広島東洋カープの松田元は、ケビンクロン内野手との契約を内定させた。
クロンは、今季アリゾナ・ダイヤモンドバックスでプレーした27歳の内野手。ポジションは、主に一塁で、三塁、右翼も守ったことがある。
身長公称195センチ、体重115キロ、右投右打。昨季はマイナーで39本塁打を放ち、メジャー通算6本塁打を打っている。
ケビンクロンの打撃
日本の打者は、骨盤を後傾させ、後ろの脇を締め両肩をフラットにする。背骨が直立に近くなる。ヘッドを立ててセットアップを行う。後ろの腹横筋に負荷がかかる。他人に手首を外側に引っ張らせても前にのめらない。すなわち、脱力ができていないのである。後ろ足の踵~股関節~後ろの腹横筋が固定され、このラインを軸に前肩関節を右打者は右回り、左打者は左回りさせる。
メジャーの打者は、骨盤を緩く前傾させる。後足のスパイクの内側でエッジをかけ、前足にウェイトをかけ、後肩を前肩よりも上げる。後ろの脇が空き、手首を他人に外側に引っ張ると前のめりになる。
ケビンクロンは、セットアップ(アドレス)のとき、右足のスパイクの内側でエッジをかけて立つ。左足は、背骨はホームベース方向に傾くが、オープンスタンスで骨盤はほとんど前傾しない。後ろの肩を前肩よりも高くし、スパイクの外側と右足小指球の両方にウェイトを移してから予備動作に入る。
ケビンクロンは、投手が後ろの股関節の外旋を終えて、前足踵を一歩前に踏み出し、投球肘を逆Lにしたときに、左足小指球で地面を蹴る。左足、左肩が、右足、右肩より打席の内側のライン寄りである。。前足で地面を蹴ると背中の半分くらいは投手の方に向くが、左肘が投手方向に張り出しており、開幕当初の堂林のように背中がフルに投手の方に向くほど、背骨の方には、入っていない。
前膝を落とし始めてから、右肘をヒッチする。手首を右肩と右耳の中間に持っていく。振り下ろす直前までは、鈴木誠也、ピレラは前肩を背骨の方に入れないが、坂本と同じくらい前肩の前後左右の動きは小さい。トップハンドの前腕部を回内して人差し指~小指をしならせるとヘッドは投手の方を向く。ケビンクロンのヘッドは、鈴木誠也、メヒアと同じく投手の方に向く。しかし、ケビンクロンは、前足を下ろし始めたとき、ピレラ、鈴木誠也と異なり、メヒア、落合、古田、岡本、堂林と同じく左肘を後ろに突っ張らせ右手首を後ろに追いやる。前肘を後ろに引っ張れば引っ張るほど両肩がフラットになる。しかし、落合、古田、岡本、堂林、メヒアほどトップは深くない。これらの打者ほど、左肘は突っ張らない。メヒアのように両肩がフラットになってヘッドが寝るということもない。ケビンクロンは、左足首の底屈のときまでは、右肘がヘッドの外側に張り出している。
ピレラは、右肘をヒッチしてから左足のスパイクの外側で地面を蹴るので右肘を出してからも右股関節が外旋するので、右手親指でグリップを押し込む前に右股関節の外旋が解けて親指がしならず、三塁側席にファウルを打つことがある。ケビンクロンは、後ろの股関節を外旋する間が短い。ケビンクロンは、前足を底屈する過程で右股関節の外旋が解ける。
鈴木誠也、ピレラ、山川、中村剛也、前田智徳、小園は前足の着地位置を探らない。
オースティンは、前足を一歩前に出してから右肘を前に出す。ソトもケビンクロンは、前膝を真下に落として全く左足の着地位置を探らないこともあるが、前足の着地位置を探ることがある。前足の着地位置を探ると前膝が前足のつま先より前に出て、右手の親指でグリップを押し込んでから前膝で地面を蹴っている。
ケビンクロンの前足の着地位置の探りは、サンズ、オースティンより長く、ソトと同程度。山田哲人、堂林、坂本、ロペスほど長くはない。
ケビンクロンは、前足の着地位置を探らないときは、ヘッドをボールの外側に入れて打つことができている。すなわち、ヘッドが手首のラインを下回らない。アウトローのボールにたしても、わずかながらに右手首を背屈できている。左足の着地位置を探ると、右手の人差し指~小指がしなる間が短く、右手首が底屈する。右腕上腕部を外旋して右肘を出しても、また、ケビンクロンは、前膝を下ろすとき、前肘が後ろに突っ張っているで、左肘のロックを解かないと右肘を推進できない。トップ(振る前の手首)は、固めて(静止して)はいけないのだ。鈴木誠也、ピレラ、山川、中村剛也、前田智徳、小園は、振り下ろす前に手首が静止しない。トップは緩めないと人差し指から小指をしならせることができないのだ。
菊池涼介は、手首がトップポジションに到達する過程だけでなく、左足の着地位置を探る過程でも、前肩が背骨の方に入る。故に、前肩を開かないと右肘を推進できない。
ケビンクロンは、菊池涼介と同じく両脇右手親指でグリップを押し込んだ瞬間に両肘が伸びる。ヘソの前で逆三角形ができる。すなわち、人差し指から中指がしならないからガイドハンドの肘より小指が前に出てしまいヘッドが加速しない。ガイドハンドの親指がしならないから親指でグリップを押し込めない。人差し指から小指がしならないから、ヘッドがボールの内側に入る。押手の手首が底屈してヘッドが手首のラインより下がる。前脇を締めて前肘でボールを掃うことでヘッドに手首のラインを越えさせる。
この両脇を締め、逆三角形を作るというのは、引手主導の日本の打者、特に右投げ左打ちの打ち方なのである。
ボンズ、ピレラ、鈴木誠也、小園、前田智徳は、始動からフィニッシュまで前肘が伸びることがない。
ヘッドステイバックの角度はピレラほど大きくはない。バナナカーブは、NPBの選手の平均より大きいが、ピレラのように垂直には曲がらない。
総評
ピレラは、振り下ろす直前の手首の位置が高い。加速距離が上下に長い。右肘を出した後、骨盤で地面を押しつぶす。パーフェクトインサイドアウトスイングの完成度は、ケビンクロンよりも高い。ケビンクロンは、前後に掌を推進するが、手首が底屈し加速距離は長くはない。ピレラの方がケビンよりもホームラン打者である。
トップは浅いがトップに達する過程で前肩が背骨の方に入る短距離打者の松山、トップが深い中距離打者の堂林よりはずっとホームラン打者である。
パーフェクトインサイドアウトスイングで振る、国際的にトップレベルの投手から本塁打を打てるのはピレラの方である。
日本で生まれ育った投手では、投球肘をヒッチ(後ろの股関節を外旋)してから、前足で地面を蹴る投手は、森下、島内、ケムナと極めて少数である。
菅野や千賀も前足のスパイクの外側で地面を蹴ってから後ろの股関節を外旋し、後足を軸に前肩を右回りさせている。
ケビンクロンは、割れが大きいので、サンズというよりは、ソトに近い。ソトは右肘をヒッチしてからをヒッチしてから前足で地面を蹴るが、ケビンロビンズは、前膝を下ろし始めてから右肘をヒッチさせる。菅野のように前膝で地面を蹴って指先のしなりを作る投手には、対応が困難になる。投球腕を背中の方に引かず、リリースの瞬間、前膝が突っ張る外国人を他球団が獲得したら、その投手には手も足も出ない。その投げ方に最も近い濵口には、カモられる。
西は、後ろの股関節を外旋し、前足で着地位置を探らない。しかし、走者がいないときは、左膝を高く上げるので後足に軸ができるので、前肩関節を右回りさせる。ケビンクロンは、無走者の場面では西から本塁打を打てる。クイックで投げた西には対応できない。
軸足の軸は、”回転軸”
打撃も投球も走塁も、始動からフィニッシュまで一度も後足が軸になることはない。軸足は一貫して前足。前足で地面を蹴って前足の足裏が地面から浮いて後足一本で体全体を支えているから、後足が軸になったと指導者が錯覚しているだけなのである。しなりを作って蹴る準備、叩く準備をしているタメと軸を混同しているのである。
二段モーションは、後ろの股関節の外旋で始動しても、1回目に前膝を落とせば、後足の拇指球にウェイトが移る。後ろ足~後ろの腹横筋が固定され、後足に軸ができてしまう。投球肘をヒッチできない。前膝を上げないと後ろの股間節を外旋できない。
大野雄大は、二段モーションで投げると、無走者のケースの西ほど前膝を上げず投球腕も背中の方に引かないが、前足の着地位置を探る。後ろの股関節を外旋する間ができず、指先がしならない。ケビンクロンは、無走者の場面では大野雄大から本る打を打てる。クイックで投げる大野雄大は打てない。
ケビンクロンは、小川、石山、秋山、戸郷には対応できる。リリースの瞬間、左膝が屈曲する小川はカモにできる。
2回目の前腕部の回内までに前膝で地面を蹴れず、指先がしならない2流3流の投手、広島で言うと中村祐太、遠藤レベルの投手からは、後ろの肩を残して逆方向にも順方向にも打てる。ピレラよりも打つ。バカスカ打つ。すなわち、”弱い者いじめ”専門の打者である。
NPBの全投手トータルのレベルに徴すると、サンズ以上、ソト未満の”ペース(必ずしもシーズントータルではない)で本塁打を量産し得る。
忌憚なく言わせてもらうと、勝敗とは関係のないどうでもいい場面でサク越えを荒稼ぎして上っ面の数字である本塁打率がハイペース、打点を本塁打で割ると2前後の選手になり得る。
速く走れれば、3番に置いて1,2番が凡退して二死無走者となっても、三者凡退を防ぎ得るが、足が遅いので、エンドランがかけにくい。シングル安打で二塁から本塁に還れない。
5番ピレラが走者一掃してからの6番か7番という起用の仕方がベターだと思う。