鈴木誠也は、何故、坂本勇人に勝てなかったのか。

Last Updated on 2023年3月8日 by wpmaster

.344で首位打者を獲得した坂本勇人と.335で首位打者を獲れなかった鈴木誠也、両者の違いはどこにあったのだろうか。

先ずは、坂本さん、首位打者おめでとう。

誠也ファンには、傷口に塩を塗るような不快な文章になり、理屈っぽい文章が続きますが、モノ好きな方はどうぞ。

鈴木と坂本に共通しているのは、スイングしたとき、見送ったときに頭がブレず、顎が上がらない。

鈴木は、エルドレッドや新井のように、振り遅れてバットのヘッドが波を打ったり、他の打者のようにボールを追いかけて伸び上がったりしない。

鈴木も坂本も今季は、ステップの大きさ、ノーステップ(基本的に坂本はノーステップで打たないが)、足を上げたときも、軸足の右足の位置が固まった。前に突っ込まないので、鈴木の空振り率は、5.74、坂本が5.86と共に空振り率が低く(山田哲人6.77、筒香10.13)、三振も多くない(鈴木79、坂本67)。

両者のバッティングを比較すると、

鈴木は、左手の指の内、3本で握り、トップの位置は、鈴木が地面に対し45度前後で、坂本は鈴木よりも肘を高く上げて80度前後に構える。

バットの始動は、鈴木の方が早い。

右の腰の回転の始動も鈴木の方が早く、ゆっくり回転させるが、坂本は、素早くキュッと回転させる。

後ろの大きさ、懐の深さも鈴木の方が大きい。

バットのスイングは、坂本はグリップを体の近くで回し、バットを内から出し、上から叩きつけ、スイングスピードは坂本の方が速い。しかし、肘を含む腕の稼動範囲範囲は鈴木の方が長いので腕の振りは鈴木の方が速い。

鈴木は、肩幅が広く捕手寄りに壁を作り、ややヒッチさせながら、バットをスリークウォータの角度でバットを出し、ボールを面で捕らえるが、坂本は、点で捕らえる。

鈴木は、足を上げた後、投手方向に、ベースと平行に左足を運び、左膝を回転させながら地面に突っかけながら開いて(
左膝を曲げたまま着地しX軸を作り)左足を着地させる。鈴木は、ステップした足を着地したときに、伸ばし過ぎず、曲げすぎず、左膝を余裕を持って曲げている。バットコントロールする。それ故、低目はバックスピンをかけながら、内外の難しい球でもスライスさせた打球が打て、レフト方向の打球は、ファウルゾーンに切れない。

肩幅と同程度の狭いスタンス(鈴木は、スクエアスタンス)で打っても、肩幅の骨格が広いので、下半身が安定し、内角球に詰まらない。

坂本は、足を上げて、三塁方向に弧を描くようにして地面に着地させる。

鈴木は、ステップした足を着地したときに、伸ばし過ぎず、曲げすぎず、左膝を余裕を持って曲げている。

ミートの瞬間、鈴木は、ホームベース方向に上体を傾けるが、坂本は、やや右肩を下げながらも、突っ立ったままミートする。テイクバックしながらボールとの距離を測るのだが、坂本は直立に近い状態で測り、鈴木は、ゆっくりと右腰を回転しながら距離を測りポイントを前にするか後ろにするかを決めている。鈴木は、右手首は立てず、左手首だけ下がるのを抑止し、ヘッドは立てずにインパクトする。

ボールを運ぶ瞬間、鈴木は、肘を畳まずに打っていることがあるが、左の瞬発力が強く、右手で押し込むように振り切るが(右腰、左手が主導で右手はフォローなので左肘が空かない)、坂本は、肘を畳んで、肘を体方向に引くようにして引っ張る。

鈴木は、インコースを打ち終わった後、左膝を伸ばし、右足は、緩く曲げている。

鈴木は、変化球を待ってストレートに対応し、坂本は、ストレートを待って変化球に対応するという打法を採用しているものと思われる。

坂本はヒットの延長が本塁打、鈴木の場合は、本塁打の打ち損ないが安打。

鈴木のヒットコースは、156本中、左方向が80本(22)、センター方向48本(3)、右方向28本(4)。

坂本のヒットコースは、168本中 左方向が70本(17)、センター方向57本(3)、右方向41本(3)

()内は、本塁打。

鈴木は、左ー51.3%、中ー30.7%、右ー17.9%

坂本は、左ー41.6%、中ー33.9%、右ー24.4%

坂本の方が広角に打っている。

ボール球を含むインハイは、鈴木が29-7 .241 2本(ゾーン内 20-4 ゾーンより高目のインハイ 6-2 ゾーンより更に内の球3-1)、坂本が30-9 .300(同 20-6、9-3、1-0)と坂本の方が打率が高い。

高さを問わず、コースだけで言えば、鈴木のインコースは、94-31.330、坂本は、88-33 .375である。

ボールが見にくい、バットとボールの距離を保ちにくい真ん中高めのゾーンよりボール2つぐらい高いコース(上図の赤い部分)の打率は、坂本が11-6 .545に対し、鈴木は、15-2 .133

やはり、ボールが見にくく、ボールとバットの距離が保ちにくい外角高め(上図のグリーンの部分)の打率は、坂本が52-18 .346に対し、鈴木は、32-8 .250となっている。

能見は、バットとボールの距離が保ちにくいコースに散らして鈴木を15-2 .133と抑えました。

鈴木は、壁が投手寄りに作られるとボールが視界から消えたと錯覚する真ん中低めのゾーンより低いコース(上図の青い部分)の打率が16-3 .188であるが、坂本は、21-6 .286である。

フォークボールの打率は、鈴木が43-7 .163であるのに対し、坂本は、42-14 .333と苦にしていない。但し、チェンジアップの打率は、鈴木が.308、坂本が.179である。

鈴木は、アンダースローのようなホップする球、左投手のクロスファイアーに強く、サイド~スリークウォータ系は、又吉のようなスライダー投手はこなせるが、田島のようなフォーク投手は打てない。

フォーシームの打率は、鈴木が.372、坂本が.376とほぼ互角だが、カットは、鈴木が.321で、坂本が.167、ワンシーム、ツーシームなどのシュート系は、鈴木が.389、坂本が.356。

スライダーは、鈴木が.347、坂本が.356。スライダーは、縦、横に小さく曲がり落ちるもの、外に大きく弾かれるものまで複数存在するので、更に細かく分析する必要があるが、鈴木の場合、小川のような打者の直前で小さく曲がり落ちるツーシーム系のスライダーには強く、菅野のような縦のスライダーには弱い。坂本も前田健太のツーシーム系のスライダーやシュートには強かったが、前田の縦のスライダーに弱かったが、今年は克服した。

1~3点ビハインド(相手からみれば、僅差のリード)のケースでの打率は、鈴木が113-43 .381 6本 18打点、坂本が119-43 .361 5本18打点とほぼ互角。

2ストライクと追い込まれてからの打率は、鈴木が224-61 .272 11本、坂本が205-54 .263 5本と差がない。両者とも相手投手のウイニングショットや厳しい球を打っているということである。

初球の打率が、鈴木は、41-10 .244、坂本が73-36 .493。

鈴木の場合、相手投手が初球から甘い真っ直ぐをあまり投げてこなかったこともあるが、坂本が甘いファーストストライクをいかにミスショットしなかったかということでもある。

イニング別の打率については、坂本は、2回が.556と最も高く、鈴木は、7回が.422、9回が.419となっている。しかし、鈴木は、初回が.115、2回が.333となっている。坂本も8回が.380、9回が.395と終盤にも強い。

※文中数字は、「データで楽しむプロ野球」他に基づいて計算しています。

鈴木は、初回、早いカウントでボールとバットの距離が保ちにくい、故にタイミングが取りにくい球を振ることで終盤に備え、坂本は初球からストライクが来れば打ちにいくバッティングと見ることができる(例:オリックス戦で赤い部分にかかるボールを本塁打)。

シーズン中も述べてくたことだが、タイミングが取りにくいコースの打率が坂本に比べて良くないということは、テイクバックの始動、右腰の回転の始動が早すぎて、壁が投手寄りにできてしまっている打席があったからであると思われる。

投手のリリースからボールの軌道との距離の取り方が、昨年までよりは良くなったものの、坂本に比べるとまだまだ未熟で、鈴木の方がボールの軌道に錯覚させられてしまっているということになる。

それでは、鈴木は、坂本の真似をすれば打てるようになるのかというと、それは否だと思います。

鈴木よりも10センチ近く上背があると思われる坂本は、リーチの長さを活かした打撃、鈴木は、肩幅が広く体幹が強さを活かした
打撃でここまできたわけですから、今までのバッティングを極めていけばいいと思います。

シーズンが終了した翌日、鈴木は、バッティングマシンと本塁の間を短くしたり、速度を速く設定するという手段を用いるのではなく、緩い球を引きつける練習をしている。

バカな振りをして、実は頭がいいです。

意識高い系(笑)とは違い、実体が伴っています。

間違っても、少女漫画のイケメンヒーローとして登場することはありえませんが、巨人ファンが描いた野球漫画の最大のヒールとして登場するぐらいの活躍を望みます。

[追記]

成績は残念な結果に終わりましたが、ハムストリングスの故障を乗り越え、肩の亜脱臼を抱えながら(打席で首を捻るのも頭部死球の後遺症かもしれません)シーズンを全うしてきたことについては、労いの言葉をかけたいと思っていますよ。

[主な投手との対戦成績]

(坂本)

デイビーズ   11-5  .455 2本 3打点

小川       7-1  .143 1  1

井納     12-3  .250  0  0

山口俊    10-1  .100  0 2

バルデス   11-4 .364 0 0

大野     17-6 .352 0 0

吉見     14-7  .500 0 0

メッセンジャー 20-10 .500 3 7

藤浪      8-2 .250 0 1

岩貞       8-0 .000

黒田      14-7  .500  1 4

福井      11-4 .364 1 2

k.Johnson 10-1 .100

野村      11-2 .182 0 1

(鈴木)

菅野      11-2   .182  0本 1打点

田口      18-8 .444 1 2

マイコラス    8-3 .375 2 3

マシスン     7-2 .286 1 1

澤村       5-1

小川      12-4 .333 1 1

石川      13-3   .231 1 3

ルーキ      9-1 .111 1 1

井納      12-3   .250  1  1

今永      12-3 .250 0 1

石田      9-3   .333  1  1

大野      16-10  .625  1  5

若松       8-2 .250 0 3

吉見       5-2 .400 0 0

藤浪      19-9   .474 1 7

岩貞      15-4   .267  0  0

能見      15-2   .133

メッセンジャー  3-1 .333 0 1

[追記]

本文冒頭に書きましたとおり、本記事は、飽く迄も首位打者争いに関して鈴木誠也が坂本勇人に何故勝てなかったかについての記事です。

坂本は遊撃、山田哲人はセカンド、鈴木は、外野なので、鈴木は、坂本、山田を打撃成績で、僅差ではなく、相応に差をつけて上回らない限り、選手トータルでの価値を高く付けてもらえないでしょう。

[追記]
坂本は割れを作ったとき左肩を内に入れ、右肘をヘッドの外側に張り出して左脇を空けてスイングする。
坂本は2017年以降、左肩を残して左膝をオープンに運び、左肩を左肩甲骨に格納、ミミートの瞬間両股関節をぶつけて左足に軸足を移し右足で蹴る打法を用いる。

X軸を作るとは、右打者の場合、ミートの瞬間に両股関節をぶつけて左膝を突っ張らせ、左股関節を引っ込め軸足を左足に移し、右膝を真下に落とすことをいう。

鈴木は、押し手主導に移行している。