鈴木誠也に見るインハイのさばき方

今季の鈴木誠也

今季は、途中故障離脱しながら、.4番に定着し、115試合 300  26本 90打点

得点圏打率.308

昨年に引き続きOPS1.000超えはならなかたものの、OPS.936は、規定打席に到達した打者の中で第1位。

シーズン終了までフル出場をしていたら、本塁打王と打点王の2冠を獲得できていたかもしれない。

鈴木誠也のバッティングを観ると、学ぶことが多い。

今季の鈴木誠也は、インハイの打率が.333(24-8) 1本塁打

ボールゾーンを含めても.290(31-9)

打球方向は、

左 221-82 .371 24本(50.2%)

中 152-34 .224 2本(34.5%)

右  67-15 .224   (15.2%)

逆方向のバッティングをしないで、インハイの打率が3割を超えている。

鈴木誠也の打撃の中でも、ここでは、打者の目線から投手のリリースポイント、投球の軌道が最も近く、全コースで最も早い対応が要求されるインハイの打ち方について取り上げたい。

鈴木誠也の打撃

鈴木誠也は、スクエアスタンスで立ち、グリップエンドに小指をかけることなく、中指、薬指、小指の三本指でバットを握ります。

指に瞬発力による体重の負荷がかかっておらず、脱力できています。

骨盤の上に頭を乗せ、上体を緩く本塁側に前傾させています。

両膝をルーズに曲げ、両足の内転筋を使ってルーズに両膝を内側に絞ります。

この動作が、後の股関節の内旋、外旋による瞬発力を産み出す源となります。

この動作が、前後に懐の深い打撃(引き付けて前後の変化に対応する打撃)を産み出す要因の一つになります。

この動作は、岩本貴裕、後述の前田智徳にも見られるホームラン打者の動作です。

この前傾の姿勢が、後の股関節の内旋、外旋による瞬発力を産み出したときに、瞬発力をバットに伝える源の一つになります。

前後の懐も広くなっています。

バットのロゴマークは、捕手側に向けています。

顎を引き、目線は投手と正対しています。

投手が左足を上げ、大腿骨を浮かせたときに、左足を三塁側にわずかに引いて踏み、左足を上げ始めます。

ここの部分は、前田智徳と共通しています。

前田智徳も鈴木誠也同様、肩幅より狭く、他の選手と比べ、尋常でなくスタンスが狭いです。

 

拇指を含む右足のスパイクの内側に重心を掛けています。

左足を引き、後ろの膝も緩く曲げ、

右股関節を三塁側に内旋させます。

鈴木誠也、岩本、前田智徳3者共、トップハンドとボトムハンドの間を指一本程度空けています。

鈴木誠也は、後ろの肘を大きく空けているので、開いた肘をインパクトの瞬間に締めることで、瞬発力がバットに伝わり、スイングが加速していきます。

トップを作ったときに、ヘッドが立つので、引っ張った打球が伸びます。

ここでも、右足のスパイクの内側で地面にかませまています。

左足を骨盤より下まで上げます。

少しヒッチ(グリップの位置を下げる)させます。

右膝も緩く曲がっています。

投手が胸を正面に向けます。

投手がボールを握る手が目の前に現れます。

鈴木誠也は、右大腿骨を浮かせ、

左足の位置を探ることなく、左足をスライドステップのように下し始め、グリップの位置を上げて、トップを作り、バットを振り下ろし始めます。

鈴木は、トップハンドもボトムエンドも、脇を開けているので、ロックされず、両肩の可動域も広くなり、始動が遅れません。

左足のくるぶしを投手の方に向けて着地の位置を探っているので、左足で弧を描きません。

臀部が沈んでいないので、トップを作るのが遅れません。

まだ、右足は、スパイクの内側で地面にかませたままです。

前田智徳の方は、投手が重心を沈め始めたたときに、前の足を下し始め、グリップを上げ、トップを作る過程にあります。

前田も、骨盤の上に上体、頭が乗って、本塁方向に上体を前傾させています。

前田智徳の方が若干、トップを作るのが早く、ボールが長く見れていることになる。

両者共、トップを作ったときに瞬発力による負荷を全身から解いて脱力できている。

しかし、前田は、トップを作ったとき、振り下ろしのとき、両肘が締まっているのに対し、鈴木は、両肘が開いている。

前田の方が窮屈な打ち方になっている。

トップを深く入れたときから、振り下ろしまで両肩が水平だったので、瞬発力による負荷が両肘、両肩にかかりません。

トップの位置がキープできていたので、

ヘッドが肩と耳の間から出てきます。

グリップが両肩より上に行かないので、バックスピンがかけられます。

左足の着地の位置を探った後のステップ幅は、非常に狭い。

鈴木は、トップを早く作ったことにより、振り下ろした結果、ボールが長く見れています。

左肩を投手の方に向けています。

ヘッドが右肩と耳の間から出てきます。

トップの角度は、変わっていません。

右足の股関節、後ろの腰の内臀筋から先に外旋させます。

左足は、スパイクの内側から着地させて重心移動しています。

左足の重心は、爪先にも踵にも偏っていません。

振り下ろし始めは、前田智徳も鈴木誠也も、後ろの肩が、ほとんど下がりません。

ヘッドのボールを当てる面が外側を向いています。

右胸の張りを作り、三角筋を使って右肩をやや後転させ、

ボトムハンド主導で、肘→グリップ→ヘッド→後ろの腰の順に出てきます。

左肩の位置は動いていませんので、左肩は開いていません。

トップハンドを伸ばしてドアを押し開けるようにスイングすることをドアスイングといいます。

前述の動作は、ヘッドの軌道が回転運動をするドアスイングですが、

プロ野球選手で、全くドアスイングでない選手はいません。

ボトムハンド1本でのティーバッティングで、左手でバックスクリーン方向にボールを投げる動きをして、右肘をコックして(曲げて)体に近付けたままで、右手でビンタする動作をすれば、グリップが先に出てヘッドが残る(回転運動しない)スイングになりますが、

ドアスイングでないスイングでは、ミートポイントが狭くなります。

左手でボールを受けて両脇、両肘がロックされて、始動(トップを作る)、振り下ろしも遅れ、スイングに瞬発力が伝わりません。

軟式球は、ボールが弾みますが、硬式球は、軟式球ほど弾みません。

軟式球は、ボールの下にバットをくぐらせると外野フライになりますが、硬式球では本塁打になります。

「ドアスイングをするな」と頭ごなしに言う人は、軟式野球しかやったことのない人です。

振り出したときに、多少右肩が下がっても、骨盤の前足側が、前足よりも前に出されなければ、差し支えありません。

肋骨の下の筋肉をスライドさせます。

重心が後ろ足にも残っています。

ここでも、ヘッドのボールを当てる面を外側(バックネット方向)に向けています。

先程、トップがキープできていたので、バットはインサイドアウトで出ています。

更に、ヘッドのボールを当てる面を外側に向けた状態をヘッドがしなるということです(実際には、ヘッドはしなりませんよ)

投手の投げる球は、ホップする球、伸びる球と言われていても、実際には、手元で失速します。

ボールの軌道と45°にバットをこするように振り下ろしています。

繰り返しますが、ヘッドは下がって構いません。

ヘッドを立てるのはトップを作るときだけです。

しかし、ボールの軌道の横や下からバックスピンをかけると(トップハンドの指先でバットを切ると)ゴロになってしまいます。

ミートする前までの過程では、左肘、左脇を締めていると、左肘、左肩がロックされてしまいますので、左肘、左脇は開けている必要があります。

前田智徳も、古田敦也との対談では、インハイを打つとき、左肘、左脇を締めたまま、振り下ろしていくと語っていますが、実際には、ボトムハンド(右手)の肘、脇は開けています。

鈴木は、トップハンド(右肘)も緩く曲がったままで、ミートするまでの過程で伸び切ることはありません。

完全なドアスイングにはなっていないということです。

軸回転にバットが付いてくるので、スイングの円が大きくなります。

重心も後ろに残っています。

インハイの球なので、左膝は、90°には曲がりません。

しかし、左膝が後方に伸び切ることなく、緩く曲がっています。

前田の方が前膝は、直角に近く曲がっています。

鈴木は、バットは、アウトサイドインで出ていきます。

ボールの下2/3にバットをこするようにくぐらせます。

ヘッドは下がって構いません。

手首が下がらず、インパクトの瞬間に瞬発力が最大に伝わっている打ち方です。

バックスピンを掛けることができます。

ボトムハンド(左手)の肘を肋骨に沿わせるように引き、左肘、左脇を締めています。

インパクトの瞬間は、右肩が下がっても構いません。

左膝が緩く曲がっています。

右足が緩く曲がり、重心が右足に残っています。

左膝が爪先より前に出されていません。

左肘は上を向いておらず、水平になっています。

頭が前に出されず、右足、骨盤の上に乗っています。

右膝が緩く曲がっています。

肋骨に沿って両腕が伸びていきます。

右足のスパイクの内側の歯を地面にかませて前に運んでくきたので、前の腰が横にズレます。

左足を着地した後、インパクトの瞬間は、右足の踵は完全に浮いて、爪先立ちするので、打球が伸びます。

よって、左足は、ふくらはぎ付近の筋肉を直線的に筋出力する、拇指球で回転する、僧帽筋、脊椎軸を中心とした腸腰筋で回転するにもかかわらず、スイングの軌道をふさぎません。

前田智徳もボトムハンドの両脇、両肘が締まっています。

インパクトの瞬間両肘が伸びています。

落合とかは、ボトムハンドの肘が開いて、肘が上を向いてしまっているのですが、前田智徳も鈴木誠也もボトムハンドの肘が水平になっています。

前田智徳も、前の足は、拇指球回転の脊椎軸の回転ですが、後ろの足のスパイクの内側を地面にかませて、前に運んできているので、前の腰が横にズレています。

しかし、両者とも、前の足の着地後は、後ろの足の踵を浮かせて、後ろの足も拇指球回転をしています。

両者共、へそよりも相当、ポイントを前で打っています。

鈴木誠也は、右の握力が44キロしかありません。

リストや握力が強いと、インパクト前に脱力できませんので、ボールが飛びません。

左肘を使ってボールを掃います。

左膝をルーズに曲げていたので、左膝を上方に緩く蹴って伸ばしていき、壁を作っていき、

左股関節が前に出されること、左膝の開きを抑え、左肩の開きを遅らせることができます。

スライス回転を作り、ファウルゾーンに切れていきません。

フォロースルーも大きく最後まで振り切っています。

顎も上がっていませんので上下に目線がブレません。

フォロースルーの過程では、左足の踵で回転しています。

この踵での回転が、左膝で壁を作ることを助けています。

この壁が右足のターンを助けます。

フォロースルーの過程で左膝が曲がったままでいることを壁を崩すと言います。

バットが背中につくまでフルスイングしています。

ホームラン打者のスイングです。

 

股関節の外旋方向と同じ方向に右足をターンさせていますので、レフトスタンドに引っ張ることができます。

着地したときに再び左足の拇指球に重心が移ります。

フルスイングの完成です。

各種データ

コース別成績

主な投手との対戦成績

菅野  11-3  .273   1振

田口 15-4 .267  2本 4打点 2振

マイコラス 7-2  .286  2打点 1振

Mathieson  4-1   .250   2振

畠 4-2  1本 3打点 1振

カミネロ 1-1   .1000

石川 13-8  .615  3本 3打点 1振

ブキャナン 9-3  .333  1本 2打点 2振

山中 6-2  .333   1本 3打点

ルーキ 7-3  .429   1本 3打点 3振

パットン 4-3  .750  1本 2打点 1振

今永 7-4  .571  1本 1打点

石田 4-1  .250  1本 2打点

ウィーランド 8-3  .375   1本 1打点

濱口 11-2   .182    4振

エスコバー 5-2   .400  1本 1打点 2振

(日本ハム 5-2  .400  1本  3打点 2振)

山﨑康晃 4-2   .250   1振

井納 6-3   .500

砂田 2-1  .500   1打点

八木 2-1  .500   1本 3打点

鈴木翔太 7-3   .429  1本 3打点

又吉 9-3   .333  1本 3打点 1振

小笠原 8-2   .250   1打点 1振

柳 5-1   .200   2振

能見 5-3   .600   1打点 1振

メッセンジャー 11-4   .364   2打点 1振

岩貞 9-4   .444   1本 4打点

岩崎 10-4   .400    2打点 1振

ドリス 4-1   .250   2振

マテオ 4-1  .250

斎藤佑樹 2-1  .500  1打点 1振

佐藤達也 2-1   1本 1打点

金子千尋 4-0  .000

ハンデンバーグ 3-0   .000   1振

野上 3-1  .333   1振

岸  3-1   .333  1本 1打点

美馬 3-1  .333  1打点 1振

二木  2-1   .500   1本 2打点 1振

まとめ

鈴木は、現在、センターに強い打球を打つことに取り組んでいますが、額面どおりに受け取ってはいけません。

センターに強い打球を打つとは、前述の膝で壁を作り、左方向にファウルで切れる打球を無くしていくということ。

重心が後ろに残ったままだと、詰まって野手のいないところに落ちるヒットにはなります。

しかし、右足を股関節の外旋と同じ方向にターンさせないと瞬発力の乗った打球は打てません。

これまでの打撃を更に進化させていくことと考えていいでしょう。