今季の成績を踏まえ、来季以降の起用法を考えてみたい。
今村猛のピッチング
先ず、投球動作を見てみたい。
今村は、前田健太よりは、リリースポイントは高いが、右のスリークウォーター。
今村は、セットのときに、膝を「く」の字に曲げて構える。軸足を立て、リリースを始動したときに、上体を立てた際に、体幹に瞬発力が伝わるのである。
今村は、テイクバックの際に、両肩がM字になることがある。これは、肩を痛めやすい投球動作で、実際にプロ入りしてから右肩を故障したことがある。
一旦、三塁方向に目線を切った後、左膝を伸ばして本塁方向へ、真っ直ぐステップし、膝が割れないので、下半身の使い方だけ見れば、ボールの力が逃げない。今村本人によると、目線を一瞬、三塁側に切りることで、膝の割れを抑止しているとのこと。
グラブを持つ手を内旋しており、両肩が開きません。
ボールを持つ手を内旋しているとき、右肩が少し上がりますが、右肘が右肩よりも上がっていません。
この絵では、両肩がM字になるのが修正されています。
右足がプレートにかかったときに、ボールを持つ手にかけて、Cアーチがかけれれています。
右股関節を内旋させて右股関節にタメを作っています。
ステップ足は、スパイクの内側の踵から着地していきます。
昨年前半までは、ステップの際に、グラブを持つ手を引くのが足りず、右肩の後ろ回転を一応しているものの、右肩が三塁側に向いていた。
昨年前半までは、肘が前に出ず、肘がL字型にならず、肘が伸び、腕が横振りになり、シュート回転をしていた。投球動作による右肩の故障により、肩が上がらないことから、全盛時のキレは戻らないので、当ブログでも技巧派ピッチングによる先発転向を提案してきた。
現在でも、肘から上が伸びてボールが高目に外れることがある。
テイクバックのときの両肩のM字は、改善されていないことがある。
上の絵のように、内転筋を伸ばし、肩甲骨を内側に回転し、肩を後回転させて、肘から上が遅れて出て、しなりができているときは、高目に外れない。
左膝も垂直に曲がっています。
左膝を伸ばして壁を作って右足を一塁側にターンします。
ウエイトボールを使って膝に負荷をかけるトレーニングを積んで、左足をステップし終わった後に、左膝が伸び、左足が突っ立ったこと、前述のセットの構えを「く」の字にすることで、右肩故障後、一旦は、切れが落ちたストレートを回復させ、今季8月後半からのストレートの伸びは、Max154キロを記録した201故障前の2012年頃よりも良くなった。
2013年以降、ボールを深く握ることと、背中が丸くなることで横振りにするとシュートは曲がるので、ストレートが走らなくなることから、シュートを投げる割合を抑えてきた。
左足が突っ立つことで、縦回転がかけられ、投げ終わった後、一塁側に倒れることで、シュートを投げるようになり、シュートの球速は135キロぐらいに落ちたものの、曲がり落ち具合が大きくなった。
フォークは、スプリットの握りで、スピンをかけて投げる139キロ前後のものと、すっぽ抜いて投げる135キロぐらいのものとがある。
前述の下半身を使った投球動作により、スライダーも135キロ前後で小さく曲がり落ちるようになり、左打者のアウトコースのボールからストライク(右打者のインコースのスライダー)になる球が投げられるようになった。
真っ直ぐのキレ、変化球の精度が高まり、奪三振率は、2012年以来の2桁を記録した。
右足をプレートから外して投げる一塁牽制のときだけでなく、捕手がミットを下げたのを見て、二塁を見ずに、右足を軸に反時計回りにターンする二塁牽制も、右足を本塁方向へプレートから外し、右足をさっと軸地点から外し、左足をプレートを跨ぐように踏んで投げるときも、膝が割れないので、ステップが小さく速く、二塁ベースに向けて正確に投げられる。
2013年には、中継ぎ投手でありながら、両リーグ最多の4つの牽制死を記録している。
今季の今村猛の成績
次に今季成績を見てみることにする。
今季成績は、
67試合 73回2/3 60被安打 3被本塁打 87奪三振 22四死球 暴投4 3勝4敗2S(5SP)22ホールド(25HP) 防御率2.44
全て救援登板である。
被打率は、右が、136-30 2本 46三振 10四球 .221
左が、132-30 1本 41三振 12四球 .227
通算 .224である。
本塁打を除くグラウンド内に飛んだ飛球が安打になった割合である被BABIPは、.317
被長打率 .347 被本塁打率 0.37
与四球率 2.69
被出塁率 .281 被OPS .628
奪三振率 10.63 奪三振/与四球=3.95
総投球数 1,194球
打者299人 打者1人当たり3.99球 1イニング当たり16.2球 5.40球で一つのアウトを取っている。これは、奪三振率が高いことが原因である。
インプレーの打球を排除した奪三振、与四球、被本塁打から評価するFIPが1.99
1イニング当たりの走者の数であるWhipは、1.11
残塁率(LOB)は、79.69%
アウトの内訳は、ゴロ61 フライ59 三振87 犠打7 犠飛2 失策1
ゴロアウト比率(GO/AO)は、1.03 ゴロ比率は、28.1%
平均的な投手と比べてどれだけ失点を防いだかを示すRSAA(マイナスよりプラス、プラスは数値が高い程優れている)は、13.11
1失点までの投球回は、3.68回である。細かくみると、優秀な投手から先につぎ込むホームゲームでは、2.85、裏が守りであるvisitorでは、5.24となっている。
失点時回数 21.1回
救援時に安打、与四球を許さなかった試合数/救援時登板数=34.3%
救援時の失点/失点した試合の投球回 0.94
連投は、2連投が7回、3連投が6回、4連投が1回。 4連投が最高である。
月別成績
3、4月 11回 3自責 2.45
5月 14回 6自責 3.86
6月 12回 4自責 3.33 1本
7月 10回 4自責 3.60 2本
8月 15回2/3 2自責 1.15 22奪三振
9月 10回 1自責 0.90 15奪三振
10月 1回 0自責 0.00 1奪三振
7月までは、47回 17自責 3.25であったが、8月以降は、26回2/3 38奪三振 3自責3 1.01となっている。
球種別成績
球種配分は、
ストレート 55.53% これにはシュートも含まれていると考えられる。
ストレートのMaxは、152km/h(救援)
スライダー 26.30% これには、カーブ、シュートが含まれていると考えられる。
フォーク 17.92% これには、スプリット、シュートが含まれていると考えられる。
カットボール 0.25%
球種別の打率は、
ストレート 145-30 2本 15四球 .207
スライダー 64-22 1本 6四球 .344
フォーク 58-8 1四球 .138
カットボール 1-0 .000
球種別空振り率は、
ストレート 8.75% 56三振 (昨年は、5.93%)
スライダー 10.83% 9三振(昨年は、7.98%)
フォーク 24.77% 22三振(昨年は、19.64%)
カウント別成績
初球が27-9 .333
1-0が16-7 .438 2-0が2-2 .1000
0-1が22-6 1本 .273 1-1が20-8 .400 2-1が12-4 .333 3-1が2-1 .500
0-2が13-4 .308 1-2が32-5 .156 2-2が19-8 1本 .421 3-2が16-6 1本 .375
3球三振が18、カウント1-2からの三振が35、2-2からの三振が22 フルカウントからの三振が12
ファーストストライクを打たれている。
ボールがが投げにくい平行カウント、フルカウントでも打たれている。
0-2と追い込んでからも打たれている。2ストライクを取ってからも打たれている(例外1-2)。
コース別打率(右打者ベース)
インハイが23-1 .043 12三振(ゾーン内 15-0 7三振 ゾーンより上のボール 4-1 2三振 .250)
インコースのベルトの高さが17-5 4三振 .294(ゾーン内 16-4 .250 右6-1 2三振 左11-4 .364 2三振)
インローが18-1 .056 8三振
バットトボールの距離が取りにくい真ん中高めのゾーンよりボール2個分上のところが、12-2 3三振 .167
バットとボールの距離が取りやすい、始動がしやすく、捕手の真後ろにファウルが打ち易い真ん中高めのゾーンが27-6 1本 .222 5三振(右15-3 1本 .200 4三振 左 12-3 .250 1三振)
ど真ん中 28-9 .321 5三振
真ん中低め 25-8 .320 7三振
引っ張り専門の右打者が振る真ん中低めのゾーン下 21-4 .190 9三振
バットとボールの距離が取りにくい外角高めが34-8 1本 .235 13三振(ゾーン内 20-4 1本 6三振 .200 右 13-3 1本 5三振 .231
左 7-1 .143 1三振)
外角のベルトの高さ 26-7 5三振 .269
アウトロー 37-9 1本 .243 16三振(ゾーン内 23-6 1本 8三振 .261、右26-5 11三振 .192 左 11-4 1本 1三振 .364・・・ゾーン内は、5-3 1本)
右打者のインコーストータルは、16-2 .125 7三振 アウトコーストータルは、62-15 1本 23三振 .242
アウトコースでのアウトとインコースでのアウトの倍率は、3.88倍である。
左打者のインコーストータル 35-9 1本 .257 10三振 アウトコーストータルは、39-5 17三振 .128
右打者のインコースは、高ささえ間違わなければ、全くといっていい程打たれない。
左打者のインローを打たれている。右手主導でインパクトの際に左手首の下がりを抑止しない、バックスピンをかける選手に打たれていると推察できる。
右打者よりも左打者にインコースを使っている。
長野の顔面に死球を与えて以来、右打者のインコースを攻めることが難しくなっており、2015年は、アウトコースアウトとインコースアウトの倍率が8倍であったが、今季は、以前より大分右打者のインコースを攻めることができるようになってきた。
しかし、右打者はインコースを投げれば抑えられるが、左打者には、インコースを打たれている。
スライダー系の球の制球が課題となる。
得点圏の被打
ビハインドが、32-7 1本 .219 9三振 6四球
同点が12-4 .333 4三振 1四球
リード時が、31-8 .258 8三振 4四球
通算 75-19 1本 21三振 11四球 .253
ケース別の被打率
ランナー無し 162-37 2本 2打点 .202
ランナー一塁 31-4 .105
ランナー二塁 33-11 1本 9 .333
三塁 8-1 4打点 .125
一、二塁 21-6 6点 .286
一、三塁 7-1 1打点 .143
二、三塁 3-0 1打点 .000
満塁 3-0 0打点 .000
三振暴投でも1点入ることがあるとはいえ、ランナーを3塁に置いたケースでは、奪三振率も高いこともあり、打たれていない。
ランナーより後ろに飛ばされた場合に二塁走者が本塁に生還されるケースや必ずしもタッチプレーでなく、フォースドアウトもある一、二塁のケースで打たれている。三塁ランナーを置いたときほど難しくない場面で打たれている。
まとめ
今村は、スライダー、シュートという横の目線を振らせるだけでなく、フォークもあり縦の目線を移動させることもできる。カーブも投げられるので、先発もリリーフもできる。
但し、先発をするにしろ、抑えをするにしろ、両肩がテイクバックのときにM字になるのは、故障し易いので修正した方がいいと思う。
2010年に先発したときは、137キロがMaxで一軍で通用するレベルでなかったが、2年目の2011年は、先発でも142~144キロを投げられるようになり、ヤクルト戦、ソフトバンク戦で6回1自責とQSを達成し、6試合先発し、28回 39安打 4本塁打 11四球 whip 1.79 被打率.336の数字を残している。
その後、当時の青木高広、岸本、上野らが打たれまくっていたこともあり、セットアッパーとして起用された。
今季の今村は、イニングが9回で、1点取られてもアウトカウントを稼いでいけばいいというケースではないところで、6~7回の守り優位のところで点を取られているとことと、点を許すこと、ホームゲームで2.85回で1点取られていることから、数字以上に打たれていると錯覚を与え、及第点が4イニングで1点で、3試合に1点取られるのは救援としてはどうかと思われがちになるが、トータルで3.68回に1点と悪くはない。
三塁ランナーを置いたときの被打率が低い。牽制が巧いので得点圏に進塁されることを抑止できる。
見ている者が思っている以上に、リリーフとして優秀な結果を出している。
34.3%の試合で、安打も四球も出していないことから、少ない球数で抑える投手と錯覚させるが、奪三振が多いこともあり、実は、打者一人当たりの球数が多く、球数を投げて1つのアウトを取っている。1イニング当たり16.2球では先発は難しい。
チーム事情、今村の投げている球そのものから言っても、来季は、救援の一角として必要な投手と言えるのである。
6連投となった日本シリーズ第6戦中田翔からは、147キロで空振りを取ったが、田中賢介のところは、139キロ。制球重視で力をセーブしていたと思いたいが、疲労から肩が上がらず、しなりができていなかったのも事実。
2013年の涌井の10連投というのもあるが、6連投はやり過ぎである。今村自身しっかりリハビリしてもらいたい。3連投以上は、やって欲しくないし、優勝争いの終盤で、ロースコアの接戦続きで、止むを得ず投げさせるにしても3連投が限度であると思う。
主な打者との対戦成績
橋本 4-3 .750
立岡 3-2 .667
長野 4-0 .000
坂本 2-0 .000
村田 3-0 .000
ギャレット 3-0 .000
阿部 1-0 .000
小林 6-1 .167
脇谷 2-0 .000
坂口 3-1 .333
山田 3-1 .333
バレンティン 3-1 .333
雄平 5-0 .000
畠山 4-1 .250
大引 3-0 .000
今浪 4-1 .250
筒香 5-2 .400
宮﨑 3-1 .333
ロペス 4-0 .000
梶谷 5-1 1本 .200
桑原 6-0 .000
石川 7-1 .143
杉山 5-3 .600
藤井 3-1 .333
ビシエド 4-1 1本 .250
平田 5-1 .200
大島 5-1 .200
福田 4-0 .000
北條 5-2 .400
高山 5-0 .000
鳥谷 4-1 .250
原口 2-1 .500
ゴメス 4-0 .000
福留 3-0 .000
江越 2-0 .000
松田 2-1 1本 .500
中田 1-0 .000
大谷 1-1 .1000
レアード 1-0 .000
秋山 1-0 .000
※文中データは、データで楽しむプロ野球、ヌルヌルデータ置き場他を参考にした他、独自計算によるところもあります。
[追記]
森福に続き、山口俊も巨人入りが内定したようです。
巨人の一軍投手枠12人前後の中に入るのが難しい森福に対し、故障がなければローテーション入りする山口。
DeNAに残留したにしろ、巨人に移籍したにしろ、広島は、来季以降も対戦せざるを得ない投手。
これまでも対戦してきた投手であり、今後も研究して打っていくだけです。
但し、吉川と山口が故障なく通年ローテーションに入れば、今季の勝利数に相当上積みがあるわけで、広島の連覇にとって、相当厄介な相手になるでしょう。
[追記]
今村は、コンスタントに、今よりもグラブを肋骨に沿わせるように強く引いて、右肘~右肩~左肩のラインが斜めに出来れば、投げ終わった後左膝を伸ばす投球動作でも高目に外れることが無くなってくると思います。
早い回で捨て試合にすることを決められる試合というのは、1シーズン35試合程度だと思いますので、救援投手をローテーション制にするのであれば、総合的に強い球が投げられる投手が6人必要になると思います。
実績から言えば、中﨑がブルペン入りしないときのクローザーは、今村、Jacksonがブルペン入りしないときのセットアッパーは、大瀬良だと思います。リリーフでの岡田の投球内容は今季公式戦で実証済なので、来季の投球内容次第では、これらのどちらかのポジションを岡田が務めてもいいと思います。
それでも7~9回を担当する今村、Jackson、中﨑は今季並みの試合数を投げることになるので、年何回かは、Jacksonを10日間ファームで休ませて、新外国人投手を投げさせる必要が出てくると思います。
今村、中﨑他救援投手にも交代で複数回10日間休みを与えるとすれば、上期6人プラス新外国人以外にもう2人程度救援投手が必要になると思います。
個人的に考えている来季の救援投手陣は、中﨑、Jackson、今村、大瀬良、岡田、一岡、藪田、塹江、新外国人です。